下半期編(33冊) ※随時更新していきます。
最近、話題の「ミステリと言う勿れ」を読み、かなり面白かった!
スマホで試し読みしたら続きが気になるので、既刊全巻大人買いしてしまった人。
ドラマはキャスティングにもやっとしたものを感じるものの、ちょっと気になるので見てみようと思っている。9巻が楽しみですな。
■クジラアタマの王様/伊坂幸太郎
新型インフルエンザやワクチンやパンデミックなど、コロナを連想させる話なので、コロナが発生した後に書かれた本なのかなと思い発行年を見てびっくり!
コロナ前の作品だった。
伊坂さん、コロナを予見していたのでは?!
夢の中で戦う人たち。こちらの世界でピンチになると夢の中の戦いの結果により、良い方か悪い方かに転がる。
お菓子メーカーのサラリーマン、芸能人、政治家と全くの接点がないと思われた3人が、昔ホテルでの火災に巻き込まれた共通点が―
小説の合間にセリフのない漫画があり、この漫画は何だろうと最初は小説との共通点が分からなかったのだけど、読み進めていくうちに夢の中(向う側)の世界が描かれていると知る。
今までにない試みも面白い。
そして伊坂さんの描く女性のパワフルさは相変わらず好ましい。
なかなか面白かった。
(4点)
■アンと愛情 和菓子のアン/坂木司
続編が出たと知り、図書館の予約をじりじりと待つ日々でした。
やっぱりこのシリーズ大好きだなあ。
シリーズ既刊本を読んだのが結構前なので、細かい設定をかなり忘れていたのが惜しいのですが(できればシリーズを読み直してから読むともっと楽しめたかと!)、単体で読んでも十分に面白かったです。
アンという主人公(まだ成人式やるようなお若いお年頃)は、ぽっちゃり気味で食べることが大好きな普通の女の子。
そんな女の子がデパートの和菓子屋さんでアルバイトをするようになり、職場の同僚や上司やお客様とのかかわりから、和菓子について学ぼうと意欲を持ったり、お客様からの要望に真摯に応えようと奮闘する姿がとにかく元気をもらえるんですよね。
同い年で仕事ができる子が応援に来た時の話とか、その人と自分を比べてしまう感じだとか、あるある!と思うシーンが凄く多くて共感できるところとか。
(ネタバレあり)
店長の異動により、今後どういう店長がくるのか、職場の雰囲気は変わってしまうのか?等々今後の不安はあるものの、恋愛方面においては鈍いアンちゃんの恋模様(?)も続きが気になるところ。
そして何より和菓子の美味しそうなこと!読み終わったらきっと和菓子を買いにお店に走っているでしょう(笑)
(5点)
■麦の海に沈む果実/恩田陸(再読)
最新刊を読む前に再読。読んだのいつぶりだ?!っていうくらい久々ですが、面白かった記憶だけはずっとあるやつです(笑)
何故かうちの近くの図書館に「黒と茶の幻想」が置いていないため、飛ばして理瀬シリーズへ。
外界から閉ざされたミステリアスな学園に2月のおわりにやってきた理瀬。
不穏な噂、事故死、疑心暗鬼になる日々・・・と不穏さのオンパレードでわくわくしてしまいます。
(ネタバレあり)
記憶をなくしていた理瀬が記憶を取り戻し本来の自分を取り戻すラスト。美人なのにおどおどと自信がない性格と思わせて実は・・・次のシリーズが楽しみです。
(4.5点)
■黄昏の百合の骨/恩田陸(再読)
こちらも再読のはずなのだけど、全然記憶がないのは何故・・・。
前作より数年後、高校生になった理瀬が日本に帰ってきた。
祖母の不審な死、癖のある伯母たち、久しぶりに再会する従兄弟たちと皆何かあるわね?!と思う不穏さは健在。
まさか関係ないと思っていたこの子まで・・・という展開からの、ラストでまたびっくりさせられるのがいいです。
本作だと理瀬が思ったより簡単に人を信じすぎて窮地に陥ったりしまくるので、設定ほど有能で頭が切れる感じがあまりかんじられないのだけど、まだ人の心が残っている未熟さってことなんでしょうかね。
ヨハンは名前だけ出てきただけですが、最新刊ではヨハンが出てくるのかしら。
