どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる―。ひとりの女性への道のりを描く書下ろし長編小説。
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今注目の、宮下奈都さんの第一作目の作品です。
NO.1
骨董屋を営む家庭に育った、麻子、七葉、紗英の三姉妹。
長女の麻子の視点で、少しずつ歳月を経ていきながら、成長し変わっていく姿が丁寧に描かれています。
妹、特に次女の七葉は器量も良くてきちんと主張が出来る女の子だ。
それに比べて、取り立てて目立つ所のない長女の麻子は、自分の気持ちを強く主張することができない。
そんな中学生の麻子が、初めて恋に落ちた相手は、友達の好きな人で--
NO.2
高校生になった麻子は、従兄弟の槇に、淡い恋を抱いていた。だけど妹の七葉も…
NO.3
大学生から社会人になり、初めての仕事は、輸入代理店の仕事とはかけ離れた、店舗での二年間の研修だった。
商品である靴を愛せず、思い悩む麻子だったが…
NO.4
店舗での勤務を終え、本社勤務になった麻子。
しかし、同僚の誰よりも成長できていないことを実感する日々。
そんなとき、海外への買い付けを任され…
特に、社会人になってからの麻子が良いです。
これまで人を好きになっても、いつも壊れてしまいそうな不安を抱えていた麻子が、初めて茅野さんのような存在に出会ってから、鮮やかに変わっていく世界。
また、妹との容易には取り戻すことのできない距離感とか、長女でもある私は、かなり共感しながら読んでしまいました。
ただ、宮下さんの作品は読み進めていくうちに、じわじわ良さが伝わってくるタイプの作風だと思います。
アンソロジーの収録作品があまり印象に残ってないのも、短編では伝わり切らない部分が多くあるからなのかもしれません。
でも、とても素敵で読後感の爽やかな話を書ける作家さんです。
今後にも期待大です!
「女の子の成長物語」なんていうと、ドラマチックでちょっと非現実的なくらい都合の良い展開が続く物語も多いですが、この本こそ【等身大】の成長物語だと思います。
感情移入しやすいし、不器用な麻子を思わず応援したくなってしまう。
素敵な物語でした。