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2024年 読書リスト ※随時更新

2023年は57冊でした。

ようやく本を読む時間も取れてきたものの、相変わらず少なめですね。

2022年よりは少し増えたけれども。

 

今年もマイペースで読書をしていくと思います。

感想は随時更新していきますのでよろしくお願いします。

 

■たおやかに輪をえがいて/窪美澄

 

家族のためを思い、家事とパートをこなし平穏な日常を送っていた絵里子。

 

偶然夫の風俗通いが明らかになったことから、これまで家族のためを思って生活をしてきたことがガラガラと崩れていく。

更に一人娘の付き合っている相手も不穏な人物で・・・

 

子どもを持つ50代の女性が主人公なのだが、例えば夫の不貞(と言っていいのか微妙なラインだけど)を知った瞬間に夫に問い詰めたり、怒るなり泣いたりできる人ならばこんなに深刻にならないと思うのだけど、感情をあまり出すことをしないまま生きてきた主人公は、誰にも相談できず、夫と問いただすこともできず、ただただぐじぐじ悩むので最初の頃はちょっと読んでいてげんなりするところもあり。

 

浮気している訳でもないし、それくらい許せばいいのに、と思う人もいるレベルのことかもしれないけど、では自分の夫がもし同じ立場だったら・・と考えると何とも言えないので微妙なところ。

 

絵里子にとって良かったことに、自分らしい生き方を求めて変わった友人が傍にいて、年下の同性の恋人との関係も良い。

少しずつ自分の生き方を見つめ直し、前向きに変化していく後半は嫌いじゃなかった。

(3.5点)

 

■スモールワールズ/一穂ミチ

 

単行本を読んで全部好み!とすっかりはまってしまった一穂さん。

文庫化したことをチェックしておらず、慌ててオークションで購入したもの。

読んでから間もないので結構内容を覚えていたものの、再読してもやはり面白い。

 

文庫版の解説は辻村深月さん、書下ろしの掌編も収録されているので必読。

これはまた再読したい一冊。やっぱり好きだわー。

(5点)

 

■世界のすべてのさよなら/白岩玄

久しぶりの白岩さん。

この方の世界観というか文章というか。好みですねやはり。

 

大学時代からの友人4人組のそれぞれの語りで紡がれる物語。

ちょっとしたことがきっかけで距離ができてしまった同居相手、何が原因だったのか、その相手視点のストーリーもあるので掘り下げて理解できる。

 

本人が思う自分と、周りに思われている自分というものが全然違うのが面白い。

劇的な出来事や事件は起こらない。でも、日常はこんなものだと思うのよね。

 

カメレオンの絵、実際に見てみたいなあ。

(4点)

 

■BAR追分/伊吹有喜

伊吹さんにしてはプロローグからちょっと苦戦した作品。

文庫で薄いのですらすら読めると思っていたのでちょっと意外だった。

 

でも、登場する食べ物がおいしそうでおいしそうで。

いつの間にか食べ物に絡んだ一つ一つの物語に入りこんでいた。

 

図書館で借りたのだけれど、他に2冊出ていたので続きも読んでみようと思う。

無性にカレーが食べたくなること間違いなし。

(3.5点)

 

■川のほとりに立つ者は/寺地はるな

初めて読む作家さん。

本屋大賞ノミネート作ということと、読書メーターのランキングにもあったので借りてみたもの。

 

初めてなのでどういう作家さんなのか(受賞歴とかでどういう系なのかある程度想像できるが)、下調べなく読んだのでより楽しめた気がする。

 

文章の感じは優しく、青春小説を読んでいるような読みやすさがある。

けれど、展開はなかなか不穏。

 

コロナ禍やら色々な事情で距離ができていた恋人が、何か事件に巻き込まれたのかはたまた当事者なのか分からないが、事故で意識が戻らず入院中という知らせが入る。

 

こういう人間だと思っていた、そんな恋人像が、恋人の親や周囲の人間の話から全然違う部分が見えてきて、揺らぎだす。

残された日記のようなメモの断片、周囲の話から全容が見えてくる・・・

 

その真相に迫る感じはミステリ感もあって好み。

 

また、天音さんの不穏さ、いっちゃんの真っすぐさが伝わっているのか利用されているのか・・「こういう人間」と人に対して決めつけることの怖さが見えたような、鋭いものでえぐられるような気持ちにもなり、好みだった。

 

他の作品もぜひ読んでみたいと思う。

(4.5点)

 

■とにもかくにもごはん/小野寺史宜

「ひと」の小野寺さん。久しぶりに読む。

子ども食堂は、町内の掲示板でお知らせが貼ってあるのを見たことがあるけれど、実際どういう仕組みなのか、どういう人が利用しているのかなどはよく分かっていなかった。

 

