無様に。だけど、私はまだ生きているのだ。焼夷弾が降る戦時下、喧騒に呑まれる八十年代、そして黄昏ゆく、いま。手探りで生きる人々の「生」に寄り添う8つの物語。
窪美澄さんの本です。
アンソロジーで読んだ「朧月夜のスーヴェニア」以外は未読の短編集。
窪さんの短編集は結構リンクがあるものが多いと思うんですが、今回は一つ一つ独立した短編集でした。
性描写がリアリティだからこそ残る余韻「バイタルサイン」、表題作の「すみなれたからだで」は歳を重ねた夫婦のこんな愛の形があってもいい、全く触れることのない淡い恋心が切ない「銀紙色のアンタレス」、一番こういう話が自分好みの「猫と春」。
窪さんならではの「生」をテーマにした短編でしたが、どの作品も印象的でした。
根幹がやっぱり「ふがいない僕は空を見た」の「生と性」があるのかなあ。だからこそ、窪さんの作品はどれでも強く印象に残りますね。
(4点)