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2022年読書リスト ※随時更新

2021年は、トータル61冊でした。

大分少ないですね。在宅勤務が続いて、通勤時間に本を読む時間が減ったのが大きいかもしれないです。

感想を全て更新しましたので、よろしければ過去記事もご覧くださいませ。

 

2022年上半期分の読書感想です。随時更新していきます。

 

■雷神/道尾秀介

年末から読んでいたのだが、年内に読み切れず2022年初めて読んだ本になった。

道尾作品は読む前から期待とワクワクしかないのだけども、なかなか好評だと道尾さんのツイッターでも紹介されていたのでとても楽しみにしていた。

 

不穏な展開で始まるストーリー、主人公の現在の家庭で抱えるある秘密と、実家である家族で抱える過去とが複雑に絡み合っていく。

不穏な展開は好みなのだが、更にそこに家族の愛情が入った人情味あふれる展開も入ってくるので、単純なミステリにならず更に深みがあって面白い。

道尾さんの描く人物たちはなんだか温かみがあって好きだなあ・・・

 

真犯人はきっとあの人だろう・・・と読んでいると気づくのだけど、家族を思う心が、大切な人を守ろうとする気持ちが・・とそれぞれ事件に関わった人たちの想いも痛いほど伝わって苦しい。

 

ラスト、神様はいないのだと強く感じた。

 

彩根が個性的キャラで、別の物語も書けそうだなあと思っていたら、既に別の作品で登場している人物だったようだ(全然覚えていない・・・)。

↓過去記事を読んだら、めちゃめちゃ彩根について言及しているという。

su-ki-ma-kaze.hatenablog.jp

 

また本作は「雷」シリーズ三部作最終版的な感じらしい。確かに雷がつくタイトル多いなあと思っていたら、そういうことなのね。

とても好みの作品だった。

(4.5点)

 

■キャンプ日和:アウトドアと文藝

これ、タイトルと装丁と中身が全然合っていないのでは・・・

完全に今どきの作家さんたちのキャンプアンソロジーかしらん、と気軽に借りてしまってその読みにくさに愕然とするという展開に。

昔に発表されているもののようで、文章が難解な訳です。

そしてキャンプ未経験、登山経験者の私ですら、ほとんど入りこめない読みにくさよ・・・

これは完全にアウトドアに興味ない人とか未経験の人は受け付けないレベル。

私には難しすぎて読むのが辛かった。。ごめんなさい。

(2.5点)

 

■紙の月/角田光代

 

宮沢りえ主演で話題になっていた作品だけど、映画は観ていない。

原作も読んでみたいなと思っていたのだけどようやく読むことに。

 

結果、めちゃくちゃ面白かった。というか、考えさせられた。

 

平凡で一見幸せそうに見える主婦が、銀行員の仕事を始めた。

ふとした些細なきっかけから、横領を働くようになり、若い男に貢ぐようになっていく。

 

ふとしたきっかけで、普通の人が簡単に罪を犯す。

横領をした主人公に関わった周囲の人物のモノローグも、もしかしたらこの人たちも主人公と同じことをしていたかもしれない・・と思わせるリアルさがあってとても引き込まれた。

 

個人的に、子供のいない夫婦である主人公の夫婦関係に色々考えさせられるものがあってはっとした。

映画もぜひ見てみたい。

(5点)

 

■追憶の烏 ~八咫烏シリーズ~/阿部智里

 

八咫烏シリーズの最新作。

第二部になってから雪哉が別人のようになっていて面食らった人も多いと思う(私もその一人)。

雪哉が変貌してしまった理由、第二部の1作目に至るまでに何が起こったのか、ということが詳細に描かれた本作。

 

衝撃、驚きの連続で、前半の微笑ましいシーンから一転して暗転していく展開に茫然となった。

久々のあの人が再登場したり、第一部の裏側で何が起こっていたのかなども書かれていてかなり引き込まれた。

あまりに衝撃の本作だったので、再読したくてオークションで文庫を大人買いした(笑)

 

忘れている話も多いので、再読して更に楽しもうと思う。

やっぱりこのシリーズ大好き。

(5点)

 

ヒトコブラクダ層ゼット(下)/万城目学

 

上巻からあまり時間をおかずに読むことができて良かったが、やっぱり最近のマキメ作品は私には難しい。

 

