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39歳の迷走

顕微授精からの1回目の移植は案の定うまくいかず、2回目のチャレンジへ。

 

本日人生2回目の採卵。

小さい卵を含めて5個くらいできていたけど、取れたのは2つ。

成熟卵1個は今回も顕微授精、未成熟卵1個は限りなく成熟卵に近いらしいのだが、培養していくらしい。

 

採卵は我慢できないほどの痛みではないけど、やはり痛みはあるし、手間も時間もかかるので複数個取れたらその方が後々楽だと思うので、2個とも大丈夫であってほしいところ・・・

今日は前回に比べて結構痛かった気がする(我慢できるレベルだけど)。

 

来週月曜に培養結果などを確認にいく予定。

 

(追記)

2個の卵は2つとも受精まではしたものの、1個は途中で分裂が止まり、2個は胚凍結できるまでには至らなかったため、失敗。

1回目で上手くいったのは奇跡だったのでは・・

 

顕微授精は行っているし、採卵で2個以上から料金が加算されるので上手くいかなかったのに料金はかかるという何とも複雑な心境。

これは妊娠に至るとはとても思えない・・・妊娠って本当に奇跡なんだなあと。

 

今回保険診療までチャレンジしようと思って再開した不妊治療だけど、夫は「まずは3回までかなあ」と言っているし、ふとした時に、やっぱり30代までが限界かもしれないと実感する私がいる。

 

白髪が増えた、体調が悪くなると回復が遅い、登山を始めて昔よりは体力がついたと思うけど、どうしようもなく歳を取ったなと感じる瞬間が最近多く・・・

40歳で産んだら、60歳で子供は20歳。それまで元気でいられる保証はない。

体力的に子育てできるのか、治療にかかるお金のことも勿論あるが、体力的な部分がものすごく不安になることが増えてきた。

 

気持ち的に諦めることができるのか、夫婦二人の人生を歩むという道を迷わずに進めるか・・考えることは多い。

今はその答えを見つけるために治療をしているのかもしれない。。

 

●2回目の費用(採卵~妊娠判定まで) 計:322,720円●・※助成金申請書類作成費用 5,000円含む

(採卵1回目~顕微授精まで)

クロミッド処方、検査など 3,190円

・診察など 3,320円

・採卵日決定のための検査 3,080円

・採卵(2個)とタイムラプス 54,070円

・顕微授精(2個)、IMSIなど 57,050円

(採卵2回目〜妊娠判定まで)

クロミッド処方、自己注射、検査など 13,410円

・採卵日決定の血液検査、薬など 3,520円

・採卵(5個)、顕微授精、タイムラプス、IMSI 85,430円

→今回注射したこともあり6個ほど採卵したものの、4個が成熟卵、1個が未成熟とのことで5個を顕微授精に。数が多かったせいで採卵の時間もいつもより長く、そして痛かった・・・。もう採卵したくないから受精して胚凍結できるところまで無事に行ってほしい・・・。

胚盤胞(2個)作成、胚凍結管理料など 46,650円

→5個中1個は未成熟、4個受精のうち1個は桑実胚、1個は不良胚盤胞、残り2個はBBとBAランクで胚凍結に至る

・生理中の診療 フェマーラ錠処方 2,250円

・移植日決定のための検査など 4,990円

・移植、膣錠処方 44,980円

・妊娠判定 780円

 

2回目、結果はやはり妊娠に至らず。

毎度ながら結果が出るまえに生理前の前兆を感じるので期待はしていなかったが…

子宮内膜着床能検査(ERA)を案内されたよ。

懸念通り、着床機能に問題があるかも疑惑が浮上してきた。

 

こちら助成金申請対象の先進医療とのことだが、自費137,500円!とのこと。

 

これってやる意味あるのかな?

やったところで妊娠できるかも分からないし、その分のお金を治療に回したいわよね…

 

しかし原因究明はしたいような気もする。

検査は痛いらしいとか…

 

次回生理日3日目で来院時までに検討してくださいとのこと、本日早速生理がきて検討の時間がかなり少ない。。

もやもやするわ。

上手くいかない理由が知りたくて

不妊治療を再開しました。

 

今月で最後の30代の1年がやってきます。

30代のうちにやりたかったこと、なんだろうなあ。

あっという間の30代だったなあと思いながら、あーしいていうならば「妊娠・出産」かもしれないなあとぼんやりと思っておりました。

 

結婚して先月で4年。

3年子なしは去れと昔言われていたように、3年経っても子供ができない私は昔だったらとっくに離縁されていたのかしらなんて思いながら、子連れの母親を街中でみた時や、友達に2人目ができて子育て中なんてことを聞くと、もやもやとした気持ちを抱いていたのでした。

 

そんな中、学生時代の友人から久々に連絡があり、2人目不妊でずっと不妊治療をしてきた成果が実り、2人目を妊娠したとの知らせ。

私は人工受精まででうまくいかずに一旦終わりにした人なのですが、ずっともやもやしているんだよね・・と愚痴をこぼすと、そういう気持ちがあるのであれば、この年齢のうちに次のステップに進んだ方がいいと思うとアドバイスをもらいましてね・・・

 

保険適用にもなったことだし、この年齢で保険が適用される6回まで試してみる、と決めて治療をしたという友達の詳しい話を聞いたことと、「結局不妊の原因は妊娠して初めて分かる」という話が一番の理由かもしれません。

 

私が一番もやもやしていたのは、検査の結果、夫婦ともに特に異常はないのになぜか妊娠することができないという「原因不明」の不妊だったこと。

決定的にこれがダメだったからできなかった、という明確な理由がないからこそ、諦めたいけど諦められない中途半端な状態が嫌だったんですよね。。

 

不妊治療を再開した原因は、「不妊の原因を探りたい」ということが一番の理由。ここにきてもやっぱり治療は上手くいかないんだろうなと半分諦めている自分がいます。

 

今回は友達から詳しく話を聞いて、友達の友達が通っていたという近くのクリニックに変えました。

 

前のところは日祝が休みだったこともあり、土曜日の混み具合が半端じゃなかったことや、待ち時間の長さや予約の取りにくさが本当に酷かったので(友人曰く土日祝やっていないところなんてありえない!らしいです)、仕事をしながら通うのが本当に大変だったのと、結果がでなかったということもあり、変えることにしました。

 

そのため、卵管造影とかはやらなくて済んだものの、再び血液検査や諸々の同じ検査を受けることになったので、無駄にお金がかかったりもして、病院選びは考えないといけないなあとしみじみ。

 

今のところは予約が取りやすい、待ち時間が比較的短い、先生が目を見て話をしてくれる(感じが良い)、朝早くからやっているので在宅勤務と併用して平日でも通いやすいという利点があります(唯一受付の対応が微妙なところが残念だけど)。

 

12月末から通い始め、1月に風疹ワクチンを打ったので3月以降に移植することになります。

先日初めての採卵を経験。

 

友達は「チクーン、チクーン」っていうちょっと痛いなという感じ、と言っていたのですが、形容しがたい「変な感じとちょっと痛・・い?」みたいな個人的にはそんな感じでした。

 

保険適用範囲で基本的に治療するため、痛い注射はなくてクロミッドを飲んで自然周期で採卵を行いました。

一応一個は成熟した卵子が取れ、今回は受精卵を凍結するとのこと。

上手くいっているかはまだ分かりませんが・・・

 

この数ヶ月の治療で分かったことは、もしかすると精子の状態があまりよくないことが原因かも?ということ。

奇形率が基準に達していないようで、体外受精ではなく顕微受精の方がいいと今回は顕微受精を行うことになりました。

 

もしかして原因は私ではない?!と少しでも可能性を示されただけで、正直大分ほっとしている自分がいます。

 

一週間後、再来院。

無事受精し、胚凍結したとのこと。

グレードはBBでまずまず良好。

 

来月の次回周期で第一回目の移植に進みます。

 

<治療費の備忘録>

12月末~現在(一回目の採卵~移植・妊娠判定まで) トータル:207,950円

・初回検査(血液検査等)夫婦2人で48,740円(自費)

・精液検査(夫)5,500円(自費)

・各種検査/クロミッド処方 6,940円

・採卵前の投薬、血液検査等 6,090円

・採卵、顕微授精および各種投薬費用(私)31,720円

・顕微受精に伴う先進医療費(タイムラプス・IMSI)(自費) 44,000円

・受精卵胚培養管理料、胚凍結保存管理料、検査など 34,650円

・移植前 排卵前検査、血液検査等 4,370円

・移植前 状態確認、血液検査→思いの外あまり状態が変わってないとのことで自己注射が追加に…

10,660円

・移植日決定のための血液検査、診察 2,880円

・移植予定日当日の血液検査:1,550円 →着床の可能性が低い状態の悪さだったらしく、次回周期に持ち越しになりました・・・

・生理開始後の検査 4,520円 →少量の出血があり生理かと思っていくも、どうも生理中の状態ではない?様子。念のため採血すると生理中の数値と言っても差し支えないとのことで、来週再度検査することに。。いつも生理は遅れることなく順調に来ている人なので、今回かなり遅れているうえに謎の出血・・・一体いつ移植できるのか。

・生理開始後の再検査 3,480円 →その後、月曜に通常の経血量の生理が無事にきた。今回はフェマーラを服用することに。自然周期でいくらしい。

・移植日決定のための検査 3,500円 →卵胞が順調に育っているが、前回のように当日に移植不可になるのを回避するため、膣錠を処方される。今週土曜日に移植予定。

・移植前血液検査+移植+薬処方 42,420円 →ようやく移植できた。移植自体は10分足らずで終わり、採卵よりも楽だったなあという印象。痛みとかは特になかった。

一週間後に妊娠判定。一回で上手くいくとは思わないが果たして・・・

・妊娠判定 血液検査 930円 →結果はやはり「陰性」。自分は妊娠すらできない女なんだなと・・あと数回で上手くいくとはとても思えないが、2回目のステップへ進む。

 

去年は突発性難聴で大分耳鼻科に通っていたので当然のごとく10万超えしたため、医療費控除の申請をしました。ほんのちょっとしか戻ってこないですが。。

 

保険適用とは言え高額なことに変わりはないため、回数をここまでと定めて治療するのは賢明な判断かもしれません。

 

改めて妊娠することの奇跡や治療を通して、子供を授かることの偉大さや生命の神秘を実感した私でした。

2023年読書リスト ※随時更新

2022年はトータル47冊。

 

毎年読む量が減っているのは、毎日仕事で帰りが遅くて読む時間が取れないことや、電車通勤ではなくなったことで読書時間がなかなか取れないことも影響しておりますね。。

 

2023年読書感想(備忘録)

 

■風が強く吹いている/三浦しをん

 

数年前に友達に貸したまま返ってきていなかった本。

ずっと再読したかったのにどこにいったかなと思っていたら、この本が返ってきてとても久々に読みました。

 

いやもう何度読んでも面白い・・・!

