勤務中の吉永のもとに警察がやってきた。元妻が引き取った息子の翼が死体遺棄容疑で逮捕されたという。しかし翼は弁護士に何も話さない。吉永は少年法十条に保護者自らが弁護士に代わって話を聞ける『付添人制度』があることを知る。生活が混乱を極めるなか真相を探る吉永に、刻一刻と少年審判の日が迫る。
薬丸岳さんの本です。
先日2時間ドラマが放送しましたが、図書館や本屋でタイトルを見てすごく気になっていた本でした。
ドラマは録画してまだ見ていないので、先に原作を読んでみようと借りてきました。
少年犯罪の小説は、例えフィクションであったとしても誰もが現実に起こりうる可能性を秘めているせいか、読んでいても他人事とは思えない。
加害者の親側、被害者の親側、もちろんどちらにもなりたくなんてないけれど、絶対にないとは言い切れないから読んでいても苦しくなる。
今回は離婚した妻の元で生活をしている一人息子が、突然同級生を殺害した罪で逮捕されるというショッキングな出来事から始まります。
ドラマ、映画、小説と、それこそものすごい数の少年犯罪を扱ったものはあるけれど、ここまで加害者側の親目線で丁寧に向き合っていく話は今まであったでしょうか。
「誰でも良かった」「憎んでいたから」「突発的に」
少年が犯罪を犯す理由はそれぞれあるのだとしても、今回のようにいじめを受けていた相手を殺してしまったという場合、元を正せば殺された側が理由でもあり(かといって殺していい理由にはならないけど)、親の気持ちとしては相当に複雑だと思います。
本当の理由をなかなか話そうとしない息子と、信頼できる弁護士と共に息子の心を開こうと苦心する父親。
母親がメンタルが弱く頼りないので、犯罪を犯した息子と向き合う道を選んだこの父親がとにかく心強いです。
少年院に入り、出所してもどこからか過去の犯罪のことは知れてしまい、普通の生活を営むことは相当な困難です。
けれどこの少年が本当に自分が犯した罪の大きさに気づいたラストシーンは、胸が熱くなります。
猟奇的に描かれたり、犯罪を犯したこと、更生しようとしてもできないこと、そういった小説は数多くありますが、罪の大きさに気づき、加害者遺族に謝罪をしようと立ち上がる少年の姿に少しの救いを見た気がします。
とはいえ、被害者側遺族からみたらそんなことをされたところで子供は戻ってこないという事実だけが残るのですね。。
どちらの側に立っても辛すぎる現実に考えさせられました。
冒頭からラストまで引き付けられるストーリー展開と読みやすさでした。
多分薬丸さんの本は初読みだと思います。ほかの作品も読んでみたいと思います。
ドラマも見てみます。
(5点)