メソポタミア文明とかそのあたりの世界観に興味がないこともあるけど、展開が難しくてなかなか理解できないが、銀亀三尉がめちゃくちゃ恰好良くて、銀亀三尉が出てくるからこそ読み切れたと思う(笑)

 

壮大な物語だった。

(3.5点)

 

■オーラの発表会/綿矢りさ

 

なんか元気が出る話だった。

最近の綿矢作品にありがちなぶっとんだ主人公は健在。

普通にしていれば美人なのに、かなり個性的な主人公(だけどもてる)。

 

まね師こと萌音との掛け合い、関係が好感を持てる。

お互いの欠点もずばずば指摘してくれて、その欠点も含めて友情が育まれている感じが良い。

 

そういえば先日綿矢さん原作の「私をくいとめて」の映画を観たけど、のんが良い味出してたな。そして可愛い。(「勝手にふるえてろ」は途中で挫折したが・・)

(4点)

 

■烏百花 白百合の章/阿部智里

 

第二部2作目の前に外伝が出ていたことに気づかず、最新作から読んでしまった人・・

 

大紫の御前の登殿の時代の話が多かった気がするのは、2作目に繋がっていくからなのね・・と思ったら、やっぱりこっちから先に読みたかったわと思いながら、読んだ。

 

「きんかんをにる」のほのぼのとした親子のエピソードからの最新作の流れはあまりに切ない・・・

 

「ちはやのだんまり」には笑い、「はるのとこやみ」にはぞっとする。

 

第一部のシリーズ再読を楽しめそう。

(4.5点)

 

■invert 城塚翡翠倒叙集/相沢沙呼

 

前作が非常に話題になっていたので、相沢さんもとうとう皆に知れてしまうのねとちょっとした寂しさを感じた私は、デビュー作「午前零時のサンドリヨン」シリーズが一番好きです。

そんな初期ファンも今回の作品には思わずにんまりなあの酉乃らしき人物が登場!

しかも20代になっている模様で、シリーズでは高校生だった酉乃の成長している姿を知ることができます。

 

とそっちの意味でテンションが上がる一冊だったのですが、これは翡翠がメインのお話でした。

前作で翡翠が本当はどういう人物なのか、というのが作品自体のどんでん返しになっていたと思うのですが、今回は翡翠のぶりぶりなドジっ子キャラ、あざとさが全面に出た作りになっていて、人によっては読むのがきついかもしれませんね。

 

殺人犯側の視点で物語が展開していく点や真から見た翡翠の普段の姿なども描かれていることが新鮮でした。

続編もあるんでしょうかねえ。

(4点)

 

■烏に単は似合わない(文庫版)/阿部智里

 

最新作からの衝撃を受け、思わずオークションで既刊文庫本を全て購入してしまった人。

兼ねてからこのシリーズは読み直したいと思っていたので、楽しみにしていました。

 

やっぱり二度目でもめちゃくちゃ面白い!

ファンタジーはそこまで好きと思っていなかったのですが、この平安時代くらい?とか神話とかの日本の設定の異世界ファンタジーみたいのが個人的にドンピシャらしいです。

なので絢爛豪華な美姫たちの登場ときなくさい事件と後半にかけての怒涛の展開とどんでん返し・・・めちゃくちゃ好みなんですよね。

ミステリとしても読めるのがまたいい。

 

そしてこの壮大なストーリーの凄さよ・・

二回目だからこそ繋がる設定とか、新たな発見もあって面白く読みました。

(4.5点)

 

■これは経費で落ちません!8 ~経理部の森若さん~/青木祐子

 

原作が続いている限り、ドラマ版の続編も期待したいと思う作品の一つ(わたし、定時で帰ります。も然り)。

脳内で完全にドラマ版のキャストでストーリーが進んでいる感じです。

ドラマも本当に面白かったですよねえ。

 

ということで、原作もやっぱり面白いです。

 

日常ミステリ的な展開も勿論だけど、自分も働いている身だからなのか、お仕事モノが結構好きみたいです。

そして青木さんのちょっと毒がこもった感じが好み。

 

トナカイ化粧品との合併後、新たな社員が増え、ついに経理部も増員!

