No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

妄想族の極めてくだらない私小説

そして、物語が始まる

俺の書く小説には、必ずとびきりの美少女が出てくる。 そうすると、俄然書いている側としてもやる気が出てくるからだ。 今まで行き詰っていたキーボードを打つ手は、突然スピーディーになる。 物語の中の美少女は、俺の想像を遥かに越えていく。 美少女が笑…

いつか彼女に言いたくて。

「無理無理!俺、絶対毒田だけは彼女にしたくねえな」 他愛もない、放課後の友人との会話。 出来ることなら、俺はあの時に戻ってこの言葉を取り消してやりたい。 しかしそんなことは出来るはずもなく、俺は未だに後悔していた。 あの時、少女漫画の展開よろし…

BAD BYE

ああ、アイツを見ているといい加減毎日うんざりする。 この学校に入学してから、一日に何度も目にする光景。 学校一の美人(らしい)と言われている毒田花子の周囲では、もてはやす者、憧れる者、興味本位に騒ぎ立てる者と様々な人間が存在する。 中学までは…

密やかに。

「どうしたの?それ」 彼が柔らかい笑顔を見せる。 伸びるのが遅い私の髪は、どう頑張ってもまだボブ程度にしかならない。 元々少しばかり癖のある髪は、サラサラというには程遠い。 綺麗な栗色の髪色なんて、夢のまた夢。 身長は、158センチ。 どんなに…

存在は、遠く。<2>

知人や家族しか来てくれなかったライブは、いつしか少しずつ観客を増やしていく。 本格的にレコーディングをして、デモ音源をレコード会社に送ってみたりもした。 流石にそんなに簡単に上手くはいかなかったけれど、私たちのバンドは上手く行っていた。 ・・…

存在は、遠く。<1>

『恋愛?そうですね、しいて言うなら・・中学の時の同級生に、ずっと片思いしてましたね(笑) その子、高校に入ってから急に綺麗になって。綺麗って一言で片付けられないくらい、はい(こちらに頷きかけながら)高校は別だったんですけど、俺らの学校にまで…

僕の憂鬱

「太郎君、本当は私以外にも本気で付き合っていた子がいたのね。」 ここ最近就職活動で忙しく、なかなか会えず仕舞いだった彼女から珍しく電話がかかってきて、いつもの待ち合わせのカフェに呼び出された。 カフェオレの入ったカップを両手で包みこむように…

憧れ

「ごめん!佐倉!俺と別れてくれ!」 それは、高校入学からまだ間もない5月の出来事だった。 向かい合う格好で座っていた私の彼氏である円谷が、パンッと大きな音を出して手を打ち合わせ、まるで拝むような形で私に頭を下げてきたのだ。 「はあ?何でなのよ…

それはまるで、春のような

電車の規則的な揺れには、どうしてこんなにも人を眠りに誘う力があるのだろう? 自分が通う海成高校まで、自宅から1時間半。 県下一の名門校とは言えども、県立の高校なので学生寮なんていう便利なものはない。 下宿先なんていうのも今のご時世そうそうない…

再会<後>

「今日の幹事って、風巻さんだったよね。私、毒田です。これ、会費」 元同級生達のどよめきをよそに、堂々と背筋をピンと伸ばして私の元にやってきた彼女ことブスダハナコは、そう言って私に会費の3,000円を手渡す。 私は手元の出席者名簿にチェックを入れ、…

再会<前>

カランとカフェの扉が開く音がして、元同級生達の目線が一斉にそちらを向いた途端、皆が一瞬押し黙ったのが気配で分かり、私はふっとそちらに目をやった。 周囲の沈黙は、すぐにどよめきに変わり私はとても冷静に「ああ、やっぱりな」と思っていた。 例えば…

俺の名前、彼女の名前。

福原美人。 大嫌いな、自分の名前。 この世で嫌いなものランキングの不動の1位をキープし続けている位、大嫌いな名前だ。 何が嫌かって? 勿論「美人」という名前に決まっている。 ビジン、ではない。 俺にはちゃんとした「ヨシヒト」という名前があるのだ…