(4点)
転校生が出てくる話が3編続くので、そういうテーマなのかなと思ったのですが、違うみたいでした。
磯憲という先生が共通項になっているのと、小学生の男の子が主人公というのが特徴でしょうか。
小学生の時って、よくも悪くも親の影響や先生の影響を受けやすいですよね。
特に学校という小さいネットワークの中で、先生の言う事って正しいって思ってしまうところとか。
小学校の時はひいきをする先生しかいなくて全然楽しくなかったので、こういう先生がいるってうらやましいです。
何気ない言動で児童を貶め、それだけではなくクラスメイトにもそのイメージ(下に見ていいんだみたいな)を植え付ける先生が出てくるけど、その先生が同じ過ちを犯さないように、色々な作戦を実行していく小学生たちの姿が愉快で微笑ましかったです。
そして伊坂さんの描く女性最強説。ラストの話のお母さん、素敵でした。
(4.5点)
■テーマ別だから理解が深まる日本史(だからわかるシリーズ)
日本史で興味があるのは、幕末から現代まで。
ということで、幕末から平成までを先に読みました。
重要な点を絞ってぎゅっと凝縮して説明があるので、興味がある分野だと少し物足りなさもあったものの、見開きカラーの写真や資料があり、簡潔に説明されているため、興味のない古代~江戸時代までも結構面白く読めたのが驚き。墾田永年私財法とか中大兄皇子とか久々に見たわー。
教科書もこれくらいシンプルであったらもう少し勉強も楽しかったかなあ。
世界史版もあるようでちょっと読んでみたいかも。
(4点)
■オムニバス 警部補 姫川玲子/誉田哲也
かなり久々の誉田さん。姫川玲子シリーズが出ていると知り、ようやく読めました。
このシリーズは長編のぐろいくらいむごたらしい事件を追う展開の方が読み応えがあるのだけど、こういう短編も面白いですね。
現在の姫川班のメンバーや周辺人物から見た玲子は、階級や性別の違いなど、人によってそれぞれ印象が違っていて面白いです。
猟奇的な事件ではないけれど殺人事件の容疑者の取り調べなど、日常的に事件は起こっていて、その中でも直感的に怪しいと思ったら突っ走って、結果犯人逮捕に繋げてしまう玲子が超人的です。
その超人的な面を色々な見方で見る人がいて、よりリアルに人物像に迫っている感じて興味深かったです。
ずっと犬猿の仲(玲子が一方的にか)だった日下と良い意味で距離を保ちながら良好な関係を築いている様子や、微妙な関係だった菊田とも仕事の仲間としてうまくやっている様子。
日野さんとも少し打ち解けたかなというところで姫川班から異動になってしまうとはちょっと寂しいな、と思っていたら・・・なんとあの魚住さんの名前が!
たまに名前だけ登場することがあったけど、まさかここで姫川シリーズと繋がる?!んですかね。今後が楽しみになるラストでした。
(4点)
■あきない世傳 金と銀(十)合流編/高田郁
毎回続きが気になりすぎるのだけど、図書館で予約待ちが長くて読んだすぐあとに新刊が出るというペースになっている(笑)
結に翻弄された五鈴屋の面々。今回も誰かが裏切ったり妨害があるのでは?と勘繰りながら読むも、安心して読める一冊でした。
新たな商いの道筋を見つけ、お披露目の機会までに長い時をかけじっくりと商品を作り出していく。
現代においたらやり手の女社長と優秀な社員を抱える会社というところか。
とにかく主従の関係が良好で、部下をきちんと見ている社長とその気持ちに応える部下といった感じがうらやましい。
ついに菊栄とお梅どんが江戸にやってきて、こちらもやり手の菊栄の手腕と心遣いに感動、そしてなんと頼もしいこと!
これまでの苦労をずっと読んできた読者は今回本当に嬉しくてたまらないと思います(もちろん私も!)
そして、お梅どんと梅松さんのもどかしいほどの恋がようやく・・・!
ああ面白かった!と思うくらい続きが気になって、ページをめくる手がもどかしかったです。
新刊ももう出ますね。気になるわー!