合併したが故に新たに発生するトラブルに森若さんがついつい兎を追ってしまうのですが、果たして。

9巻も出たみたいで早く続きが読みたいですね。

安定の面白さでした。

(4.5点)

 

■炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパーク17/石田衣良

 

石田さんの作品は一時期読み漁っていたけれど、どうにも女性像がいかにも男性が好きそうな感じの女子ばかり出てくるので、敬遠してしまっていました。

唯一好きなシリーズなのでこのシリーズだけは読んでおります。

 

コロナ禍もしっかりと盛り込みつつ、今どきの問題に切り込むところはいいですね。

ただ、マコト達が永遠に年を取らない設定なので、ちょっと無理があるかなと思う部分も出てきているかも。。

とはいえ、安定の面白さ。このシリーズは続く限り読んでいきたいと思っています。

(4点)

 

■烏は主を選ばない(文庫版)/阿部智里

 

八咫烏シリーズ2作目(再読)。

手元に本があって、自分のタイミングで読めると、読んでから間が空いていないからこその記憶の新しさが相まって更に楽しめるという素晴らしさ。

「烏に単は似合わない」で姿をなかなか見せなかった若宮が一体何やってたんだ、というのが分かる一冊になっていて、雪哉もメインで出てくるので楽しいです。

 

この時の雪哉はまだ少年ということもあり、若宮のペースにまんまとはまってしまったトホホな感じが微笑ましくもあり、新鮮です(二部の雪哉を知っているだけに)。

 

再読でも全く変わらぬ面白さでした。

(4.5点)

 

■黄金の烏(文庫版)/阿部智里

シリーズ3作目。

ついに因縁の猿が登場し、一気にきなくさくなる展開。

 

冒頭の不遇な環境にいる少女の話がどう繋がっていくのかと思いながら読んでいても、すっかり内容を忘れていてやっぱり騙されてしまう。

あと、二部の番外編で出てきたあの子はここで出てきたのかーと忘れていた私でした。

(4.5点)

 

■空棺の烏(文庫版)/阿部智里

 

メインは雪哉。頸草院での武官養成学校での生活ということもあり、学園ものが好きな私はまた更に楽しめる巻。

少年だった雪哉が才覚を発揮し若宮の側近としてふさわしい姿に成長していくのも興味深いし、新たに猿が出てきたりと話としても繋がっているのでハラハラドキドキ。

 

千早も好きだし茂丸も好き(茂丸の今後の展開を知っていると切ないのですが・・)。

雪哉がいかに能無しのように見せかけていたのか、というのがよく分かる巻でもあります(実はかなり凄い人)。

(4.5点)

 

玉依姫(文庫版)/阿部智里

 

デビュー作よりも前にこの大本となる小説を書きあげていたということもあって、他作品とはちょっと趣が異なる本作だけは、やっぱり他のシリーズに比べて話に入りこめない部分もあるのだけれども、日本神話や人身御供など昔の日本にあった伝説などがモチーフになっているのは好み。

 

ますほのキャラ設定が若干違うように思う違和感はあるものの、若宮の過去の記憶に迫る展開が気になり、のめりこんでしまいます。

 

しかしどうしても志保のあの変わりようが納得できないんですよね。。

初めて読んだ時もそこだけがずっと違和感があって。あの場所にいるから少しずつ浸食されてしまったということなんですかねえ。

(4点)

 

■ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら/眞鍋明人

 

電車の広告で話題!となっているのを見て、ちょっと読んでみたいなと思った私。

図書館で予約して結構待ちました。

 

ビジネス書と思いきや、まさかの小説でした!(しっかりビジネス小説って書いてありましたね)

小説とはどうなのかしらと思いながら読み進めていくと、意外と面白い。

幕末好きの私はそれ以前の歴史上の人物に詳しくないしあまり興味もないのですが、さすがに家康、信長、秀吉は知っているし、勿論そのお三方は登場します。

 

特殊技術で坂本龍馬大久保利通徳川吉宗など後世に知名度を残す偉人達が蘇り内閣を作ったら・・・という前代未聞の展開。

 

今の政治家が成し遂げることができなかった、このコロナ禍という時代においてどんな政策を進めたら国民の生活が保障され、コロナの感染拡大を防げるのか。

合理的かつ具体的な方法が目白押しで非常に新鮮な気もちで読みました。

 

失礼ながら初めて存じ上げた偉人達も登場しているものの、親切な解説もあるのでご安心あれ。

 

難点は普通のハードカバーよりもサイズがでかくて適用できるブックカバーがなく剥き身で読むしかなかったことでしょうか(笑)

ともあれ一度読んでみるのはありのビジネス小説でした。

(4点)

 

■弥栄の烏(文庫版)/阿部智里

 

ついに第一部完結!