箱根駅伝には全く興味がない人だった私もこの本を読んで、箱根駅伝って実は結構面白いんじゃない?と思うくらいには興味を持つきっかけにもなりましたし。

何より初心者にも箱根駅伝に至るまでにこういうプロセスをたどっていくんだというのが魅力的なキャラクター達と共に展開していくのでわかりやすく読めますし。

 

初心者集団がそんな簡単に箱根駅伝に出られる訳ないでしょ!と思うなかれ、ぜひ読んでほしい一冊。

久々に実写映画も見てしまいました。小出恵介のハイジと林遣都のカケルがいいですよねえ。でも実写映画はかなり駆け足なので、各登場人物を丁寧に描くTVアニメ版もお薦めです。

(5点)

 

■マイクロスパイ・アンサンブル/伊坂幸太郎

福島は東北の中でも何度も訪れている大好きな場所の一つ。

そんな福島にある猪苗代湖を舞台にしたストーリー。

 

仙台が舞台ではないなんて伊坂さんにしては珍しいなあと思っていたら、猪苗代湖で開かれているロックフェスで配布されているもので連載していたものとのこと。

トモフスキーとかなんか懐かしいわー昔ラジオで聞いていたようなと思いながら、架空の世界と思っていた世界と現実が奇妙にリンクしていく伊坂さんならではの展開はコミカルでほっこりしました。

(3.5点)

 

■神様の暇つぶし/千早茜

直木賞を受賞した千早茜さん、今受賞作の「しろがねの葉」を読んでいますが、

何作か読んでいたのに未読本があるなと気づいて慌てて読んだ本でした。

 

父親ほども歳の離れた男との恋。

ということで全く感情移入はできなかったのですが・・・

 

大抵こういうパターンだと、延々と体の関係の描写が続き、飽き飽きする展開が多いのですが、千早さんですからそういうことはありません。

 

体の関係に至るまでのもどかしいほどにつかず離れずな展開、至った後の終わりが近付いているのがひしひしと伝わる展開・・・

 

主人公はこんな風に「生」を写真に残されて、男との思い出を忘れられないまま余生を過ごしていくのだろうか。。。

歳を重ねたといえどもまだまだ若いはずの主人公の達観した態度がなんだか苦しかったです。

好みではない話だったけれど、千早さんだからこそ残る余韻のある作品だったと思います。

(3.5点)

 

■しろがねの葉/千早茜

 

とうとう千早さんが直木賞を受賞しましたね。

候補作と決まった時点で予約をしておいたので、受賞後まもなくして読むことができてラッキーでした。

 

これは時代小説なのかしら。戦国の世の、武士とか姫とか華やかな舞台ではなく、一市民側の生活を描いている。

とあることがきっかけで親姉弟と離ればなれになり、孤独となった少女ウメ。

銀を求めて銀堀として働く男に拾われ、ウメ自身も銀堀として男ばかりのその世界に入っていく。

 

男のように働きたいと男社会に入ったとて、いつか訪れる体の変化、女だからこそ受ける理不尽な暴力、様々な男との違いが浮き彫りになるにつれ、銀堀の手伝いからも遠ざかっていく。

 

歳を重ね、子を持ち、産み育てながらもいつまでも心の中にある存在。

子供の親である夫を愛し、今の生活を慈しみながらもいつまでの残り続ける想い。

 

世界の広さや理不尽さを何も知らなかった無垢な時代を超え、理不尽を知り、男にはなれないと知り、夫を持ち、子を育て、女として生を全うしていくウメの逞しく強く、眩しいような輝きを色鮮やかに描く千早さんの意欲作でした。

 

千早さんはデビュー作からも分かるように、現代ものじゃない話もめちゃくちゃ上手いんですよね。

好きな作家の直木賞受賞作にはいつも納得できない私でも、この作品の受賞には納得でした。

(4.5点)

 

模倣犯1/宮部みゆき

 

当時読んだ時の衝撃。夢中になって読み、めちゃくちゃ面白かったという鮮烈な印象を残した作品。

 

長い事友達に貸していたことも忘れていたのですが、久々に返ってきたので再読。

 

長い長い物語の序章に過ぎない第一巻だけど、ある日突然事件に巻き込まれた孫を持つ祖父、家族を殺された過去を持ち、再び事件の第一発見者となった男の子、事件を追うルポライターの女性、犯人を追う刑事と様々な視点から進む物語はぐいぐい引き込んでいきます。

 

やっぱり面白い!次巻へ。

(4点)

 

模倣犯2/宮部みゆき

世間を震撼させた殺人事件の犯人と目される2人の男が死亡。

犯人で間違いないと話は進んでいく中で、果たしてこの2人は何者なのか、事件の謎を紐解いていく第2巻。

 

読者には真犯人が分かっている。

しかし事件の当事者、被害者遺族たちはそれを知らない。もどかしい思いでページをめくる。

幼馴染が犯人かもしれない―そう思い、何とかしたいと思いながらままならない和明の行動にやきもきさせられながら読み終える。

(4.5点)

 

模倣犯3/宮部みゆき

1巻では事件の被害者側からの視点で物語が始まりましたが、3巻では事件の加害者側からの視点=主に浩美と、事件に関わっているのではないかと幼馴染を止めようとする和明が主軸となっている。

 

あまりにも身勝手な理由で罪なき人々を手にかけた犯人。

しかし浩美の過去(特に家族関係)には同情できる部分もあり、何とも言えない気持ちになった。後半、浩美が命を落とす前に和明と接することでピースの本性であるとか、なぜこの道に逸れてしまったのか、和明がいかに自分を思ってくれていたのか・・など考え始めて・・・もしかしたら罪を認めるという未来があったかもしれない、ということを思うと複雑な心境になった。

そして一番悲しいのは、幼馴染を救えず、どころか犯人と目されてしまう和明だ。

 

うまいこと逃げおおせた主犯のピースはこのまま逃げおおせるのか。

(5点)

 

模倣犯(4)/宮部みゆき

一見関係ないように思えた、別の殺人事件の被害者である真一と加害者遺族のめぐみを登場させた意味。

ここでその意味が分かり、じわじわと沁みてくる。

 

無実だと読者は分かっている、加害者とされる和明の妹の由美子の顛末があまりにも悲しい。

いくら無実だと主張しても、「加害者」遺族の意向など誰も信じない。

読者は無実を知っているからこそ、由美子の空回りがあまりに切ない。

めぐみが真一に対してとっている行動があまりにも身勝手だと感じたように、他の人からみたら、由美子はめぐみと同類にしか見えないという現実が辛い。

 

そして満を持して本名で登場するピースのしたたかさよ!

真犯人はそこにいますよ!!と思いながら、まだ誰もピースの裏の顔に気づかない。

誰もを一瞬で「信頼できる人物」と思わせるその物腰や外見・・・恐ろしい。

(5点)

 

模倣犯5/宮部みゆき

メディアに嬉々として登場し始めたピース。

一躍人気者になるが、その化けの皮がはがされるときは来るのか。

 

ピースの操り人形のように成り下がってしまった由美子のなれの果ての姿があまりにも辛い。

絶対に捕まるはずがないと余裕のピース。

しかし警察は少しずつ真相に近づいていて・・・

ラスト、すっかり悪役にされたルポライターの滋子の反撃が痛快!

 

再読してもなお、面白いものは間違いなく面白い。

余韻にしばらく茫然としてしまうほどだった。

 

当時、携帯が主流ではなかった時代を舞台にしているものの、古さを感じない。

宮部さんの凄さに脱帽。

 

滋子を主人公にした「楽園」をすぐ図書館に借りに行って今読んでいる人。

(5点)

 

■ショートケーキ/坂木司

 

さくっと読める一冊。

 

ショートケーキをテーマにした連作短編集。

前の話に出てきた人が次の話に絡んでいたりする自分好みの展開と、坂木さんの本ってなんて美味しそうに食べ物を描くのかしら・・・

 

高級パティスリーのケーキとか手が出にくいものではなくて、手軽に買えるコージーコーナーのケーキが登場するので、思わずコージーコーナーまで走りたくなるほどだった。

(4点)

 

■楽園(上)/宮部みゆき

 

模倣犯の余韻が冷めやらぬ前に図書館で借りてきた。

以前読んでいる気がするけど全然思い出せない。

 

ルポライターとして登場した滋子の事件後9年経った今を描いている。

 

あの事件から立ち直れずにいる滋子は、少しずつライターとしての仕事を再開。

そこで持ち込まれた不可思議な「依頼」を受ける事に。

 

亡くなった息子が知りようがないはずの事件の絵を描いていたという奇妙な話で、サイコメトリーという言葉が出てきたり、一見すると突拍子もない話なのに、真相を追う滋子はそれを信じざるをえないことに気づいていく。

 

9年前の事件のその後にも触れられていたり、模倣犯で登場した人物のその後が出てきたりするのはファンとして嬉しい。

 

新たな事件を追う滋子が、少しずつ以前のような好奇心や猪突猛進さを取り戻していくのも勇気が出る。

続きが気になる下巻へ。

(4.5点)

 

■楽園(下)/宮部みゆき

 

等の能力が本物だと確信した滋子。等は一体どこで真実を知ったのか。

真実を追い求めていく滋子。同時進行で小学生の女の子の話が挟まれていたけれど、その話と繋がっていく。

明かされていく土井崎家の秘密、どこで間違ったのか、何が悪かったのか、やりきれない思いが沸き起こる中で、等の母である敏子が思いのほか芯が強く、息子を失ってなお前向きに生きていこうとするその様に勇気づけられる。

 

子供を持った経験がない私だが、土井埼夫妻ともし同じ立場になったとしたら―ということを考えて子供を持つことの怖さも感じてしまった。

 

■あの子とQ/万城目学

 

近年のマキメさんの作品はどうも難しい。

初期作品のように突拍子もない展開でもはまってしまうあのワクワク感がなくて、少し遠ざかっていたこともあり、この作品も未読。

手に取ってみると、吸血鬼一家の話だった!

 

ポップなイラストと吸血鬼の女子高生が主人公。前半はなかなか入りこめなかったけれど、ゆるーいトーンの中に急にシリアス展開が入ってくると、ようやく面白さを感じ、読むことができた。

 

友人のヨッちゃんのマイペースさのおかしみ、ふとすればシリアル展開にもなりえるシーンでもヨッちゃんの存在が癒しだった。

続編もいけそうな終わり方、続くかな?

(3.5点)

 

■invert II 覗き窓の死角/相沢沙呼

 

ドラマ化された城塚翡翠シリーズの第三弾。

 

3作目ともなると、翡翠の表の顔と裏の顔もよく分かってきて、今作が一番面白く読めたかも。

 

2編収録されており、1編目はドラマで放送した内容なのでおさらいのように読む。

すっかり脳内ではドラマ版キャストで物語が展開していたなあ。

 

もう1編は中編で手ごわい容疑者との対決。

友人になれそうな存在だった人を犯人として事件を暴くことになった翡翠

トリックの謎解きに苦戦し、複雑な心境の中で真実を見抜いていく。

 

ちょいちょい翡翠の会話の中で、嘘か本当か分からない身の上話が出てくるが、本作では更に翡翠の過去に突っ込んでいると思われるエピソードが盛り込まれており、最終的に翡翠の過去篇みたいのを書いてくれるのかしらと期待が高まるところ。

 

それにしても相沢さんの女子目線がリアルでエグイ。

朝井リョウさんもしかりだけど、こんなに女性同士の辛辣な感じをかける人ってなかなかいないよねえ。。

 

ドラマは原作に忠実で割と楽しんでみていたけど、あまり評判になっていなかった気がするので続編はないのかなあ。

原作はまだ続きそうなので楽しみ。

(4.5点)

 

■夜に星を放つ/窪見澄

 

直木賞受賞作。

初期の頃から追っている好きな作家の場合、沢山の好きな作品やおすすめしたい作品があるのに、なぜこれが直木賞・・・と思うことがほとんど(自分の場合)。

そんな中で、ああこの作品が受賞作で良かったなあと心から思える作品だと嬉しい。

 

窪さんの心がひりひりするような、独特の余韻を残す作品が多い中で、この短編集はひりひり感を残しながらも、心がほどけていくような優しい読後感もあり、とても好み。

 

様々な立場や年齢、性別も違う主人公たちなのにどこか不思議と感情移入できる部分があって好きだ。

(4.5点)

 

■いけないII/道尾秀介

 

いけないの続編!