(5点)
■透明な夜の香り/千早茜
偶然とある求人を見かけたことから働くことになった一香は、調香師の朔という匂いでその人の背景や生活をすぐに察してしまう不思議な男性の下で家政婦として働くことに。探偵の新城の紹介でやってくる依頼者は、様々な事情を抱えて香りをオーダーする。
身内に何か暗い過去を抱えている一香と幼少時のネグレストを受けた朔の少し歪な愛情を、単純に男女の関係にさせず、お互いに触れる事がないのに漂う色気は千早さんならでは。
(4点)
■夜明けのすべて/瀬尾まいこ
生理前のあのいいようのないイライラ・・・私も一時期仕事の時に怒り爆発させて超迷惑をかけていた苦い記憶があるので、分かる、分かるよ・・・!と思いながら読みました。
今は前よりは少しマシになったかな?夫にはあたってしまうけど(ごめんよ)。
同じ職場のお互いがどっちかというと苦手なタイプと認識していた二人が、お互いの抱える病気を知ってから、病気に対して理解しようとしながら、様々な(時折こっけいとも思える)方法で歩み寄っていくという展開です。
瀬尾さんの作品なので終始優しい雰囲気で、悪人が出てきません。
そして二人が働く会社の社風や社長の考え方(水虫の話はくすっと笑ってしまいます)が素敵で、こういう会社で働けたら幸せだろうなあとしみじみ思いました。
自分が休んでも回る仕事=大した仕事を任されていないから、じゃなくて、周囲の人が自分の仕事まで対応できるくらい有能だから、という考え方は凄くいいですね・・。
パニック障害はうちの母がそうなのですが、検査しても異常がないのに本人は物凄く辛そうっていう、どうしたらいいか分からない状況になるんですよ。場所や時を選ばず。。だからこの本の中でも電車一駅分の時間ですら1時間にも感じられるほどの苦痛という描写が読んでいて苦しかったです。
病気って本人にしか辛さが分からないから難しい。
こういう風に歩みよっていける関係って素敵です。
(4.5点)
■明日の僕に風が吹く/乾ルカ
意外と乾さんもコンスタントに本を出されていて、しばらく読んでいないうちに未読のものが増えてきたので図書館で借りてみました。
都会で傷つき部屋に引きこもるようになった少年が、叔父の勧めで離島の学校に入学することに。そこで出会った人や経験を通じて成長していく・・・というよくあるパターンの話。
主人公の引きこもりの原因は人の命に係わることだったということもあるけど、いつまでも悲観的なところは読んでいてもどかしい。
けれども成長物語として最後はちゃんと主人公の成長が分かるので安心して読めました。
(4点)
これは・・・非常に苦戦しました。
私、漫画とか本でもやたらめったらそんな名前ありえないだろっていう感じのキャラクターが出てくるのがどうも苦手で・・・
乾さん自身、テーマだけ決まったものの話の展開に戸惑ったとあとがきで語っているくらいなので、若干迷走している感があった気がします。
突拍子もない「カレー部」の話ですが、本当に存在するらしいです。
いつもの乾さんを想像して読み始めるとかなり面食らう話かと。自分の好みでなかったです。
(3点)
■さんかく/千早茜
千早さんも少し読まないうちに未読本が増えてきたので図書館で借りました。
アラフォー独身女の高村(同い年やないか)と胃袋を掴まれて同居することになった年下の伊東、その彼女で大学院生の華の3人の目線で展開する話。
華がどうも周りにいないタイプ過ぎて華のパートだけ読むのが大変でした。
恋人でもなく家族でもない異性との「同居」。高村が作る丁寧な手作り料理の数々は文章を読んでいるだけでも美味しそうって思ってしまう。
胃袋だけではなく、少しのきっかけやタイミングが合っていればもしかしたらこの二人は上手いこといったのではないか・・・と思うのに、結局そうならないところが千早さんの作品らしい。
伊東が結局華を選んだのがちょっと自分的には理解できないのだけど、人生は意外とこんなものなのかなあと思う結末でした。好み。
(4点)
■おとなになるのび太たちへ:人生を変える「ドラえもん」セレクション
辻村さん目当てで予約していてようやく読むことができました。
文章よりもドラえもんの漫画のボリュームが多いので、とっても読みやすい。
「さようなら、ドラえもん」(何度読んでも涙ぐむ話)以外は未読の作品が多く、新鮮でした。
のび太は運動も勉強もできないダメな奴だけど、あやとりが上手で人一倍優しく誰かのために行動することができるんですよねえ。
子供だけではなく大人も楽しめる本でした。