玉依姫」の舞台裏というか、こちらがシリーズの地続きになっている感じなので、「玉依姫」で納得できなかった方はこちらも合わせてぜひとも読んでいただきたいですね。

 

完結といってもやっぱりまだ完全に理解できない部分が多い。

何度か読まないとだめかもしれません。

 

今回の見どころは、ますほと澄尾の関係でしょうか。

澄尾の秘めたる思いが露出するあのシーン。きゅんとします。

(4.5点)

 

■烏百花 蛍の章(文庫版)/阿部智里

 

シリーズでは描ききれなかったサイドストーリー集とでもいいましょうか。

 

少しだけ登場したあの人物にも、実はこういった背景があったのねというのを知ることができたり、物語に何気なく出てきた会話の中の過去の出来事など、更にシリーズを楽しめる短編が詰まっています。

 

シリーズ第一部を再読して思ったのが、ますほの成長物語でもあるなと。

 

烏に単は似合わないでは、自分に自信を持ちすぎるくらい持っている高慢で美しい姫、だけど背景のことは何もわかっていないといった印象だった彼女が、浜木綿の女房になることで髪を切り、政治の内部事情にも通じるようになってくると、一気にその気高さや聡明さ、自分を失わない強さが全面に現れて、何だか物凄く格好良いんですよね。

それでいて絶世の美女っていうのがたまらない。

特に「玉依姫」で彼女を危険な目に遭わせたくないと思う澄尾との言い合いからの、山神の元で志保のお世話係として通うようになるところまでの成長ぶり、貴族は烏形になることがはしたないとされる中で、烏形になることもいとわなくなった変わりぶり。

澄尾が惚れ直すのも納得でした。

 

第二部では彼らの関係のその後もちらっと書かれていますが、この勢いで第二部も再読したくなってきています。第二部1作目の文庫化はまだ先ですかねえ。

 

また時間をおいて読み直したい大好きなシリーズ。

贅沢な時間でした。

(4.5点)

 

■わたし、定時で帰ります。-ライジング-/朱野帰子

 

「これは経費で落ちません!」と共に続編希望のドラマがこれ。

脳内では吉高由里子向井理で再生されておりました。

向井理は個人的に演技が苦手なんだけど、このドラマだけは本当にはまり役だったと思っています。明らかにできる男みたいな役より、こういうできるけど露骨にできる感じを見せないみたいな役の方がいいのかもですね)

 

今回は結衣に新たな部下ができていたり、しかもこれまでより更に癖のある部下だったりで、管理職として翻弄される結衣に、「生活残業」を改善するために賃上げ交渉に挑むという難問が立ちはだかります。

 

賃上げ交渉の道のりは遠く、そして思った以上に結衣が所属する会社の古参の社員への優遇や新卒と中途の差、古い体制などが浮き彫りになってきて読んでいるこっちまでそりゃないわ!と思ってしまうことが多数でてきます(特に仕事ができる人の給与が・・・)。

 

私の今の会社は残業代が組み込まれていて出ないので生活残業も何もないので早く帰りたいのですが、確かに残業代を稼ぐための残業をしていたこともあるので・・分かるわーと思いながら色々考えさせられました。

 

まだ続きはあるのでしょうか。

今回も安定の面白さでした。

(4.5点)

 

■元彼の遺言状/新川帆立

 

ドラマが始まる前にできれば読みたかった作品でした。

 

結果、ドラマが本作に割く話数が少なかったこともあって、後半冗長に感じられてしまったことと、ドラマとかなり原作が違っていたのに犯人だけは一緒だったのでネタバレ状態で読むことになったので、良いことなしでした。。

 

そして書店でも話題とオススメされていることもあってかなり期待していたのです。

しかし期待以上ということはなかったです。好みの問題なのでしょうが・・期待しすぎてっていうパターンでしたね。

 

ドラマを見ていない人はぜひ原作を読んでほしいですが、ドラマを先に見てしまった人は篠田が全然メインキャラじゃないじゃん!って思ってしまうかもしれません(笑)