こんなに事件が発生する街なんて嫌だ―と思いつつ、(日本一殺人事件が多い米花町に比べたら可愛いものだが・・)前回よりも少しだけ読者に優しい展開になっているII。

 

短編として読むことも勿論可能だが、実は全ての短編がラストに繋がっているというのも良いし、1章ごとに写真が添えられており、物語のヒントになっている構図は前作と一緒。

前作はそれでも全然分からなくてネタバレサイトに行ってしまったが、今回は次の章で曖昧に終わっていた前の章のその後が文章で記されているのでやっぱりそうだったのか!とかそっちにいってしまったのか・・・!と思ったりしてミステリ展開としても面白い。

 

道尾さんが描く女子も好きだけど、小学生男子を書かせたら右に出るものはいないよねえ・・子供目線の幼さと、子供だからこそ気づかない大人のずるさや、物の捉え方の違い・・それが絶妙。

個人的にはIIのが面白かった!

ぜひともIIIも期待したい。

道尾作品を読む前のワクワク感よ。

(4.5点)

 

■Nのために/湊かなえ

やっぱり私、湊さん苦手だわ・・・と改めて再確認した。

 

ドラマ「最愛」が好きな人は「Nのために」もオススメというのを見て、ずっと前から気になっていたドラマ。

先日Tverで期間限定配信をしていたので、全話見たのだが・・・

ドンピシャで好み!!

 

重い過去を背負う主人公、淡い恋愛、そして殺人事件発生、犯人は一体・・・完全に好みの展開だった。

演技派の俳優陣が出演しているのも良かったし(榮倉奈々は演技が上手いとは思わないが、この役はとても合っていたと思う。そして小出恵介が凄くいい味を出していてや勿体ないわーとしみじみ。地上波ドラマにはもう出られないのかなあ)、真相は一体?!と毎回次回が気になる展開でとても面白かった。

 

原作には三浦さんの役回りは登場しないけど、違和感なく取り入れていてストーリー展開も飽きさせず、原作はどんなもんだろう?と気になって図書館で借りて読んでみた次第。

 

概ね原作をベースにしているのだけど、なんというか湊さんの文章があまり好きじゃないみたい。何作か読んでいたけど、どうしても「告白」を超えるものを期待してしまい、超えるものは未だにないと思ってしまうのが敬遠する原因かもしれない。。

 

ストーリーとしては、事件発生→現場にいた人物たちの証言→現場にいた人物たち目線の過去の話からの10年後→事件当日の話→真相という感じなのだが、小説から読んでいたら果たしてドラマも見ていたか?と言われると微妙なところ。

読み終えてからの印象がとても薄いので、正直あまり覚えていないのである。。

ドラマの映像、キャスティングで脳内再生しながら読んでいるからストーリーは頭にはいってくるのだけども、、

 

ドラマは最高に面白いので、気になる人はぜひ映像で見てみてほしい。

(3.5点)

 

■ことば 僕自身の訓練のためのノート/山口一郎

 

サカナクションのボーカル、一郎さんの初の著書。

といっても、デビュー前別のバンドを組んでいた一郎さんが魔法のiランド(懐かしい!これを知っている人は年代わかっちゃいますよねえ)に投稿していた詩(言葉)たちをお父様がまとめたもので、一郎さんは関与していないとか。

 

一郎さんファンであり本好きの自分としては一度は読んでみたいと思っていたのだが、絶対図書館には入らないやつ!と思っていたので、購入を悩んでいたもの。

本にしては結構高くて、しかも特に一郎さんの写真とかがあるわけでもなく、詩なのでページの余白もとても多い本。薄すぎないけど、決して分厚くはない本にしては結構躊躇うお値段。

ファンの人しか買わないんじゃないか・・・と思ったら、読んでみてもったいないなあと思ってしまった。

というのも、詩集として読むとかなりのクオリティだったこと。上質な紙の匂いも含めて、一郎さんの世界観を垣間見た気がしてなんだか嬉しかったこと。

実際にサカナの曲として発表されている原型の言葉たちが散りばめられていたこと(GO TO THE FUTUREは完全にそのまま!)。

そういった意味で購入して、読めて良かったなあと思えたから。

 

しかも発売から一週間後、はるばる代官山蔦屋まで行ったら、サイン本が買えたのでこの値段だったとしても全然いい!

発売翌日にサイン本が入荷しているという書店をいくつか回ったのに既に売り切れていたので半ばあきらめていたのでとても嬉しかった。

 

雨の音を聞きながら一人部屋の中でゆっくり読んだり、月明かりを浴びながら静かに読む、そんな情景が浮かぶ言葉たちだった。

(4点)

 

■駅の名は夜明 軌道春秋II/高田郁

高田さんの現代もの。

高田さんならではの感動ストーリーではあるが、「子どもの世界」では大人のどうしようもないような事情で離婚した両親を持つ男の子の子どもだけの一人旅が切なく、ラストでうるっときてしまった。

 

ただ、個人的には高田さんは時代小説の方が好きだったりする。

(4点)

 

■スモールワールズ/一穂ミチ

 

2022年の本屋大賞候補作だったらしいが、チェックしていなかった初読みの作家さん。

 

文章に癖はないか、読むやすいか、そもそも面白いのか?と初読みの作家作品に手を出すときはドキドキするのだが・・・

完全に好みだった。全て良かった!

 

一遍一遍に小さな繋がりのある短編集となると、この話は好きだけどこっちは微妙だな・・ということがほとんどなんだけど、同じ作家が書いたとは思えないそれぞれに違う読後感の残る話が描かれていて斬新だった。

 

後味の悪い話、ほっこりする話、優しい気持ちになる話、人間の「黒い」部分のある話と感動話と、ドンピシャで好みだった。

こんな作家さんがいたとは・・・!ぜひ他の作品も読んでみたい。

(5点)

 

■掬えば手には/瀬尾まいこ

少し久々の瀬尾さん。悪人が出てこないので瀬尾さんの本は安心して読める。

 

人の感情を読める能力?のある主人公。

口が悪くてすぐにバイトが辞めてしまうオムライス屋でバイトをしており、新しく入ったバイトの女の子と打ち解けようとするが、どうにもその子の感情を読むことができない。

何かを抱えているらしい女の子、いつしか聞こえてくる謎の「声」。

女の子の抱えていたものとは?

 

劇的な何かがあるわけではないけど、ほっこりとした温かい気持ちになれる話。

図書館で借りたのにアフターストーリーまで付属でついていてちょっとお得な気分。

店長視点のその後の話が読めるのでぜひ。

(4点)

 

■Another side of 辻村深月

辻村深月さんのファンブック的な豪華な一冊。

書店で見かけて買おうかちょっと迷ったのは、初期の頃に装丁を手掛けていたイラストが表紙だったこと、朝井リョウさん、道尾秀介さん、羽海野チカさん、宮部みゆきさん、伊坂幸太郎さん、大山のぶ代さんなど豪華な作家・漫画家・映画監督等々(中村義洋監督など)との豪華対談、コメント、書評などを収録。

 

また、ファンには嬉しい全作品の解説、最新作のスピンオフ小説も収録。

 

個人的にはスピンオフ小説が最新刊のもので未発売の作品なので、読んだ後に読みたかったなあという気持ちはあるものの、「第一期」が好きな私としては、作品解説の中で「ぼくのメジャースプーン」の続編を今連載していること、発売予定があるということが記載されており、非常に嬉しい限り!

 

対談や様々な人からのコメントを読むと、辻村さんのお人柄と愛されているなあという感じがとても伝わってきて嬉しくなる。

サイン会にも何度か参加しているが、1人1人の読者の目を見て丁寧に語りかけてくれるのが印象的だった。

 

辻村さん必読の一冊!

(4.5点)

 

■烏の緑羽/阿部智里

八咫烏シリーズ最新刊。

衝撃の前作の後の話かと思いきや、長束の側近たちの話が描かれる。

 

変人と思えるくらいあっさりと人を斬れる路近の人格形成が読み解ける路近の過去の話や、名前がどんどん変わっていく羽緑の話からぐいぐい引き込まれてこの人物を好ましく思い始めた頃・・・雪哉とやりあって感じが悪いと思っていたあの人物だったと気づいてびっくりする。

視点が変わるだけでこんなにも感情が変わることに驚き。

 

ラストは金烏亡きあとの現在の混乱に戻る。

長束派VS雪哉派の対立みたいな話になっていくのだろうか、不穏な雰囲気が更に続きが気になる気持ちを増長させていきますな。

 

八咫烏シリーズは世界観にどっぷりと漬かりすぎて読んだ後しばらく現実に戻ってこられなくなる感じになる。

ファンブック?みたいのも出たようでぜひ読みたいなあ。

(4.5点)

 

■ブレイクニュース/薬丸岳

 

久々の薬丸さん、チェックしていない間に読んでいない本があったので図書館で借りる。

YouTubeは音楽を聴く以外ではほとんど見ない人なので、将来の子どもの夢でユーチューバーとか入っているのを引いてみてしまうようなタイプの人である。

 

「ブレイクニュース」を発信する女性。

TVや週刊誌、新聞では扱えないような事件を扱い、発信する。

 

一度ネットに出てしまった情報は一気に拡散され、削除をすることは容易ではない。

簡単に情報を発信できる今の世の中は果たして便利なのか、昔にはなかったネットの中傷。今の時代に生きる、特に若い世代の人には生きずらい世の中なのではなかろうか・・・

 

圧力でもみ消されるようなニュースをも発信することができる媒体。

ネットの良さと悪さを色々と考えさせられる話だった。

(3.5点)

 

■おまえなんかに会いたくない/乾ルカ

 

スクールカーストをここまで明確に描いた作品があったであろうか。

読んでいて辛くてたまらなくなるほど、登場人物たちの心情が分かり、同時に分からないと感じた。

 

高校時代、カースト最底辺だった私は、クラスメイトに存在を認識されていなかったことや、卒業後に同窓会の声がかからなかったことを別の友人から聞いて知る、という経験をしたことがある。

 

カーストによって全く立場や力関係が異なり、住む世界すらも違う。

高校のクラスという狭い世界のカーストに、大人になっても囚われる人たちの話でもある。

 

本作はタイムカプセルに入れた手紙により、いじめられた側の復讐劇でもあり、最終的にいじめた側の心情の変化によって何とも言えない着地点を迎えて終了する。

後味は悪くはないが、よくもない。このどっちつかず感が乾さんらしさもあるかも。

 

螺旋プロジェクトの話もちらっと出てくるのも注目。

(3.5点)

 

■笑うマトリョーシカ/早見和真

 

先日読んだ「ザ・ロイヤルファミリー」といい、本作と言いあらすじやタイトルでちょっと損をしているような気がする作品。

というのも、今回は政治家と秘書の話なのかなと思うので最初難しそうだなと構えてしまったのだ。

 

しかしただの政治家と秘書の話ではなく、この政治家の清家という男が何者かによって操られ、作られた政治家なのではないか?という確信に迫っていく話なのである。

 

最初は学生時代の友人である秘書の鈴木がそうなのか?と思うのだが、元彼女、母親目線の話が入っていき、結局誰が・・・?というところでラスト清家の話になり―

ただ結局は誰が清家を操っていたのか、という明言はなく、とにかく清家の得体の知れなさ、開けば開くほど別の顔がどんどん出てくるマトリョーシカのように、中身は空洞の作られた人形のような不気味さが迫ってくる。

 

タイトルに文句を言ってすみません。読後、これ以上ないほど秀逸なタイトルだったなと実感。

(4点)

 

■烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2 /阿部智里

 