貧困のため、満足にご飯を食べられない生活を送っている子供たちは、今の世の中意外にも多いことに驚く。

私の家も父親のせいもあってかなり貧乏な子供時代を過ごしていたけれど、米だけはあったことで、母親が何とかやりくりをしてくれていたこともあり、食に対して貧しい思いをした記憶はない。

けれど、子供は親を選べない。

 

子どもから見たら若くてきれいな自慢の母でも大人から見たら、いかにも水商売で働いていると思う雰囲気を隠せない。

子どもの目線、気持ちが子供を語り手にした章で見えるので、大人目線に変わった時とのギャップが何とも切ない。

 

ラスト、子ども食堂をやろうと決めたきっかけになった男の子と、意外な形で再会する。

そこがご都合主義展開と思うか、素直に感動するか。

私は素直に感動して、目頭が熱くなった。

(3.5点)

 

■汝、星野ごとく/凪良ゆう

2023年本屋大賞受賞作、ということで大分長いこと予約待ちしていたもの。

しかし続編ももう出ているようで、そちらも予約がすごいことに。そちらはいつ読めるのやら。

 

美しい瀬戸内の島の風景、澄んだ深い色の海、決して恵まれているとは言えない家族を持ち、親に翻弄される子供、青春時代の淡い恋と大人になるにつれやってくる厳し現実・・・

実写化したら映えるだろうなと感じる要素が満載。

 

自分も父親のせいで苦労してきたこともあり、親のせいで自分が進みたい道を諦め、選択肢がない人生を読んでいるのは辛い。

親を捨てて島から出てやりたいことをやればいいのに、と思うのに親を見捨てることができない気持ちも痛いほどわかる。

 

恋愛小説というには重くて、青春小説のような甘酸っぱさとも違う不思議な読後感。

強く引き付けられるそんな物語だった。

(4点)

 

■ザリガニの鳴くところ/ディーリア・オーエンズ

 

アンミカがこの映画を紹介しているCMを見て、凄いタイトルだな・・なぜザリガニ?と思って気になっていたもの。

外国文学は結局は翻訳者の力にもよるが、手をだすのは敷居が高かったりする。

けれどその不思議なタイトルに惹かれて読んでみたのだが、心配は杞憂に終わって面白かった。

 

こちらも親のせいで不遇な少女時代を過ごすカイアが主人公。

母が去り、兄姉が去り、最後には父親もカイアを捨てて出て行ってしまうなか、湿地の小屋で一人で生きるために様々な知恵を絞り、生きていくカイア。

そんな孤独な少女を支える人物たちもいるのだが、どうしようもない男に惹かれてしまう思春期・・・

少女の心と体の成長物語でもあり、湿地に住む生き物たちのなんと生き生きとしたこと!

 

根底は青年の遺体が発見され、「湿地の少女」であるカイアに疑いの目が向けられ、犯人は一体誰なのか?というミステリ小説なのかもしれないが、ミステリと一言で片づけてしまうにはあまりにも勿体ない壮大なストーリーでもある。

 

最後に明らかになる真実にじわじわと驚きながら、カイアの生きざまに心打たれた。

分厚い小説だったが、最後まで飽きさせなかった。

(4.5点)

 

■夏日狂想/窪美澄

 

実在の文豪たちの名がやたら出てくるなあと思ったら、やはり実在の作家たちをモデルにした話らしい。

大正から昭和、激動の時代を生き抜いた女性の話、と言ったら違うか。

 

才能あふれる二人の男に惹かれ、離れ、翻弄され・・器量よしの女優を目指す主人公の前半のストーリーは全然共感できず。。

女優を目指してた割には結構あっさり諦めて男なしでは生きられないみたいな状況になったり、そこまでその男に執着する理由がなんだか分からなかった。。

 

他の人たちの感想は結構好意的だったので、自分には合わなかっただけなんだろうが、好みではなかった。読むのにとても時間がかかってしまった。

(3点)

 

■これは経費で落ちません!11 ~経理部の森若さん~/青木祐子

 

このシリーズもついに11巻目に突入。

 

太陽からプロポーズを受けたその後の話で、一冊丸々結婚に関する諸手続き(親への挨拶、入籍予定日の決定、職場への報告、どちらの苗字に変更するか、友人への紹介などなど・・・)についてを時に現実的に、時に笑いを交えながら、沙名子と太陽ならではのエピソードが満載で面白く、一気読みしてしまった。

 

結婚を決めた時、私たちの場合も親への挨拶、入籍日はいつにするか、結婚指輪はどうするか、結婚式はいつするのか、諸々先のスケジュールをおおまかに決めて、それに向かって進んでいったのを思い出した。

 

