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ノエル: a story of stories

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物語をつくってごらん。きっと、自分の望む世界が開けるから――理不尽な暴力を躱(かわ)すために、絵本作りを始めた中学生の男女。妹の誕生と祖母の病で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失った老境の元教師。それぞれの切ない人生を「物語」が変えていく……どうしようもない現実に舞い降りた、奇跡のようなチェーン・ストーリー。最も美しく劇的な道尾マジック!


道尾秀介さんの本です。
 
予約して大分待った気がします。
ノエルといえば、ブッシュドノエルしか浮かばないのですが(笑)、フランス語でクリスマスの季節や歌の事を差すそうです。
 
三章から分かれている作品ですが、どうも読んだ事があるような気がする・・・と思っていたら、最初の話は「ストーリーセラー」で読んだ事がある作品でした。
 
その第一章を軸に、童話作家の童話を差しはさみながら、幼い女の子の話、妻を亡くした年老いた元教師の話で構成されます。
 
道尾さん、そろそろ女の子の性的虐待の展開はやめた方が良いと思います。あまりにも多すぎて、いつも道尾さんの作品を読む度に身構えてしまうんですよね。
 
ただ、本作はそのいつもの展開はあるにしろ、最近の道尾作品の味でもある爽やかな読後感であるとか、幼い子供達を描くととても鮮やかな物語になるとか、そういう良さがとても上手い具合に混じり合い、素敵な作品に仕上がっていると思います。
 
特に私が嬉しかったと思ったのは、ミステリといってしまうと違うかもしれませんが、ちゃんとラストに「あっ!」と驚く展開が待っていたこと。
しかもそれが、当初予想をしていた暗い展開ではなく、ちゃんと光の見える温かなラストに繋がっていたのが良かったです。
 
この中で一番好きなのは、「暗がりの子供」でしょうか。
兄弟姉妹がいる場合、例えばそれが一番上の子供だった時――自分が生まれると同時に、「母」と「父」が一緒に生まれる。
当たり前の事なのに、一番上の子が生まれない限り、親にはなれないのです。
私は長女でも真ん中なのでその座は兄に譲ることになりましたが、この本を読んで初めてそんな事実に気付きました。
 
クリスマスの時期に、ぜひともオススメしたい作品。
今読んでもこんなに素敵な作品なのだから、クリスマスならもっと楽しめる気がします。
(4.5点)