外伝は出ているのを知らずに慌てて図書館で予約して読んであまり日が経っていなかったので、意外とまだ内容を覚えていた。

はるのとこやみ、はラストでぞっとするし、その後のあせびの生き様などを知っているだけにルーツはここにあったのかと思うと空恐ろしい気持ちになる。

きんかんをにる、はまだ若宮が健在であったころ、雪哉とも関係が良好な姫宮との交流が優しく描かれる。

その後の第二部を知っている読者には何とも切ない気持ちにさせる傑作。

 

これで次は第二部の文庫化か。

完結したらまた1から通しで読みたい本当にどはまりしたシリーズである。

(4点)

 

■手紙/東野圭吾

 

貸していたのも忘れていたくらいのこの本が友人から帰ってきたので再読。

淡々と進んでいくから思わず気を抜きそうになるが、犯罪者の身内という呪縛から逃れられない過酷な運命が次次と襲ってくる展開は息苦しい。

 

外の様子を知る由もない兄、兄のせいで様々なものを犠牲に生きていかなければいけなくなった弟。

手紙という唯一の交流手段が、弟の人生に影を落とす。

 

今の時代だったら、簡単に個人が特定されてしまうネット社会。

もっと生きにくい時代になっているのだろう。携帯が登場しないこの当時でもこんなに苦しいのに、今だったら?と考えるとぞっとする。

 

決して幸せな結末ではないかもしれないけど、一筋希望のようなものが見えた気がするラストだった。

(4点)

 

■優しい音楽/瀬尾まいこ

 

友達に貸していたのも忘れた頃に返してもらったので、再読。

多分当時新刊で購入した文庫だと思うけど、時を経て再読すると購入するまでではないかなあという印象になっている、すさんだ心の現在に切ない気持ちに。

 

瀬尾さんの小説には悪人がでてこない。

突拍子もない設定が優しい結末に繋がっていく。心が洗われるけど、こんなうまくいくはずないじゃんと思う自分もいる。

でも心が洗われるのは確か。優しい気持ちになれるのはいい。

(4点)

 

■「八咫烏」シリーズファンBOOK

阿部智里さんの八咫烏シリーズのファンブック。

図書館で借りることができたので読む。

 

八咫烏シリーズというより、阿部さんファンの方が読むと嬉しい作りになっているかも。

インタビューが沢山掲載されているので、小説家を目指そうと思ったきっかけがはいはい、この下りはもう読みましたよ・・・というくらい何度も出てくるのには辟易したが、阿部さん自身による登場人物たちの紹介やシリーズの世界観に迫るQ&Aなど、本編にはまだ登場していない設定なども知ることができて面白かった。

 

幕間で1編は既に読んだものだったけど、人間からみた八咫烏の世界はこういうふうに見えているんだと新鮮さとおどろおどろしい雰囲気もいい。

 

シリーズにはまり、文庫を全部揃えてしまった人。

第二部は始まったばかり。書く予定のないエピソードも含めて阿部さんの壮大な頭の中の世界観を覗ることができる贅沢な一冊。

(4点)

 

■祝祭のハングマン/中山七里■

 

最近の中山さんの作品は設定が難しかったり、分厚いのが多かったりしたのだけど、本作は丁度良い長さで読みやすかった。

警察官の主人公が父親を殺した犯人に報復を決意する話、といったら結末に触れてしまうが、続編はなくこのまま完結してほしい気持ちになった。

最終的に犯行が発覚して刑事人生が終わらない。このままあちらの世界に足を踏み入れたまま刑事を続けるのか・・・

犬養の名前や麻生も登場する作品間のリンクは嬉しい。

(3.5点)

 

■最後の祈り/薬丸岳

 

久々の薬丸さん。

前半、刑務所で教誨師をしている保阪の過去の罪、現在の穏やかな生活などは冗長に感じられたが、保阪の娘が殺害され、殺人犯の石原の逮捕、裁判、死刑判決-の後の展開からどんどん続きが気になっていく。

全く罪の意識がなく、死刑でいいというこの石原にできる究極の復讐とは・・・

 

教誨師であるからこそ、死刑囚との接見が認められる。

死刑執行の際に最後に石原に絶望を与えることができるかもしれない―

 

しかし石原との教誨の時間の中で、死刑を望んでいたはずの石原が保阪に心を開いていく。

極悪な殺人者としか思えなかった前半の印象から、どんどん変わっていく石原の姿を見せつけられ、保阪の煩悶が苦しいほどに伝わってくる。

 

娘を殺した男を赦すことができるのか。

最後に石原にかけた保阪の心は・・・

ラスト、悲しいとも切ないともいえない気持ちがせりあがってきて、やはり薬丸さん、相変わらず読ませてくれる。

 

教誨師という存在は小説を読んでいてたまに出てくるのでそれで初めて知ったのだけど、死刑執行に立ち会う立場の職員の目線も入れてくるので、死刑制度について色々考えさせられてしまう。

(4点)

 

■これは経費で落ちません!10~経理部の森若さん~/青木祐子

 

安定の面白さ。

「結婚しよう」「了解です」の太陽と沙名子のメールのやりとりにニヤニヤが止まらない。

寝落ち寸前のあのプロポーズは何だったのか。

大陽も沙名子もそのことに触れられないまま税務調査に追われる経理部。

 

相変わらず不穏な動きを見せる鎌本。合併前の問題の指摘など次から次へと問題がやってくるが、天々コーポレーションの経理部は優秀。

着実にタスクをこなしていく。

 

太陽の結婚の噂、相手は誰なのかと社内でまことしやかにささやかれ始める中、結婚準備に向けてエクセルにタスク表を作ってまとめてしまう沙名子がかわいい。

 

相変わらず面白いので一気読み。

(5点)

 

■死亡推定時刻/朔立木

 

新聞で売れている本か何かで紹介されていたのを見て気になり、図書館で予約していたもの。

分厚めの文庫、第一部と第二部の構成なのだが、第一部は登場人物の誰も好きになれず・・あこれは読むのきついかも・・・と思いつつ、何とか読了。

しかし第二部になった途端、前半の読むのに苦戦していたのが嘘のようにすらすら読め、しかも面白くなるので諦めないで読んでほしい。

 

田舎のあこぎな商売をして荒稼ぎしているとある金持ちの家の一人娘が誘拐、殺害された。

身代金の受け渡しを失敗したことが原因と思う遺族、私的な理由で死亡推定時刻を偽る警察、警察の執拗で巧妙な取り調べにより冤罪が生まれ、犯人に仕立て上げられた男も諦めて反論しないまま死刑確定・・・

被害者以外の全ての人間に対し、不快感しかない第一部とは反対に、冤罪を晴らそうと事件の真相を地道に追い、被告に向き合う弁護士がかなり好感が持ててすいすい読めた。

 

綺麗に冤罪が晴れて無罪放免、とはならない結末が日本の司法・警察の闇を見た気がして考えさせられる。

(4点)

 

■正欲(文庫版)/朝井リョウ

単行本でかなりの衝撃を受け、文庫が出たら買おうと決めたいた本作。

 

特殊性癖を持って生まれてきた人間は、「普通」のステージには決して立てない。

昨今のやけに多様性を重んじる風潮にもずばり切り込んでいて、ダークな朝井さんが魅せてくれる。

 

奇跡的に同じ性癖を持った人間と出会い、小さいながらも同じ仲間とのコミュニティを作っていこうと外に向かっていこうとした矢先の冒頭の事件・・・

あのときこうだったら、もしこうなっていれば・・・が次々と浮かんでは消えていき、最初から読み直したくなるような物語だ。

 

本書に出てくる「水」が対象になる性癖を持つ人って本当にいるのだろうか?

と思うのは、やはり自分は普通側の人間だからなんだろうな。

 

YouTubeに寄せられるなにげないコメントが、別の視点で見ると様々な性癖の人の「おかず」になっているのかもしれないと思うと恐ろしい。

 

秋の映画公開も近いので楽しみである。

(5点)

 

■同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬

 

本屋大賞ノミネート作品として大絶賛されていた本作。

結構期待して読んだのですが、ロシアが舞台ということもあり致命的に人物たちの名前を覚えられないという難点が・・・

結局最後までほとんど覚えられないまま読み終えてしまったのが残念。

 

最近よく見ている映像の世紀バタフライエフェクトで泥沼の独ソ戦の回があり、ドイツとソ連にそんな戦いがあったことを始めて知り、興味深く本作を読んだ。

女性でありながら、狙撃手として戦場に立つソ連

村を理不尽に襲われ、生きるか死ぬかの瀬戸際に立った少女セラフィマは、狙撃手として生きる道を選ぶ。

女性だからというだけで起こる性の搾取。戦争という非日常で起こる様々な悲劇がリアルに描かれる。

 

戦争によって理不尽な立場に置かれた主人公が、戦場で戦うことによってドイツ人を殺すことを厭わなくなっていく様は悲しい。

(4点)

 

■グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 東京バンドワゴン/小路幸也

最近チェックしていないまに、「東京バンドワゴン」シリーズの未読作品があることに気づき、慌てて読んだ。

 

今回は日本を飛び出し、藍子とマードックのいるイギリスが舞台。

 

マードックさんの失踪、絵画盗難など不穏な事件が起こる中、イギリスへと旅立った我那人や健人たちが丸っと解決へ導いてくれる。

 

さちさんの姿が見え、言葉も交わせる子も登場したり、今後が楽しみな展開。

安定の面白さ。

(4点)

 

■ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴン/小路幸也

 

今度はまた日本に戻って堀田家の身近で起こる小さな事件やら問題を解決していくいつものパターン。

でも、登場人物たちはちゃんと歳を重ねていって、成長を見ることができるのって嬉しい。

 

大勢の食卓で飛びかう会話も、これがなければこのシリーズは始まらないって思う。

池澤さんの決断はいつかそうなるかもと思っていて寂しさもある。

(4点)

 

■楽園の烏(文庫版)/阿部智里

 

八咫烏シリーズ第二部。

初めて読んだ時は、突然現代が舞台になり、人間がメインの話に面食らったのと、雪哉が別人のようになっていることについていけなかったのだが、第一部を読み直し、第二部の最新刊まで読んだあとに読んでみると、ここでこう繋がっていたのか!と思うことが多くて再読して更に楽しめました。

 

最新作が待ち遠しい大好きなシリーズです。

(4点)

 

■駅物語/朱野帰子

 

「私定時で帰ります」シリーズの朱野さん。

ちょっと毒が入った語り口が好みなので、図書館で借りてみた。

鉄道員の中でも、「駅員」になりたい人って果たしてどの程度いるのだろう・・

客からの理不尽な要求、クレーム、果ては暴力、人身事故の後処理など、駅員の対応は大変な割に報われないようなイメージがあるのだけど、やはり想像通りのリアルな世界が描かれている。

 

駅で助けてもらった人に再会したいという思いで駅員としてデビューした主人公。

普通のサラリーマンが酒に酔うとどうしようもないクレーマー乗客に変貌していたり、出会った時とは全然違う面を見ることになったり。

それでもキラキラした世界を書いていないリアルがそこにある、という感じでなかなか興味深かった。

でもやっぱり駅員にはなりたいと思わないな・・ひたすら大変そうという印象は覆らなかった。

(4点)

 

■新!店長がバカすぎて/早見和真

 

早見さんの本はほぼ外れがないのだけど、唯一合わないのがこのシリーズ(?)。

第二弾。

書店員などには評判が高いのは書店で働く人の大変さ、楽しさなどが書かれているからだろうか。

早見さんの作品は深みがあってどちらかというとじっくり落ち着いて読みたいものが多くて非常に好みなんだが、とにかくこの店長の訳の分からなさ、それに対しひたすら憤っている主人公の図を読み続けるのが精神的にしんどいのだ、、

 

続編もありそうな感じだけど、3作目はもういいかな・・

 

好みの問題だと思うけど、私には合わなかった。今回も。

(3点)

 

■罪の境界/薬丸岳

 