 

ドラマも綾瀬はるかの可愛さだけでなんとか見ていましたが、数話で挫折した人・・・

 

前情報なしで読みたかった本でした。

(3.5点)

 

■闇祓/辻村深月

意味深なタイトルから、闇を祓う力をもった人の話なのか?と読み始まると、距離感が大分おかしい転校生につきまとわれる女の子の話から始まり、一体どういう展開になるんだ??と読み進めていくと、やはり闇を祓う人の話でした。

 

ただ、闇「祓」はハラスメントの意味があるヤミハラだったことが斬新なタイトルだなと思いました。

日常のどこにでも潜む闇。

無意識のうちにヤミハラする側になっているかもしれない・・ととても考えさせられる話でした。続編もあったらぜひ読みたい、こういう辻村さんの作品はとても好みでした。

(4.5点)

 

ハケンアニメ!/辻村深月

 

映画公開前に再読しようと読む始めたのに、読み切れなくて途中まで読んだところで映画をみることに。

原作から若干の設定変更はあったものの、無理ない流れと原作の愛を感じられる良作で、特に原作を読んだ後に王子役の中村倫也のまんま王子だ!と思うシーンがあって、かなりテンションが上がりました。

 

アニメには全然詳しくない人だけど、アニメ制作に関わる人たちを様々な職業から覗き見ることができる感じで非常に興味深く読めた。

今やっとスピンオフが手元に来たので読んでおります。

(4.5点)

 

■ペッパーズ・ゴースト/伊坂幸太郎

 

飛沫などで「感染」した相手がこれから見る現実の光景を「先行上映」として見ることができる壇先生と、その教え子が書いているネコジゴハンターなる二人の男が復讐するという小説の話と、檀先生とひょんなきっかけで関りをもつことになる女性の三つの視点からストーリーは進んでいく。

壇先生にパートだけは面白いものの、他の話がどう繋がっていくのか分かるまでは前半ではやや苦戦。

 

しかしそこは伊坂さん、この3つの視点が繋がっていくと俄然面白くなり無事読み切ることができたのでした。

 

これぞコロナ禍だからこそ誕生した小説、という感じでしょうか。

(4点)

 

■はじめての/島本理生辻村深月宮部みゆき森絵都

 

YOASOBI×直木賞作家のコラボということで話題になっていたアンソロジー本。

 

好きな作家が参加しているにも関わらず、アンソロジーで楽しめることがとても少ない私にとって、恐る恐る読んでみたもの。

島本さん、宮部さんの作品はもうこの感想を書いている時点で思い出せないという異世界もの。

辻村さんはさらっと読めて、一番良かったのは森さんでした。

 

大人向けに転向?してからすっかり森さんの作品から遠ざかってしまった私ですが、やっぱりこういう作品こそ森さんの良さがふんだんに発揮されるんだなあと実感する話でした。

タイムトラベルものは個人的にも好きで青春も感じられる作品でした。

 

ただ、アンソロジー全体としては普通でしたね。。

(3.5点)

 

■さよならに反する現象/乙一

 

しばらく新作チェックをしていなかったうちに乙一さんの未読作品がものすごい溜まっていたので慌てて図書館で借りたもの。

 

おそ松さんの話は元をあまり知らないので入りこめずでしたが、コミカルな雰囲気の中にさらっと入る死者や事件。きな臭さがさりげなく入るところは乙一さんの作品らしくて面白い。

「湯川さんは写りたい」のオチが難しく理解できなかったのですが、読書メーターで解説していただけて納得・・・!こわっ!

(4点)

 

■沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクション/乙一 中田永一 山白朝子 他

 

アンソロジー小説は前出のようにほとんど楽しめることが少ない私。

そんな中で、これほど安心して読めるアンソロジーがあろうか(笑)

 

前作のメアリー・スーを殺してに続いて安定の面白さ。

だって全部安達寛高さんの様々な名義の小説集だから!

 

乙一さんの作品が多め、山白さんは一作のみだけどこのホラー感よ!

中田さんの作品がやっぱり一番好み。

 

きっと三作目もこのシリーズ?ありますよね?