(4点)
表紙から嫌な予感(=多分自分には合わない)がしていたのですが、完全にダメでした。。
いや、クリープハイプの曲も聴くしライブも観たことはありますよ。普通に聴きますよ。
文章がべらぼうにへたくそな訳ではないのだけど、やっぱり本業の千早さんと比べた時に(交互に展開される)ちょっと違和感みたいのはありますね。でも酷いというレベルではなかったですが。。
千早さんも無理に男、体の関係、ダメ男とダメ女を書こうとしている感じがあって、なんというか生理的に合わない話でした。
致命的なのは、登場人物のこの男女が本当に読んでいて不快感しかなかったこと。
これはなんというか、こういうダメ男と付き合っていた当時の自分のあの訳もなくイライラして吠えてばかりだった不快なあの頃を思い出すからというのもあるんだろうな。
そういった意味で非常にリアルで、まさに「犬も食わない」のでした。
(2.5点)
■ラスプーチンの庭/中山七里
犬養シリーズが出ているのを知らず、たまたま図書館の棚で中山さんのところを見ていたら発見したもの。うっかり読み損ねていました。
毒島の教育の賜物か、つっかかってばかりだった高千穂が少しずつ犬養に歩み寄って、更にどんどん有能な部下になっていくところがいいですね。
今回は犬養シリーズにしてはあっというどんでん返しがなく意外とあっさりとしていたものの、安定の面白さでした。
でも、子供が病気で死んでしまうという話は小説でもやっぱり辛いですね。。
(4点)
電車の中吊りで話題!ってなっているのを見かけた記憶があり、そういえば相沢さんの本を久しく読んでいなかったなあと思い、いつか読んでみたいと思っていたものでした。
日常ミステリ、特に学園ものでへたれ男子が憧れる美少女が謎を解く、という展開が多いイメージの相沢さん(酉野シリーズはもう出ないのかしら)。
今回はしっかりと人が死ぬミステリ(殺人事件とか)でした。
霊媒美女と、ミステリ作家のタッグで事件を解決していく展開が続き、シリーズ化もするのかなあと読んでいると・・・え、もしや・・・と一度びっくり。
そして更にびっくり・・・!という怒涛の展開が続き、全体の謎解きが続きます。
まさかそういう展開に・・・いや、でもこんな天然ドジっ子美女がいる訳ないもんな、確かにと変に納得しながらまさかの結末に驚き楽しめました。
日常ミステリよりこっちのほうが好きだし、相沢さん全然いけますよ!と思いました。
続編も出ているようなので気になります。
(4点)
■N/道尾秀介
読書メーターの献本プレゼント(サイン入りプルーフ本)に応募したら当選するという奇跡が起こった本作。
(プルーフ本って?→発売前の書籍PR使用のため最終稿前の原稿を製本したもので、非売品らしいです。もしかしたら発売本はちょっと内容も変わっているのかも)
献本プレゼントは応募しても当たるわけがないやつと思っていたのですが、まさか私の大好きな道尾作品に当たるとは・・・!トップランナーの観覧もそうだけど、道尾さん運が強いかもしれないです(笑)
ということで、発売日前に読める幸せを噛みしめながら読みました。
この作品の面白いところは、冒頭に各章の冒頭部分だけ読めるようになっていて、読みたいと思った話から自由に選んで読めるというところ。
また、章ごとに上下反転しているため、本をくるりと逆にして交互に読んでいくという趣向を凝らした面白い試みがなされています。
私は、単純に最初のページから最後まで読んでみました。
全部全く繋がりのない短編なのかな?と思って読み始めたのですが、先に読んだ話に出てきた人物やモチーフ、話がちらほらと登場してきて、実はさりげなく関連する人や物や生き物たちが出てくるのですね。
あまりにさりげない繋がりなので「あ!」と気づいた時の嬉しさ。
また、読む順番によっても物語の捉え方や感じ方が凄く異なってくるだろうなと読み終えて感じました。
個人的には、「笑わない少女の死」→「消えない硝子の星」の流れが秀逸で、ちょっとですね、これは結構ぐっときてしまいました。
購入してまで手元に残しておきたいかというと、過去道尾作品と比べると否なんですけど(失礼)、手元にあるので今度読むときは全く違う順番で読んでまた違う感じ方を経験したいと思いました。
読書メーターさん、献本をいただき本当にありがとうございました。
(4点)
■ひきなみ/千早茜
離島にやってきた都会の子供がその島で経験しながら成長していく・・・先日読んだ乾ルカさんの話に似通っている印象で、読み始めはうーむと思いながら読んでいたのですが、そこは千早さん。一筋縄ではいかない展開でぐいぐい読ませます。
