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張り込み姫 ―君たちに明日はない3―

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企業のリストラを代行する会社に勤める真介の仕事は、クビ切り面接官。「人間にとって、仕事とは何か――」。たとえどんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、真介はこの仕事にやりがいを感じている。今回のターゲットは、英会話学校、旅行会社、自動車業界、そして出版社だが……。働くあなたに元気をくれる傑作人間ドラマ。




垣根涼介さんの「君たちに明日はない」シリーズの待望の最新刊!

待ってました!
きっと続編はあるんだろうなと期待していたのですが、とうとう出ましたね。

NHKでもドラマ化され、現在放映中ですが・・・NHKのドラマは、どんなに大好きな原作でも微妙になることが多いので(「バッテリー」とか特に)、あまり期待はしていなかったのです。
でも、案外悪くない。
キャストも結構違和感がないし(堺さんはちょっと自分のイメージとは違うんだけども)、何より世相に反映した内容だから、考えさせられるんです。

まあそれも、原作が良いからに他ならないのですけどね。




ビューティフル・ドリーマー
やどかりの人生
みんなの力
張り込み姫

の4編を収録しています。
特に、「やどかりの人生」「張り込み姫」に考えさせられて、「みんなの力」で感動してしまいました。

ただ残念だったのは、「みんなの力」がかなりマニアックな車の話になってしまっていたこと(垣根さんはメカ系に詳しくてとても好きなんだなあと、既読本から見てもしみじみ思う)、くらいでしょうか。

まあそれを差し引いても、働く意味とは何か何のために働くのかといったことを、経験も立場も年齢も性別も違った様々な職場で働く人間の目線から描かれていて、読みながらはっとさせられたり、考えさせられたりします。

特に、自分が今職を失おうとしている状況だったので、先の見えない契約社員と先が保証されている正社員との立場の違いや、安定している正社員に対する憤りや怒りをぶつける女の子に妙に感情移入してしまったりして・・・。

まさに今日、しみじみとそう感じてしまったばかりだったので・・・・




正社員の人が任されている仕事は責任のあるもので、その分大変な事も多いし判断力を必要とするのだというのは理解してるつもりだ。
入社して仕事を教わって、ここまで出来るようになったのは正社員の人のお陰でもある。

だけど。
仕事中にネットを見て仕事をしていなかったり、遅刻してきたり・・・そういうのがあっても、自分より給料をもらってて、そして退職金ももらえるし、結局は雇用が安定しているから・・・大概の事は乗り切れる。

自分はまだ任されている仕事も責任のあるものではないかもしれない、
けど・・・

結局やっている仕事は正社員の人と変わらない部分もあって、そして無遅刻無欠席、無早退で、必死に努力して仕事をやってきたつもりで。

それでも、こんなの意味あるのかなって思う瞬間は本当は今までもずっとあった。
だけどそれに気付かないふりして、ずっと頑張ってきた。

正社員と同じ仕事をしていても、給料は少なくて。
ボーナスも出ない、退職金も出ない、何より雇用は不安定。

なんだろう。

なんか「駒」みたいだよね。
必死で働いてきて、会社に貢献してきたつもりだけど・・・結局、ただの「駒」。


そんな事を思いながら読んだ本作は、やっぱり以前読んだ二作よりも胸に染みた。

少しだけ、自分が進む道が見えそうな気がした。