(4点)

 

■あきない世傳 金と銀(12) 出帆篇/高田郁

 

安定のこのシリーズ。

さらっと一年が過ぎていくのだけど、え!あの小さかった賢輔どんがもう30歳?!と衝撃を受ける。

というか、幸も菊栄も40をいつの間にか超えていたのね・・・

時の経つのがなんと早いこと・・

 

日本橋音羽屋が直接ではないものの間接的に相変わらず色々仕掛けてくるものの、コツコツとお客様になることを重ねてそれを確実に信頼に繋げている幸たちの商いの仕方は毎回じんわりと温かい気持ちになる。

不穏な空気がただよう中でも、お梅どんが帳消しにしてくれるところが良いですよねえ。

安定の面白さ。

(5点)

 

■楽園ジューシー ホテルジューシー/坂木司

 

ホテルジューシーが面白かったという記憶が凄くあるのだけど、すっかり内容を忘れているのでそちらを再読してから読んだらもっと面白かったかもしれない。

 

主人公がまるで自分のようにネガティブ、後ろ向き、人付き合い苦手の社交性なしで若干イラっとする感じなのだけど、友人になったばかりの人からズバッと言われてしまうシーンはなんだか自分が言われているみたいでやけにぐさっときてしまった。。

 

前作に比べると主人公が明るい性格ではないこともあるのか?沖縄の陰の部分が描かれている本作は、前作のように面白かったなあと思う読後感とはちょっと違ったかも。

いや、つまらない訳ではないのだけども。

(3.5点)

 

■小説 シライサン/乙一

 

これ映画化されているらしいですね。

小説だから良いけど映像となると怖いかも・・!

 

結末がここで終わり?!という感じだったのと、結局どうなるかが描かれないところがその後が気になって仕方ない感じでした。

 

ネットで拡散されると一気に広まってしまう。それは呪いも一緒というのが怖いですね。。

(3.5点)

 

■鑑定人 氏家京太郎/中山七里

 

浦和医大の光崎やキャシー、県警のアマゾネスなど他シリーズで登場する人物がでてくるのは嬉しい。

 

元科捜研の有能な人材が集まる鑑定センターの氏家が主人公。

これはまた別のシリーズの始まり?

 

元科捜研ということと、有能な人材も科捜研から引き抜いて(はいないけど元同僚たちからするとそういう風に見える)いるせいか、現役警察の面々とあまり良好な関係ではない氏家。

 

3件の殺人事件の真相は。

鑑定結果が導き出す犯人とは。

 

これはなかなか面白い話で続編も期待です。

(4点)

 

■おわかれはモーツァルト/中山七里

 

安定の岬洋介シリーズ。

前半岬がなかなか登場しないのでもどかしさを感じたものの登場すると途端に面白くなる展開。

 

そういえばあの盲目と偽っていたあの人、いたよなあと思いながらあの人今何やってんだろ・・とか思ったり。

本当にこういう人がいてとばっちりを食らう本当に盲目で才能がある人にとってはたまったもんじゃないですよね・・・

 

犯人はこの中の一人かな?と思っていた予想が外れたので意外性があったのと続編もすでに決まっているようで今後も追い続けたいシリーズであります。

(4点)

 

■朔が満ちる/窪美澄

 

窪さんもチェックしていない間に結構未読作品がたまっていたことに気づいて図書館で借りたもの。

 

この主人公のように父親から暴力を振るわれていたということは全くないのだが、子どもへの「無関心」であるとか、「普通の」「幸せな」家庭には育っていない自分には、父親が余命いくばくもないと聞いた時の主人公の気持ちやあの複雑な心境が凄くよく分かるなあと思ってしまった。。

 

運命的に出会った梓も辛い過去を持った女性だが、一緒に浮上していこうとする展開にはとても好感がもてる良作だった。

(4点)

 

■ははのれんあい/窪美澄

 

タイトルがもったいない。

このタイトルだと手に取ろうと思わない人が結構いるのではないかしら・・・久々に読後、心が洗われるような本でした。

 

第一部ではただ頼りないという印象の由紀子が、3人の子育てと慣れない仕事に翻弄される日々が描かれる。

第二部は15歳になった長男の視点で展開していくのだが、この長男がめちゃくちゃよくできた息子すぎて・・・

 

しかし家族の形が変わっていっても、子供の成長や家族への想いが強く伝わってきてとても良い作品でした。なのでやっぱりこのタイトルは勿体ない!