薬丸さんの作品は、犯罪を起こした側、被害に遭った側、当事者、関係者に至るまで片一方に偏りのない丁寧な描き方をしているところが好きだ。

 

彼氏との結婚願望をもつ妙齢の女性。とりたてて大きな不満もなく、平和な日常を過ごしていた中、突如として通り魔の被害に遭い生死の境を彷徨うことになった。

自分との約束を守れなかったため、彼女が通り魔の被害者になってしまったという後悔の念に襲われる彼氏。

ひょんなことから、犯人に興味を持ち、事件を起こすに至った経緯、生い立ちをたどりながらルポの執筆に乗り出したライター。

 

3者の目線から物語が展開していく。

 

幼少時の親からの虐待、その連鎖。

犯罪に走っても一線を越えなかった人と超えてしまった人。

どんなに辛い境遇でも前を向くことをあきらめなかった人の最後と、諦めて境界を越えてしまった犯人との対比がこれでもかとつきつけられた。

 

被害に遭った側としても、そんな簡単に前を向くことはできないよな、と読んでいて仕方ないと思う部分はあったものの、新しい命を授かり、犯人の生い立ちを知り、自分を助けることで亡くなった人の過去を辿るうちに少しずつ前に進んでいく強さが心地良かった。

 

犯人は死刑以上に生きながら一生後悔を背負い続けるのだろう。

(4点)

 

後宮の烏/白川紺子

 

本をよく読むという親戚の方に「八咫烏シリーズ」を勧めたところ見事にはまってくれ嬉しいなと思っていたところ、烏繋がりでこちらのシリーズをオススメしていただき読んでみることに。

アニメもやっていて実はちょっと気になっていたのでこの機会に読む。

 

中国の皇帝、宮殿が舞台になっている設定?で中国系の名前なのでフリガナがないと登場人物の名前をなかなか覚えられないという難点はあるものの、妃でありながら帝からの御渡りは決してないという特別な「烏妃」。

その正体は16、17歳くらいの少女。

不思議な力を持ち、今日も烏妃の元に助けや願いを求めてやってくる人がいる。

 

最初なかなか世界観に入りこめなかったものの、読みやすいので後半にいくにつれてどんどん面白くなってきた。

言葉と態度とは裏腹に優しい心を持った烏妃と烏妃に関わり知ろうとする皇帝とのやりとりが今後も気になるところ。

(3.5点)

 

後宮の烏2/白川紺子

 

シリーズ2作目。大分世界観が分かってきたので読みやすくさくさく読めた。

 

魔術的なものが出てくるので、死体や幽鬼の描写はちょっとぐろかったりするけれど、孤独な存在だった烏妃の周りに少しずつ信頼のおける人物たちが集まっていく。

 

先代からの言いつけに背く行為と分かっていても、一度居心地の良さを経験してしまうと前のように戻ることはできない。

烏妃であることの苦悶、今の状態をダメだと思いつつも人間らしく葛藤する姿は悪くないと思う。

 

不穏な展開も出てきて気になる。3巻も借りなければ。

(4点)

 

■ペニー・レイン 東京バンドワゴン/小路幸也

 

安定の東京バンドワゴンシリーズ。

あんなに小さかったかんなとすずかも小学3年生!

きちんと歳を重ねていく堀田家を見守っていけるのが良いよねえ。

 

大きな事件はないけれど、下町の温かさや人々との交流が本当に優しい気持ちになるのよねえ。

(4点)

 

後宮の烏3/白川紺子

後宮に住まう妃たち、信頼できる者なのか、それとも。

晩霞の目論見はいかに?

寿雪の秘密を知ってしまった晩霞がどう動くのか気になるところ。

(4点)

 

■赤い月の香り/千早茜

「透明な夜の香り」の続編。

それと知らずに借りたのだけれど、朔という名前が出てきてピンときた。

でも、一香とのこの淡い関係って、前作でどういう展開だったんだっけと忘れてしまっているので、一度再読してから読んだ方がもっと楽しめたかも。

 

淡々と展開していく物語の中で、特別な香りを求める依頼者達の抱える事情は濃くて、しんとした静けさの中に強い香りをはっと感じるような独特の雰囲気があって好きだ。

(4点)

 

後宮の烏4/白川紺子

噂とは違い、心優しく人を受け入れる烏妃に助けられたものが増えるにつれ、信頼のおける人物たちだけではなく、寿雪の預かりしらぬところで烏妃シンパが増えていく。

 

いつしか宗教めいた神のような存在として崇められていくことで、それを利用し扇動するものが現れ始める。

 

そんな中、大切な者たちを遠ざけるのではなく守るという決断をした寿雪。寿雪の苦しみを救い出そうとする高俊。烏妃の謎にも迫っていく展開で続きが気になる。

(4点)

 

後宮の烏5/白川紺子

ついに烏妃を自由にするため、結界を破ることに。

心を一瞬通わせた高俊と寿雪。後半の怒涛の展開にページをめくる手が止まらなくなった。

(4点)

 

後宮の烏6/白川紺子

寿雪の魂を戻すには、肉親の存在が必要―

ついに血の繋がりがある可能性を知っている衛青が動く。

 

前半は後宮から出ることができないという烏妃の存在からか、後宮の中で起こる出来事が中心だったが、中盤から外の世界の話も入ってきて一気に世界が広がり俄然面白くなってきた。

と思ったら7巻で最終巻とは!佐那目一族の動向も気になるし、もっと続きが読みたい。

(4点)

 

後宮の烏7/白川紺子

 

ついに最終巻。え!これで終わってしまうの・・という寂しい気持ち。

というのも、佐那目家の話が中心で、寿雪と高俊の話があまりないまま終わってしまったから。

ただ、多く語られないだけに最後の二人のその後の話が色々想像できるので微笑ましい気持ちにもなり。

番外編とかで語られなかった部分も読みたいところだけど、ないのよね。

(4点)

 

■夜空に浮かぶ欠けた月たち/窪美澄

 

仕事や恋愛、学校、子育て、日々の生活の中で突然心のバランスが取れなくなることがある。

そんな心の病気になってしまった人々が、とある心療内科に通うことで、少しずつ心のバランスを取り戻していく物語。

 

主人公たちの共通項はこの診療内科と美味しいコーヒーを飲むことができる喫茶店

 

どん底まで落ちても、ゆっくりと上向きになっていく話達に、疲れた心を癒してくれるような優しい気持ちになれる短編集でした。

窪さん、やっぱりいいなあと感じた一冊。

(4.5点)

 

■ルミネッセンス/窪美澄

 

先日読んだ「夜空に浮かぶ~」との差が凄い。

こちらと同時進行で読んでいたのだけど、後味悪くなる系の話(嫌いじゃないが)。

 

自分の中ではまだまだ20代、30代の主人公に入りこめるつもりでいるのだけども、実は40代、50代の方が近いという事実に気づく。

しかもその近い将来にこんな閉塞感一杯になる毎日が待っているのでは・・と思わせる不穏さとバッドエンドにぞっとした。

(3.5点)

 

■二周目の恋

島本理生綿矢りさ一穂ミチ窪美澄と好きな作家が集結していたので借りてみたアンソロジー

アンソロジー小説は大抵満足できないのだが、良い作品も収録されていたりするので結局読んでしまう人。

 

恋愛がテーマのもの、特に女性作家の場合は特にハードルが高く、あまり満足できた試しがない。

 

その中で印象的だったものは、綿矢りささん。多分一番ぶっ飛んでいるし、文字もびっしりでうわ!ってなるんだけど、インパクトは抜群、あとじわじわ面白い。

一穂さんの「恋愛」というにはあまりにも一筋縄ではいかないこの感じ・・やっぱり好きだわ。

 

島本さんの話の中で、物凄くこれ嫌だわというフレーズがあった気がするんだけど、メモしていないから忘れてしまった。文章はとても好きなんだけど、登場人物があまり好きになれないことが最近の先品は多いのよね。

総合的な感想で、好きなものもあったけどあまり共感できないものもあった、といういつものアンソロジーの感想と同じになるという。

でも、アンソロジーに手を出すことはきっと辞められないのだろうな。

(3.5点)

 

■うたかたモザイク/一穂ミチ

 

最近すっかりはまっている一穂さん。

以前はBL小説を書かれていた作家さんということで、あーだからこういう話も収録されているのか、と納得。

BLは全く興味はないものの、嫌な感じがしないのとちょっと切なさもあったりして、一穂さんの持ち味が活かされているということなのでしょう。

 

もしこの一冊の本に作者名が記載されていなかったら、まるで別々の作家が書いているアンソロジー小説と思ってしまうかもしれないくらい、様々なジャンルが混じり、不思議な世界観、余韻の残る作品、ユーモアあり、切ないものあり、ぞっとするものありと本当に全然違う種類の話が詰まっていて面白い。

しかも全部好きって思えるのが凄いのよね。

 

「神様さまはそない優しない」が特に好き。

不慮の事故で死んで、猫に生まれ変わった夫。残された妻に飼われることになり、自分が死んだ後の世界を別の命でもう一度生きる事になった数奇な人生。

 

関西弁と猫という可愛い生き物目線なのでちょっとしたおかしみもあるのに、ずっとほのかに切ない感じが漂っているのは、最後の死の真相を知ることによってこれだったのか・・と思う。

一穂さんのこの世界観、癖になるな。

(4点)

 

■成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈

 

新聞広告にあったのを見て、図書館で予約してずっと待っていたものがやってきた。

結果、期待以上に面白かった!

 

なんというか、本を読んでいてこんなに元気をもらえる作品があったかしら・・と思うレベルの一冊。

 

タイトルのインパクトと、とにかくこの成瀬というキャラクターの魅力的なこと!

 

周りからも「変な人」と思われているレベルの変わりものだけど、本人は至って大真面目で、突拍子もないことをやってしまう。

周りのことなんて気にせず、こんな風に自分がなりたいと思う生き方ができたらどれほど良いか!

 

現実と地続きの地名や場所、芸能人の名前なども出てくるので、この世の中に成瀬みたいな人が本当にいるのでは・・と錯覚するようなこの感覚もリアルで良かった。

続編も出るようで楽しみ。

ぜひ読んでほしい一冊。

(5点)

 

■リバー/奥田英朗

 

読書メーターでランキングに入っていて気になって借りてみたこちら。

久々にめちゃくちゃ分厚い本だったのだけど、そこはさすが奥田さん、分厚いということを忘れてしまうくらい面白かった。

 

未解決の連続殺人事件を彷彿とさせる事件が再び起こった。

被害者の父、新聞記者、当時の事件を担当していた元刑事、事件を追う現役刑事と目まぐるしく視点が変わるのだが、しっかりとかき分けられているので混乱することがない。

 

捜査線上に浮かびあがってきたのは、3人の容疑者。

犯人なのか、そうでないのか、真相に迫っていくのに容疑者が本当に犯人なのかが分からない。

ともすれば、3人とも犯人ではないのではないかと思うような状況に続きが気になって仕方がない。

そしてまさかの展開にえ!となるのだけど、ラストは多くが語られない。

だからこそ読者の想像力を煽る。それ故のこの余韻なのかもしれない。

面白かった。

(4.5点)

 

 

ヤマビルにやられた人

4月までの怒涛の忙しさが少し落ち着き、ようやく週末に早起きして登山に行くかという余力がでてきた昨日。

暑くなる予報ではあったが、気軽に行ける山シリーズ、弘法山へ行ってきた。

 

こちらの山、もう数年以上前からよく行っている気軽に行ける山の一つであり、今年は二度目になる。

勝手知ったる山であるから、まさかこんなことになろうとは夢にも思わなかった。

 

秦野駅を出発し、順調に登山をしながらやはり今日は暑いこともあり、汗が沢山出てくる。

しかし木陰に入ればさーっと涼しい風が吹き、山の中はちょっとだけ気温が下がるあの感じが気持ちいい。

 

登山口や弘法山公園に、そういえば気になる注意書きを見つけた。

「ヤマビルに注意」「塩を公園内に設置しているのでお使いください」

 

あれ、この山ってこんな注意書き今までなかったよな。

 

そんなことを思いながらヤマビルとか恐ろしいなあと他人事のように登山を続けていた訳なのだが、今日は思いの外登山客が多いことに驚きつつ、混んでいると思われる鶴巻温泉駅方面には下らず、いつもの東海大学前方面に下るルートで下山。

 

いつもの温泉で汗だくの体を洗い流すべく、さあ服を脱ぎすてるぞと思い、靴下に目をやった瞬間・・・

 

なんかおる!!!

