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しょうがの味は熱い

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愛し合って一緒に住んでるのに、婚姻届を見ただけで顔がひきつるってどういうこと!?好きなのにどうしてもすれ違う二人の胸の内を、いやんなるほどリアルに描く連作2篇。ひりひり笑える同棲小説。


綿矢りささんの本です。
 
なんだろ・・・本当綿矢さん、やってくれるなあとしみじみ思いました。

独身妙齢女性が結婚を焦るギリギリ感のある小説は、もう飽和状態にあるのではないか?と思うくらい巷に溢れていますね。
特に作家が実際に独身女性である場合、そのギリギリ感は痛々しいほど身に迫り、同じく独身である自分にまで変な焦りや傷みが伝染してくるような小説は正直そろそろ飽きてきたように思います。
 
しかしなんですか。
これはまた、今までの常識(先程書いたような)を覆す、「結婚願望が強い暴走女子」が主人公でございます。
 
「しょうがの味は熱い」でようやく同棲まで辿り着いた主人公が登場し、この話の終わり方はそれだけで終わりにしてしまえばある意味とても爽やかなんです。
 
しかしそのあとに続く「自然に、とてもスムーズに」で更にこの同棲カップルのその後を描いていて、それがとんでもなく病んでる感じな訳です。
結婚の予定もない同棲相手へ結婚願望を募らせ、しまいには婚姻届をもらってきて記入してしまったりとか、転勤話が出ようものなら妻よろしく彼についていってしまおうと思ったりとか。
 
そしてその同棲相手の彼も男性とは思えないほどの几帳面さが怖い!
さりげない描写なんだけど、この二人が本当に一緒になって大丈夫なのだろうか?と心配してしまうほどに。
 
この女主人公の父が言う、「結婚はいまがチャンスと焦ってするものじゃない。ほんとに合っている二人ならもっと、自然に、とてもスムーズに、結婚まで至るものなんだ。(中略)結婚のときにもめた奴らは大概離婚している」という言葉が凄いずしんと響きました。
 
ということは・・・私の今の恋も、そういうことなのか・・・と。
ここ最近悶々としている日々なので、変な所で痛いところを付かれた気がしました。
 
このカップルの行く末が何か怖い気がするけど、一応まとまった終わり方はしています。
何とも病んでいるカップル。
綿矢さんにしか書けない小説だと思います。
(4点)