前半と後半で年齢も環境もガラッと変わる展開になる対比も良いです。
離島で過ごす生活・・・の話は、ドラマも小説も前向きなハッピーエンドの展開になることが普通というイメージだったので、こういった必ずしも幸せな展開ではないけど余韻の残るストーリーは斬新で引き込まれました。
(4点)
小説版で半沢直樹を知ったものの、小説ではなかなか銀行の世界が難しくてあまり入りこめなかった人。ドラマを見たのも続編からで、あらこんな面白かったっけ?と思いながら楽しみました。
それでも小説は苦手意識があり、発売しているのは知っていたものの手が出なかった本作でした。
前半はなかなか入りこめなかったものの、後半の悪者を叩きのめす半沢の図、がスカッとしてやっぱり面白かったです。
(4点)
■ザ・ロイヤルファミリー/早見和真
図書館でこの本を見かけたときに、まだ読んでいない本だなあと思い手を取ったのですが、競馬の話ということで一度棚に戻した人。
読書メーターで思っていたより面白かったと感想を書かれている人がいて、それならばと思い切って借りてみることにしました。
結果、想像していたよりも遥かに面白かったです。
競馬の話ではあるのですが、競馬に係る一家の家族の話でもあり、その一家に関係する人物の視点から、全く未知の競走馬を所有し育てていくという「馬主」の姿が描かれていきます。
競馬=ギャンブルでやはり良い印象は持てないのですが(父親のギャンブル狂いで苦労したので・・・)、裏でこんな風なことが起こっているんだ・・と知らなかった世界を知り、ただただ新鮮でした。
そこに「家族」の話も絡み、奥深い内容に。厚めの本でしたが、面白くてページをめくる手が止まりませんでした。
早見さんはやっぱり個人的にはこういう路線の方が好きです。随所随所にぐっとくるところがあるんですよね。
(4.5点)
■教室に並んだ背表紙/相沢沙呼
相沢さんは男性作家さんなのに、なんでこう思春期の女子の悩みや気持ちがこんなに分かるんだろう・・・と毎回思う学生たちをメインとした話でした。
人間関係や学校生活が上手くいかず、内にこもりがちな少女たち。
そんな少女たちにさりげなく寄り添う司書のしおり先生。
日常ミステリ好きをこんな風に活かせるなんて・・・と感激してしまいます。
1編だけ舞台が異なるのはそういうことか、と結末で分かり、ミステリ要素があるのも面白かったです。
(4点)
■ヒポクラテスの悔恨/中山七里
大好きなヒポクラテスシリーズ。
いつものシリーズに比べ、あっさりと解決してしまった印象を受けるものの、安定の面白さ。
渡瀬に上手く使われているようにも思うものの、古手川が動く動く。
事件解決のために奔走する姿はなんかやっぱり好きなのですよねえ。
それにしても遅々として進まない真琴との関係がもどかしい!続編に期待しましょう。
(4点)
数々の名探偵ものはあるけれど、やっぱり御手洗シリーズが一番好き。
奇人変人が多い名探偵の中で、初期の頃の御手洗の人情味溢れるところは良いですねえ。
その対比として石岡君の普通さがかえって素敵でもあり、共感してしまったりもして、改めて読み返してみて面白いシリーズだなあと思いました。
また時間があるときに読み返したいなあ。
(4点)
■鶏小説集/坂木司
肉小説集は読んだ気がするのですが、多分鶏は読んでいなかった気がする・・と借りてみました。
本当に思うのが、坂木さんの文章の癖のなさ。読みやすいってすごく単純なことかもしれないけど、大事なことですよね。
鶏肉に係る様々な話が収録されていて、同じ世界の中で登場人物が交差しているのが面白いです。
「トリとチキン」、「羽のある肉」が特に好きです。
(4点)
■薔薇のなかの蛇/恩田陸
理瀬シリーズ、なんと17年ぶり!だそうです。
昔恩田さんの本を読み漁っていた時に、特に好きなシリーズですごく面白かった記憶だけが残っていました。
今回のシリーズ最新刊の発売を聞き、過去作のおさらいをしておいたのが功を奏し、楽しめました。
話自体は従来の展開に比べると意外とあっさりめですが、20歳になり益々美しくミステリアスな女性に変貌した理瀬の話と、ヨハンの話がどこで繋がっていくのか・・・
挿絵がまたこの世界観にあっていてよいんですよね。
終始漂う不穏な雰囲気がまさに好みでした。
(4点)
■ストレイドッグス/樋口明雄
終始切なさを感じる話だった。