 

なんか黒い、なめくじみたいのがおる・・・!

小指の半分くらいの!

 

いつものごとく一人登山なので声なき悲鳴を上げながら、一瞬パニックに。

 

というか、なんか靴下に血も滲んで・・・ない?!

 

とにかくもうここにこやつがいるっていうだけで絶対的に無理だったので、なんとか靴下を脱ぎすてて、すみません・・ゴミ箱にイン!!

物理的にこいつを靴下から引きはがすということができる棒とかがなかったというのもあるけど、もうこれを手元に置いておくというのが・・・無理だった。。。。

 

しかしやっぱり専用のヒル用スプレーとか塩をかけるとかしてはがさないとやっぱりだめなのね。

 

血が止まらない・・・

 

鮮血がだらだらと垂れている・・・

 

というか、靴下(登山用厚手)を履いているのにかまれるって・・・

私の天敵、ブヨに匹敵する凶悪さよ・・・

 

(のちにヤマビル対策を調べたところ)

素足は一切出していないし、タイツ(虫よけ仕様)に靴下インしていたし、予防策は取っていたはずなのに、靴下履いてるのに・・・

色々思うことはあるものの、とにかく血が止まらない。

 

アルコールウェットシートでぬぐう、血まみれ、ぬぐう、血まみれ、絆創膏を貼る、血まみれ、張り直す、血まみれ・・・

 

あまりにも血が止まらないので、水で洗い流すを永遠繰り返し・・・

 

結局何十分とまらなかったのか・・・絆創膏を何回か張り直した後、やっと血が止まった気配。。

 

大変な目に遭った・・・

 

帰ってきてかまれた跡を見れば、ブヨの時と同じくらいのそんなに大きくないものなのに、尋常じゃない出血だったな。。

 

除菌したことと水で流したことが良かったのか?

特に痛みや腫れなどはない(なんならブヨの時のが酷いくらい)。

 

が、グロテスクなその姿を見てしまった衝撃が大きかった。。

 

丹沢にはヤマビルがいるとは聞いていたけど、エリア的にはいてもおかしくないんだな・・・

そして雨の日の翌日は特に注意らしい。湿った落ち葉などに潜んでいて、はいのぼってくるようで。。

 

塩もらっておけばよかったな。。。と色々下調べ不足の自分を呪いつつ、冬までこの山には行けないなと思った昨日の出来事だった。

 

そろそろブヨとの戦いにもなってくるので、低山ではなく標高のある山に行きたいかな。夏にしか行けないしね。

 

皆さん、ヤマビルにはご注意を!

10年ぶりの突発性難聴

先週末あたりから、なんか耳が・・・おかしい気がすると思っていたら、耳鳴り&音程がおかしく聞こえる&電話の声が聴きとりにくいというお馴染みの症状に見舞われ、非常に苦しい一週間を過ごす羽目になりました。

 

私、相当ストレスたまってるのかしら・・・

 

思っていたよりも電話を受ける業務が多いこと、なかなか慣れない仕事、愚痴をこぼせる同僚がいないこと、ミスばかりの毎日に心が折れそうになっていましたが、体が悲鳴を上げているっていうことなんでしょうか。

 

仕事で電話が聞き取りにくいという状況は非常にまずいので、結局耳鼻科へいくことに。

 

以前ブログでも書いていましたが、10年前(コールセンターの仕事をしているころ)に一度突発性難聴疑惑に見舞われ、しばらく通院を続けていた時期がありました。

 

初めての病院は気さくな先生と親切なスタッフの皆さんに救われました。

 

「こういう症状が出たのは初めてですか?」

 

「いえ、10年前に同じ症状が出て、結局原因不明で突発性難聴ではないかと言われました」

 

「そうですね・・原因不明の難聴は突発性難聴になります。その時は(今回の右耳)同じところが聞こえにくくなりましたか?」

 

「その時は左耳でした」

 

というやりとりがあり、なんと10年ぶりの突発性難聴の再来!

 

やはり・・・という思いと、諦め。

ストレスですね。

 

聴力検査、血液検査をして、正常値ではあるけれども左耳に比べ右耳の低音が著しく落ちているらしいです。

人より耳がいいので、多分聞こえにくいと思うのが普通より大きいのかもですが、今回の聴力検査で結構聞こえないことが多くてショックでした。

タイミング的に今鳴らしているんだろうなと思うのに耳鳴りに阻まれて聞こえないっていう。

 

今が聴力の底ならいいけど、悪化していたら対応を変えなければいけないので、また平日に再訪してほしいとのこと。

まだ試用期間中ということもあり、未だ有給がないため病院に行ってから仕事に行くか、定時で上がらせてもらっていくか考え中・・・

非常に休みにくい雰囲気なので悩ましいです。こういう時有給を取りづらい仕事の割り振りっていうのは良くないですよね。。

 

今回は以前出された時とほぼ同じ薬ながら、あのくそ不味くて高い液体の薬が出なかったのはほっとしているのですが、ステロイドを処方され、免疫が低下するのでコロナなどの感染には十分ご留意を!みないなことを言われたのが恐ろしいです。

 

在宅一切なしの毎日出社なので気をつけないとですね。

 

そういえば先日の雪の日、皆在宅の中数人だけの出社要員になった人。

家が近いというのはメリットもあるけど、こういう不公平感は否めないですね。。

 

でも遠くから通勤している人から見たら、「近いんだからいいじゃん」って思うよね。私も絶対思う(笑)

 

とりあえずこの耳鳴りが小康状態になることを祈ります。

多分今回も耳鳴りが消えることはないのでしょうが、しばらくは通院するかな?

1ヶ月目の失態

転職をして1ヶ月が経った。

 

緊張状態と仕事を覚えるのに必死な日々で、毎日疲労困憊。

毎朝お腹がゆるく、仕事に行くのも憂鬱な日々が続いている(←あくまで仕事を覚えている段階なので、まだまだ分からないことが多く、不安からくる憂鬱さである)。

 

そんな中、私は先日とある失態を犯した。

 

仕事始め早々、残業したこともあり初日から物凄い疲労感に襲われていた。

その日は早めに就寝したのだが、6時頃トイレに行きたくなって起きた。そしてまだ眠れると思い二度寝したところ、そういえばまだアラームが鳴らないのかしらと思い時計を見ると

 

8:40

 

一瞬で目が覚める。

 

とりあえず9時には絶対に間に合わないと思い、諸事情で出勤が遅れる旨上司に連絡。

(フレックス的な働き方ができるようなのだが、試用期間中ということもあり、その働き方についてはできるともできないとも詳しい説明は受けていない)

しかし確実に9時は不可能なので、テキパキと準備をして何とか出社。

職場までは近いので30分ほどの遅れで到着するも、何とも気まずかった・・・

 

こんなに緊張感が漂っているのになぜここで私は寝坊したのだろう・・・確かに尋常じゃなく疲労している感じはあったのだけど・・・入社1ヶ月で遅刻て・・・と自分にガッカリしてしまう。

 

高卒で働き始めてから20年ほどになるが、寝坊で遅刻したのは過去3回くらい(1、2社目)。ここ数年は全くなかったので、本当に目が覚めた瞬間にゾッとした・・・

 

また寝坊するのではないかと、最近は何回か目が覚めてしまって嫌な感じ。。

 

仕事自体は、職場が近いので在宅勤務をしていた時と同じルーチン(朝洗濯はできないが、お弁当を詰めてクイックルワイパーをかける程度の掃除はできる)でいけるのは良い感じ。

ただ、自分が担当する仕事的に在宅勤務は不可能と思われ(他の社員の方は在宅勤務と並行している)、そのあたりの不公平感は否めない。

今は仕事を覚えるために出社するのは当然なんだけど・・・

 

仕事量的には一人では無理なくらいの仕事が満載で、暇で辛いということはないので良い。とにかく早く仕事を覚えて毎日のルーチンを淡々とこなしていきたいと努力の日々。

 

これまではお客様の数も少なかったのでお客様ごとに対応が違うということがあっても覚えられたのだが、今はお客様の数が凄く多いので、覚えたと思ったら特別パターンになることがあまりにも多くて未だついていけない・・・

仕事についてはとにかく努力するしかないので、毎日復習。休みの日もまとめ。

 

皆黙々と仕事をしていて、私語をしている人もほとんどいなく、雑用も進んで対応しテキパキと仕事をこなす社員の方が多い印象。

自分の仕事以外は無関心、というタイプの方はほぼいない様子なので好ましい。

 

早く仕事を覚えたい。でもまだまだついていけていない。

そんな途中経過。

 

2022年読書リスト ※随時更新

2021年は、トータル61冊でした。

大分少ないですね。在宅勤務が続いて、通勤時間に本を読む時間が減ったのが大きいかもしれないです。

感想を全て更新しましたので、よろしければ過去記事もご覧くださいませ。

 

2022年上半期分の読書感想です。随時更新していきます。

 

■雷神/道尾秀介

年末から読んでいたのだが、年内に読み切れず2022年初めて読んだ本になった。

道尾作品は読む前から期待とワクワクしかないのだけども、なかなか好評だと道尾さんのツイッターでも紹介されていたのでとても楽しみにしていた。

 

不穏な展開で始まるストーリー、主人公の現在の家庭で抱えるある秘密と、実家である家族で抱える過去とが複雑に絡み合っていく。

不穏な展開は好みなのだが、更にそこに家族の愛情が入った人情味あふれる展開も入ってくるので、単純なミステリにならず更に深みがあって面白い。

道尾さんの描く人物たちはなんだか温かみがあって好きだなあ・・・

 

真犯人はきっとあの人だろう・・・と読んでいると気づくのだけど、家族を思う心が、大切な人を守ろうとする気持ちが・・とそれぞれ事件に関わった人たちの想いも痛いほど伝わって苦しい。

 

ラスト、神様はいないのだと強く感じた。

 

彩根が個性的キャラで、別の物語も書けそうだなあと思っていたら、既に別の作品で登場している人物だったようだ(全然覚えていない・・・)。

↓過去記事を読んだら、めちゃめちゃ彩根について言及しているという。

su-ki-ma-kaze.hatenablog.jp

 

また本作は「雷」シリーズ三部作最終版的な感じらしい。確かに雷がつくタイトル多いなあと思っていたら、そういうことなのね。

とても好みの作品だった。

(4.5点)

 

■キャンプ日和:アウトドアと文藝

これ、タイトルと装丁と中身が全然合っていないのでは・・・

完全に今どきの作家さんたちのキャンプアンソロジーかしらん、と気軽に借りてしまってその読みにくさに愕然とするという展開に。

昔に発表されているもののようで、文章が難解な訳です。

そしてキャンプ未経験、登山経験者の私ですら、ほとんど入りこめない読みにくさよ・・・

これは完全にアウトドアに興味ない人とか未経験の人は受け付けないレベル。

私には難しすぎて読むのが辛かった。。ごめんなさい。

(2.5点)