沙名子の苗字にするのか、太陽の苗字にするのか問題で沙名子が納得できる理由を言ってと問われた太陽が答えられなかったように、超絶面倒くさい手続きを妻になる人にはやらせているのに、男側の苗字にするのが当然と思っている男性陣の考えに、これを読んで今更ながらはっとしてしまった。夫の姓になるのが当たり前でそれを疑ったこともなかったけれど、確かにこれが時代ってやつなのね。

 

結婚報告によって天天コーポレーション内に激震が走り、特にまゆちゃんがなんで太陽!と憤るところが可愛かった。そして結構本気で沙名子を好きだったっぽい鎌本が相変わらず怖い・・・

 

営業部と経理部という相反する部署にいる二人が夫婦に。どちらかが辞めない限り、異動になったりもしそうで今後そのあたりも気になるな。

(4.5点)

 

■追憶の烏(文庫版) -八咫烏シリーズー/阿部智里

 

初めて読んだ時のあの衝撃は、文庫版で再読しても失われていなかった。

最初の雪哉と紫苑の宮の幸せな時間・・・からのラスト。

第二シリーズで別人のように変わってしまった雪哉に何があったのか、が描かれていて、どうしてこうなってしまったのか・・・と思わずにはいられない。

 

全てが上手くいっているように見えていたのは読者も一緒だったのかもしれない。

衝撃展開の第二部、新作も早く読みたい(予約待ち)。

 

ついにアニメ化!こちらも楽しみ。

(4.5点)

 

■流浪の月/凪良ゆう

映画でタイトルだけは聞いたことがあったけれど、あの「汝、星のごとく」の凪良さんの作品とは知らなかった。

本屋大賞受賞作は外れがないけれど、ぐいぐい惹きつけられる。

 

小児性愛者」の文と、両親がいなくなり親戚の家で暮らすことになった更紗。

ひょんなことで出会った二人はほんの少しの時間を一緒に暮らすようになるが世間は放っておかなかった・・・

 

文が大人の女性を愛せない人という認識でストーリーが展開していくのだけど、何か事情がありそうという匂わせがずっとあって、でも全く想定していない真実が明らかになってまずそこで驚かされ・・

汝、星のごとくでも普通の家庭で育っていない主人公たちが親から逃れられず苦しい人生をその後も送っていたけれど、文も母親の呪縛から逃れられなかったからこそ、誰にも相談できず、この事件が起こってしまった・・・

もし周りの大人に相談できていたらきっと起こらなかった事件。でも、そうしたら更紗と文は出会っていない・・・

 

更紗にとって文が唯一自分を救いだしてくれた大切な人であるように、文にとっても更紗は特別な存在であるということが分かって、それが何よりの救いだった。

二人が一緒であればきっと大丈夫、そう思えるラストだった。

(4.5点)

 

■嫌いなら呼ぶなよ/綿矢りさ

 

綿矢さん、相変わらずぶっとんでいて最高。

奇人変人の主人公のオンパレードなのに、どこか痛快ですらある不思議。

 

ラストの書下ろし作品は綿矢さん本人が登場する話だけど、これは一部実話なのか、創作なのか?

(4点)

 

■殺戮の狂詩曲/中山七里

 

中山さんは筆が本当に早いので、常にチェックしていないと新刊情報を見逃してしまう。

御子柴シリーズで新しいのが出ていたのは未チェックで、図書館で見つけて慌てて借りた。

 

障がい者施設での大量殺人事件・・実際にあった事件を彷彿とする衝撃の事件から始まり、死刑確実の国選弁護人となった御子柴。

いくらあの御子柴でも死刑判決を覆すことはできないだろうに、なぜこの犯人の弁護を担当しようとしたのか・・・

謎は深まる中、当然の如く判決は・・・

 

ラストに御子柴が弁護を引き受けた理由が明かされるのだが、このシリーズも結構長いのでこんな人いたっけ・・となってしまったのだけが残念(完全に自分が忘れているせい)。

好きなシリーズなのでいつもより後味悪くない終わり方だったのも少し呆気なかったかな。安定の面白さだけれども。

(4点)

 

■ツミデミック/一穂ミチ

一穂さん、やっぱり好き!!ってなった一冊。

 

不穏で、後味の悪い系の短編が続き、もしかして今回は一冊そういう系の話なのかしら(これはこれで好みだけど)と思いながら読み進めていくと、不穏な序盤からのラストであっと驚きつつ気持ちも上向きになる話もあって、今回も大変満足して読了した。

 

前編を通してコロナ禍が描かれていて、コロナによって生活が一変してしまった人の話や、パンデミックが広まって未曾有の危機に瀕したことにより一気に広まったサービスを絡めた話であったり、緊急事態宣言、まん防、時短営業、マスク警察、医療従事者への感謝の表現のあれこれ、感染者数十人でも騒いでいた最初の頃のことなど一種異様ですらあったあの当時の事も色々思い起こさせる。

(4.5点)