(4.5点)

 

私は女になりたい/窪美澄

 

これはタイトル通り。

年下の男性と連案関係になった女性が相手との過去を振り返りながら思い出に浸っていく・・・というよくあるパターンと思わせて、ラストは意外な展開で案外悪くなかった。

(3.5点)

 

■八月の母/早見和真

 

これは・・イノセントデイズに繋がる(冒頭でもそれと思わせる描写がある)不穏さ。

実際に起こった事件が題材になっているようで、更に重い雰囲気。

 

家族の負の連鎖が親子三代に渡って続いていく・・・

例えこの連鎖を断ち切りたいと願っても、周りが、周囲に環境がそうさせてくれない。

そんな中でこの連鎖を断ち切ろうとするラストは深く考えさせられた。

 

こういう重い話は個人的には大変好み。でもしんどい時に読むと入りこみ過ぎて辛くなるけどね。

(4.5点)

 

■アフター・サイレンス/本多孝好

前半は入りこみづらかったものの、本多さんの丁寧な人物描写、優しさをじんわり感じる展開になるにつれ、ようやくすっと話が入ってきた感じでした。

これは続編もいけそうで個人的にはもっと読みたいと思います。

(4点)

 

■人面島/中山七里

人面探偵シリーズまさかの二作目。

主人公が苦手なタイプなのでジンさんがでてくるまで結構読むのが辛かったわ・・

 

ラストが意味深な描写あり。本当にジンさんは存在しているのだろうか。。

(3.5点)

 

■これは経費で落ちません!9 ~経理部の森若さん~/青木祐子

安定のシリーズ。

29歳って今やまだまだ若いのに、って思うけど、30歳を目前にしてのあの不安感って今になってみると不思議ですよね。

 

結婚の二文字がちらつき始めた森若さん。太陽との関係は順調。

経理部も新人がようやく軌道に乗ってきて、チームプレイもできていて、仕事も堅実にこなしている日々。

 

周囲が相変わらずがやがや。不穏な鎌本の行動とそして最後の太陽のセリフ。

続きはどうなる?

(4.5点)

 

■作家刑事毒島の嘲笑/中山七里

すっかりシリーズ化していますね。

犬養は名前だけ、高千穂は少しだけ出てくるものの、今回毒島と行動を共にするのは公安の刑事。

右や左の話は難しくて正直よく分からない・・・

ちょっと偏った主張などはたまに中山さんの作品に出てくるけど、今作はそれが強めであまり楽しめなかったです。

ただ、毒島はキャラが立っているので、きっと次回も続きますよね笑

(3.5点)

 

■棘の家/中山七里

雫井さんの作品のような中山さんらしからぬカラーの作品。

いやこういうの自分は好きなんだけど、後半に連れてやはり中山さん、一筋縄ではいかない展開になりましたね。

 

子供が大変な時期に何やってんねんこの母親は!と思ったり、家族の知らない面を知ってしまった夫であり父親である主人公に救いはあるのか・・・と思うが、唯一息子の想いだけは本物のようでちょっとほっとしました。

(4点)

 

■レンタルフレンド/青木祐子

全くの他人の結婚式に友人として出席するバイト、みたいなもの映画やドラマではよくあると思うのですが、有料でご希望の設定の友達として「レンタル」できるというレンタルされる側の女性の話。

 

クライアントは女性限定。様々な事情を抱えた依頼者の人間模様が興味深かったです。

 

青木さんのちょっと毒のある目線で描かれる物語とそれでいて読後感が悪くないところが好みなんですよね。

(4点)

 

■コーチ!はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル/青木祐子

常に自分に自信がなくてネガティブな人なので、はげまし屋なんていうものがあったらちょっと利用してみたいと思ってしまいました。

 

本名で、しかもHPで顔出しもしていて電話でこんな風に励ましてくれるなんて、変なお客さんにつかまったら・・・実際こんな仕事があったとしたら現実的ではないけれども、色々な理由で励まされたいと思う人々の話がなかなか興味深かったです。

(3.5点)

 

■母性/湊かなえ

知人から文庫をいただいたのですごく久々に読んだ湊さん。

やっぱり私、湊さんの作品苦手だ・・・と感じた。

 

「告白」を超える衝撃な多分もうないと思っているのと、文章が個人的に読みにくくてなかなか苦戦。

 