 

■紙の月/角田光代

 

宮沢りえ主演で話題になっていた作品だけど、映画は観ていない。

原作も読んでみたいなと思っていたのだけどようやく読むことに。

 

結果、めちゃくちゃ面白かった。というか、考えさせられた。

 

平凡で一見幸せそうに見える主婦が、銀行員の仕事を始めた。

ふとした些細なきっかけから、横領を働くようになり、若い男に貢ぐようになっていく。

 

ふとしたきっかけで、普通の人が簡単に罪を犯す。

横領をした主人公に関わった周囲の人物のモノローグも、もしかしたらこの人たちも主人公と同じことをしていたかもしれない・・と思わせるリアルさがあってとても引き込まれた。

 

個人的に、子供のいない夫婦である主人公の夫婦関係に色々考えさせられるものがあってはっとした。

映画もぜひ見てみたい。

(5点)

 

■追憶の烏 ~八咫烏シリーズ~/阿部智里

 

八咫烏シリーズの最新作。

第二部になってから雪哉が別人のようになっていて面食らった人も多いと思う(私もその一人)。

雪哉が変貌してしまった理由、第二部の1作目に至るまでに何が起こったのか、ということが詳細に描かれた本作。

 

衝撃、驚きの連続で、前半の微笑ましいシーンから一転して暗転していく展開に茫然となった。

久々のあの人が再登場したり、第一部の裏側で何が起こっていたのかなども書かれていてかなり引き込まれた。

あまりに衝撃の本作だったので、再読したくてオークションで文庫を大人買いした(笑)

 

忘れている話も多いので、再読して更に楽しもうと思う。

やっぱりこのシリーズ大好き。

(5点)

 

ヒトコブラクダ層ゼット(下)/万城目学

 

上巻からあまり時間をおかずに読むことができて良かったが、やっぱり最近のマキメ作品は私には難しい。

 

メソポタミア文明とかそのあたりの世界観に興味がないこともあるけど、展開が難しくてなかなか理解できないが、銀亀三尉がめちゃくちゃ恰好良くて、銀亀三尉が出てくるからこそ読み切れたと思う(笑)

 

壮大な物語だった。

(3.5点)

 

■オーラの発表会/綿矢りさ

 

なんか元気が出る話だった。

最近の綿矢作品にありがちなぶっとんだ主人公は健在。

普通にしていれば美人なのに、かなり個性的な主人公(だけどもてる)。

 

まね師こと萌音との掛け合い、関係が好感を持てる。

お互いの欠点もずばずば指摘してくれて、その欠点も含めて友情が育まれている感じが良い。

 

そういえば先日綿矢さん原作の「私をくいとめて」の映画を観たけど、のんが良い味出してたな。そして可愛い。(「勝手にふるえてろ」は途中で挫折したが・・)

(4点)

 

■烏百花 白百合の章/阿部智里

 

第二部2作目の前に外伝が出ていたことに気づかず、最新作から読んでしまった人・・

 

大紫の御前の登殿の時代の話が多かった気がするのは、2作目に繋がっていくからなのね・・と思ったら、やっぱりこっちから先に読みたかったわと思いながら、読んだ。

 

「きんかんをにる」のほのぼのとした親子のエピソードからの最新作の流れはあまりに切ない・・・

 

「ちはやのだんまり」には笑い、「はるのとこやみ」にはぞっとする。

 

第一部のシリーズ再読を楽しめそう。

(4.5点)

 

■invert 城塚翡翠倒叙集/相沢沙呼

 

前作が非常に話題になっていたので、相沢さんもとうとう皆に知れてしまうのねとちょっとした寂しさを感じた私は、デビュー作「午前零時のサンドリヨン」シリーズが一番好きです。

そんな初期ファンも今回の作品には思わずにんまりなあの酉乃らしき人物が登場!

しかも20代になっている模様で、シリーズでは高校生だった酉乃の成長している姿を知ることができます。

 

とそっちの意味でテンションが上がる一冊だったのですが、これは翡翠がメインのお話でした。

前作で翡翠が本当はどういう人物なのか、というのが作品自体のどんでん返しになっていたと思うのですが、今回は翡翠のぶりぶりなドジっ子キャラ、あざとさが全面に出た作りになっていて、人によっては読むのがきついかもしれませんね。

 

殺人犯側の視点で物語が展開していく点や真から見た翡翠の普段の姿なども描かれていることが新鮮でした。

続編もあるんでしょうかねえ。

(4点)

 

■烏に単は似合わない(文庫版)/阿部智里

 

最新作からの衝撃を受け、思わずオークションで既刊文庫本を全て購入してしまった人。

兼ねてからこのシリーズは読み直したいと思っていたので、楽しみにしていました。

 

やっぱり二度目でもめちゃくちゃ面白い!

ファンタジーはそこまで好きと思っていなかったのですが、この平安時代くらい?とか神話とかの日本の設定の異世界ファンタジーみたいのが個人的にドンピシャらしいです。

なので絢爛豪華な美姫たちの登場ときなくさい事件と後半にかけての怒涛の展開とどんでん返し・・・めちゃくちゃ好みなんですよね。

ミステリとしても読めるのがまたいい。

 

そしてこの壮大なストーリーの凄さよ・・

二回目だからこそ繋がる設定とか、新たな発見もあって面白く読みました。

(4.5点)

 

■これは経費で落ちません!8 ~経理部の森若さん~/青木祐子

 

原作が続いている限り、ドラマ版の続編も期待したいと思う作品の一つ(わたし、定時で帰ります。も然り)。

脳内で完全にドラマ版のキャストでストーリーが進んでいる感じです。

ドラマも本当に面白かったですよねえ。

 

ということで、原作もやっぱり面白いです。

 

日常ミステリ的な展開も勿論だけど、自分も働いている身だからなのか、お仕事モノが結構好きみたいです。

そして青木さんのちょっと毒がこもった感じが好み。

 

トナカイ化粧品との合併後、新たな社員が増え、ついに経理部も増員!

合併したが故に新たに発生するトラブルに森若さんがついつい兎を追ってしまうのですが、果たして。

9巻も出たみたいで早く続きが読みたいですね。

安定の面白さでした。

(4.5点)

 

■炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパーク17/石田衣良

 

石田さんの作品は一時期読み漁っていたけれど、どうにも女性像がいかにも男性が好きそうな感じの女子ばかり出てくるので、敬遠してしまっていました。

唯一好きなシリーズなのでこのシリーズだけは読んでおります。

 

コロナ禍もしっかりと盛り込みつつ、今どきの問題に切り込むところはいいですね。

ただ、マコト達が永遠に年を取らない設定なので、ちょっと無理があるかなと思う部分も出てきているかも。。

とはいえ、安定の面白さ。このシリーズは続く限り読んでいきたいと思っています。

(4点)

 

■烏は主を選ばない(文庫版)/阿部智里

 

八咫烏シリーズ2作目(再読)。

手元に本があって、自分のタイミングで読めると、読んでから間が空いていないからこその記憶の新しさが相まって更に楽しめるという素晴らしさ。

「烏に単は似合わない」で姿をなかなか見せなかった若宮が一体何やってたんだ、というのが分かる一冊になっていて、雪哉もメインで出てくるので楽しいです。

 

この時の雪哉はまだ少年ということもあり、若宮のペースにまんまとはまってしまったトホホな感じが微笑ましくもあり、新鮮です(二部の雪哉を知っているだけに)。

 

再読でも全く変わらぬ面白さでした。

(4.5点)

 

■黄金の烏(文庫版)/阿部智里

シリーズ3作目。

ついに因縁の猿が登場し、一気にきなくさくなる展開。

 

冒頭の不遇な環境にいる少女の話がどう繋がっていくのかと思いながら読んでいても、すっかり内容を忘れていてやっぱり騙されてしまう。

あと、二部の番外編で出てきたあの子はここで出てきたのかーと忘れていた私でした。

(4.5点)

 

■空棺の烏(文庫版)/阿部智里

 

メインは雪哉。頸草院での武官養成学校での生活ということもあり、学園ものが好きな私はまた更に楽しめる巻。

少年だった雪哉が才覚を発揮し若宮の側近としてふさわしい姿に成長していくのも興味深いし、新たに猿が出てきたりと話としても繋がっているのでハラハラドキドキ。

 

千早も好きだし茂丸も好き(茂丸の今後の展開を知っていると切ないのですが・・)。

雪哉がいかに能無しのように見せかけていたのか、というのがよく分かる巻でもあります(実はかなり凄い人)。

(4.5点)

 

玉依姫(文庫版)/阿部智里

 

デビュー作よりも前にこの大本となる小説を書きあげていたということもあって、他作品とはちょっと趣が異なる本作だけは、やっぱり他のシリーズに比べて話に入りこめない部分もあるのだけれども、日本神話や人身御供など昔の日本にあった伝説などがモチーフになっているのは好み。

 

ますほのキャラ設定が若干違うように思う違和感はあるものの、若宮の過去の記憶に迫る展開が気になり、のめりこんでしまいます。

 

しかしどうしても志保のあの変わりようが納得できないんですよね。。

初めて読んだ時もそこだけがずっと違和感があって。あの場所にいるから少しずつ浸食されてしまったということなんですかねえ。

(4点)

 

■ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら/眞鍋明人

 

電車の広告で話題!となっているのを見て、ちょっと読んでみたいなと思った私。

図書館で予約して結構待ちました。

 

ビジネス書と思いきや、まさかの小説でした!(しっかりビジネス小説って書いてありましたね)

小説とはどうなのかしらと思いながら読み進めていくと、意外と面白い。

幕末好きの私はそれ以前の歴史上の人物に詳しくないしあまり興味もないのですが、さすがに家康、信長、秀吉は知っているし、勿論そのお三方は登場します。

 

特殊技術で坂本龍馬大久保利通徳川吉宗など後世に知名度を残す偉人達が蘇り内閣を作ったら・・・という前代未聞の展開。

 

今の政治家が成し遂げることができなかった、このコロナ禍という時代においてどんな政策を進めたら国民の生活が保障され、コロナの感染拡大を防げるのか。

合理的かつ具体的な方法が目白押しで非常に新鮮な気もちで読みました。

 

失礼ながら初めて存じ上げた偉人達も登場しているものの、親切な解説もあるのでご安心あれ。

 

難点は普通のハードカバーよりもサイズがでかくて適用できるブックカバーがなく剥き身で読むしかなかったことでしょうか(笑)

ともあれ一度読んでみるのはありのビジネス小説でした。

(4点)

 

■弥栄の烏(文庫版)/阿部智里

 

ついに第一部完結!