母と関係のある組の者に可愛がられていたアキラ。米兵たちと活気のある夜の町。
筋者と堅気の人間が普通に共存していた当時の時代。
ジン、ノンタという友人となったアキラだが、とある事件が3人の運命の歯車が残酷な展開に回り始めていく。。
将来の夢を語り合った青春時代、かけがえのない友人。そんな3人が悲しい運命に翻弄されていく様がとにかく切なく・・引き込まれる話でした。
(4点)
■オルタネート/加藤シゲアキ
話題になっていたので借りてみた本。
アイドルと作家を両立する加藤氏。以前読んだときに、思ったより悪くなかったなという印象があったので、久々に読んだら読みにくさが勝って面食らう。
それもそのはず、読めない今どきのキラキラネームばかりの登場人物(こんな名前の人いないだろ!と思う感じのライトノベル的な名前が苦手な人)、ちょっと登場人物が多くないか?という感じと、3人の視点で話が展開していくので、なかなか入りこめず苦戦。
悪くないけど、自分好みではなかった、という印象。
(3点)
■図書室の海/恩田陸
何度も読んでいるはずなのに、読む度に初めて読んだような気持ちになる不思議な作品。
六番目の小夜子の番外編が入っていたのは覚えていたけど、理瀬シリーズと夜のピクニックの番外編も収録されていたんだ!ともう何度目になるか分からないくらい読んでいるのに失念していた人。
理瀬シリーズは最近改めて読み直したこともあり、テンションが上がりました。
恩田さんは、やはり不穏な雰囲気の話が好みです。
(4点)
■あきない世傳 金と銀(十一)風待ち篇/高田郁
毎回目頭が熱くなる本シリーズ。
辛いことや苦しい展開が続いても、知恵を絞り、常にお客様のことを考えて新しい商いに挑戦する五鈴屋が本当に素敵。
それもあり、結の悲しいほどの変貌ぶりにはとても悲しくなってしまう。。なんと残酷な展開なのか・・
それでも常に前を向いていく姿に励まされ、胸を熱くしてくれる。
今回も大満足でした。
(5点)
これって本当に存在するカルト集団がモデルに書かれているんですね・・!知らなかった。。
親と子が離れて別々に暮らすことで、子供の自主性を育てる。
一見聞こえが良いように思うけど、それって本当にそうなの?とじわじわとした不穏な気配が漂う展開。
親を求める子供と、離れ離れの生活を強いる親。
これが本当に起こっている話なのかと思うと、あまりに子供の気持ちをないがしろにしすぎではないか。。。
辻村さんの作品なので、事件の真相にどんでん返しを期待してしまったけど、そういうのは特にありません。
辻村さんは子供を持ってから、親と子の関係にフォーカスをあてた作品を発表されていますよね。親の立場だったらまた違う印象を受けたかな。
考えさせられる話でした。
(4点)
万城目さんの作品は、とっぴんぱらりの風太郎以来、ちょっと難しい話が多くてあまり入りこめないことが正直多い(デビュー作~とっぴんぱらりの~までは本も持っているくらい好き)。
万城目ワールドの奇妙奇天烈さは全く問題なく、むしろ大好きなんだけど、根底にある話に詳しくなくて難しい、と感じてしまうんですよね。
今回も化石だの層だの難しい話が根底にあり、すっと読めるわけではなかったのですが、三つ子たちの不思議な「3秒」の力やライオンを連れた謎の青い女など強烈な個性のあるキャラクターたちが相変わらずいい味を出しています。
どんな展開で終わるんだ?と予想できないまま上巻が終わり、結構分厚かったなあという印象はありつつもなんとか読み切る。
果たしてどのような結末になるのか。下巻も読みます。
(4点)
■海と毒薬/遠藤周作
遠藤周作さん、有名な方ですが多分初読みかもしれない。
妻夫木君主演のNHKのドラマで初めてこの事件を知り、関連書籍を探していて知った本。
戦時下、アメリカ人捕虜への人体実験というセンセーショナルな事件。
戦時下という特別な環境だったから、上に逆らうことができないから・・・理由はあるのかもしれないけど、これは日本人だからこそ起こってしまったことだと強く感じた。
本作の中に外国人の女性が出てくるけど、きっと外国でこういった同じ状況が起こったとしたら、宗教観というは勿論あるけど、絶対にこれはおかしいと声をあげる人がいたはずだ、と思うのだ。
日本人の性格というか、悪い意味での真面目で従順なところがこういった悲劇が起こってしまった原因なのでは・・・と考えさせられた。
ドラマは本人に罪の意識や正義感や倫理観を残す展開だったのに対し、本作は非常に淡々としているだけにリアルで恐ろしさも感じた。
(4点)