映画化で話題になっている作品だけど、母親からの教えを病的なほどに忠実に守ろうとする母親がなんだか恐怖でもあるし、そんな母親からの愛情を得ようとから回る娘の姿も読んでいて苦しかった。

 

ただただ嫌な気持ちが続き、展開の遅さも好みではなかった・・・

湊さん、やっぱりしばらく読むことはないかも。。

(3点)

 

■そして誰もゆとらなくなった/朝井リョウ

ゆとり三部作完結編。

 

どんなに好きな作家のエッセイでも、面白いと思えるエッセイに出会えたのは豊島ミホさんを除くとこの朝井リョウさんのみの私。

 

そして三作目の本作も期待を裏切らない面白さでした。

 

今回は特にお腹壊し系エピソードが多めではあるけれども、それをおかしみに変えてしまう朝井さんはやはり只物ではないと思います(笑)

 

お酒はあまり飲まず、甘党でお腹弱い、という共通点もさることながら、滝行の下り・・・あれ、私が滝行やったところと同じじゃね?!というエピソードがあり、更にファンになりました(笑)

 

私も相当な甘党だけど、12月のクリスマスまでにホールケーキを5個も食べたというエピソードには度肝を抜かれました(笑)

その話を夫にした後に本を机の上に置いておいたら、そのエピソードだけ読んだようで、朝井さんと神との対話が面白かったらしいです(笑)

 

あと、朝井さんが書いたちいかわのイラストがめちゃ可愛いです。

 

また何故かかきおろしらしいこのエッセイ、一つ一つのエピソードが長めなので前作に比べると手軽には読みづらいかもですが、それでも文章が本当に上手くて読みやすいので家以外で読むとにやけて大変なことになります。

 

文庫化したらこれも勿論買います(笑)!

(5点)

 

レジェンドアニメ!/辻村深月

ハケンアニメ」のその後の話や、過去の話などスピンオフ作品集。

再読して映画も見た後なので、余計に楽しめました。

 

特に「ハケンじゃないアニメ」はこれってドラえもんのことですよね?というアニメを作成している現場の話で、覇権を取るアニメとは棲み分けされている「国民的アニメ」を手掛ける世界の話。

全世代の誰もが知っているアニメだからこそ、新しい試みにも高いハードルが立ちふさがるが、瞳が手掛けたOP映像の展開が文章だけなのにまるで目の前で映像を見せられているかのような気がして、じんと目頭が熱くなった。

 

チヨダ・コーキが出てきたのだから、やっぱり出てきた赤羽環!

これは辻村作品のファンにはたまらないですよね。すごく続きが気になる感じの話になっていたので、ぜひとも続編を希望したいです。

進展しない王子の恋の続きも気になります。

(4.5点)

 

■あきない世傳 金と銀(13) 大海篇/高田郁

何度目頭が熱くなったかしれないこのシリーズ。

 

前半は順風満帆、ほっとしたのもつかの間。

信じられない事件が起こり五鈴屋の面々や菊栄が茫然とする中、怪しい動きを見せる惣ぼん。まさかそんな・・・とハラハラする中で、最後はすっとする展開になってほっとしました。

妹の結との関係はこれで解決・・・なのかな、ちょっとすっきりしない気はするけれど。

賢輔の秘めたる思いは読者には駄々洩れだったけど、直接的ではないけれど真摯な告白が胸を打ちましたね・・

幸と絶対いい関係になれると思うのだけど、まさかの最終巻!毎回続きが気になって仕方ないシリーズでしたが、これで終わりとは切ない。

と思ったら、あと二作ほど刊行予定があるとのことで楽しみ。

(5点)

 

■嘘つきジェンガ/辻村深月

2022年最後は辻村さんで締めました。

 

「詐欺」をテーマにした三編を収録。

 

コロナが始まったばかりの頃、東京から田舎に帰ることの「大変さ」、まだ得体のしれない存在だったウイルスに対して過剰なくらい警戒していたあの当時、ほんの数年前のことなのに、そういえばそんなことあったなあ・・と思うシーンに、未だコロナが収まらない世の中を思ってしまいました。

 

詐欺というと重いテーマのように思うけど、辻村さんは最後には必ずほっとした結末を用意してくれ、とても好みの作品だった。

(4.5点)