玉依姫」の舞台裏というか、こちらがシリーズの地続きになっている感じなので、「玉依姫」で納得できなかった方はこちらも合わせてぜひとも読んでいただきたいですね。

 

完結といってもやっぱりまだ完全に理解できない部分が多い。

何度か読まないとだめかもしれません。

 

今回の見どころは、ますほと澄尾の関係でしょうか。

澄尾の秘めたる思いが露出するあのシーン。きゅんとします。

(4.5点)

 

■烏百花 蛍の章(文庫版)/阿部智里

 

シリーズでは描ききれなかったサイドストーリー集とでもいいましょうか。

 

少しだけ登場したあの人物にも、実はこういった背景があったのねというのを知ることができたり、物語に何気なく出てきた会話の中の過去の出来事など、更にシリーズを楽しめる短編が詰まっています。

 

シリーズ第一部を再読して思ったのが、ますほの成長物語でもあるなと。

 

烏に単は似合わないでは、自分に自信を持ちすぎるくらい持っている高慢で美しい姫、だけど背景のことは何もわかっていないといった印象だった彼女が、浜木綿の女房になることで髪を切り、政治の内部事情にも通じるようになってくると、一気にその気高さや聡明さ、自分を失わない強さが全面に現れて、何だか物凄く格好良いんですよね。

それでいて絶世の美女っていうのがたまらない。

特に「玉依姫」で彼女を危険な目に遭わせたくないと思う澄尾との言い合いからの、山神の元で志保のお世話係として通うようになるところまでの成長ぶり、貴族は烏形になることがはしたないとされる中で、烏形になることもいとわなくなった変わりぶり。

澄尾が惚れ直すのも納得でした。

 

第二部では彼らの関係のその後もちらっと書かれていますが、この勢いで第二部も再読したくなってきています。第二部1作目の文庫化はまだ先ですかねえ。

 

また時間をおいて読み直したい大好きなシリーズ。

贅沢な時間でした。

(4.5点)

 

■わたし、定時で帰ります。-ライジング-/朱野帰子

 

「これは経費で落ちません!」と共に続編希望のドラマがこれ。

脳内では吉高由里子向井理で再生されておりました。

向井理は個人的に演技が苦手なんだけど、このドラマだけは本当にはまり役だったと思っています。明らかにできる男みたいな役より、こういうできるけど露骨にできる感じを見せないみたいな役の方がいいのかもですね)

 

今回は結衣に新たな部下ができていたり、しかもこれまでより更に癖のある部下だったりで、管理職として翻弄される結衣に、「生活残業」を改善するために賃上げ交渉に挑むという難問が立ちはだかります。

 

賃上げ交渉の道のりは遠く、そして思った以上に結衣が所属する会社の古参の社員への優遇や新卒と中途の差、古い体制などが浮き彫りになってきて読んでいるこっちまでそりゃないわ!と思ってしまうことが多数でてきます(特に仕事ができる人の給与が・・・)。

 

私の今の会社は残業代が組み込まれていて出ないので生活残業も何もないので早く帰りたいのですが、確かに残業代を稼ぐための残業をしていたこともあるので・・分かるわーと思いながら色々考えさせられました。

 

まだ続きはあるのでしょうか。

今回も安定の面白さでした。

(4.5点)

 

■元彼の遺言状/新川帆立

 

ドラマが始まる前にできれば読みたかった作品でした。

 

結果、ドラマが本作に割く話数が少なかったこともあって、後半冗長に感じられてしまったことと、ドラマとかなり原作が違っていたのに犯人だけは一緒だったのでネタバレ状態で読むことになったので、良いことなしでした。。

 

そして書店でも話題とオススメされていることもあってかなり期待していたのです。

しかし期待以上ということはなかったです。好みの問題なのでしょうが・・期待しすぎてっていうパターンでしたね。

 

ドラマを見ていない人はぜひ原作を読んでほしいですが、ドラマを先に見てしまった人は篠田が全然メインキャラじゃないじゃん!って思ってしまうかもしれません(笑)

 

ドラマも綾瀬はるかの可愛さだけでなんとか見ていましたが、数話で挫折した人・・・

 

前情報なしで読みたかった本でした。

(3.5点)

 

■闇祓/辻村深月

意味深なタイトルから、闇を祓う力をもった人の話なのか?と読み始まると、距離感が大分おかしい転校生につきまとわれる女の子の話から始まり、一体どういう展開になるんだ??と読み進めていくと、やはり闇を祓う人の話でした。

 

ただ、闇「祓」はハラスメントの意味があるヤミハラだったことが斬新なタイトルだなと思いました。

日常のどこにでも潜む闇。

無意識のうちにヤミハラする側になっているかもしれない・・ととても考えさせられる話でした。続編もあったらぜひ読みたい、こういう辻村さんの作品はとても好みでした。

(4.5点)

 

ハケンアニメ!/辻村深月

 

映画公開前に再読しようと読む始めたのに、読み切れなくて途中まで読んだところで映画をみることに。

原作から若干の設定変更はあったものの、無理ない流れと原作の愛を感じられる良作で、特に原作を読んだ後に王子役の中村倫也のまんま王子だ!と思うシーンがあって、かなりテンションが上がりました。

 

アニメには全然詳しくない人だけど、アニメ制作に関わる人たちを様々な職業から覗き見ることができる感じで非常に興味深く読めた。

今やっとスピンオフが手元に来たので読んでおります。

(4.5点)

 

■ペッパーズ・ゴースト/伊坂幸太郎

 

飛沫などで「感染」した相手がこれから見る現実の光景を「先行上映」として見ることができる壇先生と、その教え子が書いているネコジゴハンターなる二人の男が復讐するという小説の話と、檀先生とひょんなきっかけで関りをもつことになる女性の三つの視点からストーリーは進んでいく。

壇先生にパートだけは面白いものの、他の話がどう繋がっていくのか分かるまでは前半ではやや苦戦。

 

しかしそこは伊坂さん、この3つの視点が繋がっていくと俄然面白くなり無事読み切ることができたのでした。

 

これぞコロナ禍だからこそ誕生した小説、という感じでしょうか。

(4点)

 

■はじめての/島本理生辻村深月宮部みゆき森絵都

 

YOASOBI×直木賞作家のコラボということで話題になっていたアンソロジー本。

 

好きな作家が参加しているにも関わらず、アンソロジーで楽しめることがとても少ない私にとって、恐る恐る読んでみたもの。

島本さん、宮部さんの作品はもうこの感想を書いている時点で思い出せないという異世界もの。

辻村さんはさらっと読めて、一番良かったのは森さんでした。

 

大人向けに転向?してからすっかり森さんの作品から遠ざかってしまった私ですが、やっぱりこういう作品こそ森さんの良さがふんだんに発揮されるんだなあと実感する話でした。

タイムトラベルものは個人的にも好きで青春も感じられる作品でした。

 

ただ、アンソロジー全体としては普通でしたね。。

(3.5点)

 

■さよならに反する現象/乙一

 

しばらく新作チェックをしていなかったうちに乙一さんの未読作品がものすごい溜まっていたので慌てて図書館で借りたもの。

 

おそ松さんの話は元をあまり知らないので入りこめずでしたが、コミカルな雰囲気の中にさらっと入る死者や事件。きな臭さがさりげなく入るところは乙一さんの作品らしくて面白い。

「湯川さんは写りたい」のオチが難しく理解できなかったのですが、読書メーターで解説していただけて納得・・・!こわっ!

(4点)

 

■沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクション/乙一 中田永一 山白朝子 他

 

アンソロジー小説は前出のようにほとんど楽しめることが少ない私。

そんな中で、これほど安心して読めるアンソロジーがあろうか(笑)

 

前作のメアリー・スーを殺してに続いて安定の面白さ。

だって全部安達寛高さんの様々な名義の小説集だから!

 

乙一さんの作品が多め、山白さんは一作のみだけどこのホラー感よ!

中田さんの作品がやっぱり一番好み。

 

きっと三作目もこのシリーズ?ありますよね?

(4点)

 

■あきない世傳 金と銀(12) 出帆篇/高田郁

 

安定のこのシリーズ。

さらっと一年が過ぎていくのだけど、え!あの小さかった賢輔どんがもう30歳?!と衝撃を受ける。

というか、幸も菊栄も40をいつの間にか超えていたのね・・・

時の経つのがなんと早いこと・・

 

日本橋音羽屋が直接ではないものの間接的に相変わらず色々仕掛けてくるものの、コツコツとお客様になることを重ねてそれを確実に信頼に繋げている幸たちの商いの仕方は毎回じんわりと温かい気持ちになる。

不穏な空気がただよう中でも、お梅どんが帳消しにしてくれるところが良いですよねえ。

安定の面白さ。

(5点)

 

■楽園ジューシー ホテルジューシー/坂木司

 

ホテルジューシーが面白かったという記憶が凄くあるのだけど、すっかり内容を忘れているのでそちらを再読してから読んだらもっと面白かったかもしれない。

 

主人公がまるで自分のようにネガティブ、後ろ向き、人付き合い苦手の社交性なしで若干イラっとする感じなのだけど、友人になったばかりの人からズバッと言われてしまうシーンはなんだか自分が言われているみたいでやけにぐさっときてしまった。。

 

前作に比べると主人公が明るい性格ではないこともあるのか?沖縄の陰の部分が描かれている本作は、前作のように面白かったなあと思う読後感とはちょっと違ったかも。

いや、つまらない訳ではないのだけども。

(3.5点)

 

■小説 シライサン/乙一

 

これ映画化されているらしいですね。

小説だから良いけど映像となると怖いかも・・!

 

結末がここで終わり?!という感じだったのと、結局どうなるかが描かれないところがその後が気になって仕方ない感じでした。

 

ネットで拡散されると一気に広まってしまう。それは呪いも一緒というのが怖いですね。。

(3.5点)

 

■鑑定人 氏家京太郎/中山七里

 

浦和医大の光崎やキャシー、県警のアマゾネスなど他シリーズで登場する人物がでてくるのは嬉しい。

 

元科捜研の有能な人材が集まる鑑定センターの氏家が主人公。

これはまた別のシリーズの始まり?

 

元科捜研ということと、有能な人材も科捜研から引き抜いて(はいないけど元同僚たちからするとそういう風に見える)いるせいか、現役警察の面々とあまり良好な関係ではない氏家。

 

3件の殺人事件の真相は。

鑑定結果が導き出す犯人とは。

 

これはなかなか面白い話で続編も期待です。

(4点)

 

■おわかれはモーツァルト/中山七里

 

安定の岬洋介シリーズ。

前半岬がなかなか登場しないのでもどかしさを感じたものの登場すると途端に面白くなる展開。

 

そういえばあの盲目と偽っていたあの人、いたよなあと思いながらあの人今何やってんだろ・・とか思ったり。

本当にこういう人がいてとばっちりを食らう本当に盲目で才能がある人にとってはたまったもんじゃないですよね・・・

 

犯人はこの中の一人かな?と思っていた予想が外れたので意外性があったのと続編もすでに決まっているようで今後も追い続けたいシリーズであります。

(4点)

 

■朔が満ちる/窪美澄

 

窪さんもチェックしていない間に結構未読作品がたまっていたことに気づいて図書館で借りたもの。

 

この主人公のように父親から暴力を振るわれていたということは全くないのだが、子どもへの「無関心」であるとか、「普通の」「幸せな」家庭には育っていない自分には、父親が余命いくばくもないと聞いた時の主人公の気持ちやあの複雑な心境が凄くよく分かるなあと思ってしまった。。

 

運命的に出会った梓も辛い過去を持った女性だが、一緒に浮上していこうとする展開にはとても好感がもてる良作だった。

(4点)

 

■ははのれんあい/窪美澄

 

タイトルがもったいない。

このタイトルだと手に取ろうと思わない人が結構いるのではないかしら・・・久々に読後、心が洗われるような本でした。

 

第一部ではただ頼りないという印象の由紀子が、3人の子育てと慣れない仕事に翻弄される日々が描かれる。

第二部は15歳になった長男の視点で展開していくのだが、この長男がめちゃくちゃよくできた息子すぎて・・・

 

しかし家族の形が変わっていっても、子供の成長や家族への想いが強く伝わってきてとても良い作品でした。なのでやっぱりこのタイトルは勿体ない!

(4.5点)

 

私は女になりたい/窪美澄

 

これはタイトル通り。

年下の男性と連案関係になった女性が相手との過去を振り返りながら思い出に浸っていく・・・というよくあるパターンと思わせて、ラストは意外な展開で案外悪くなかった。

(3.5点)

 

■八月の母/早見和真

 

これは・・イノセントデイズに繋がる(冒頭でもそれと思わせる描写がある)不穏さ。

実際に起こった事件が題材になっているようで、更に重い雰囲気。

 

家族の負の連鎖が親子三代に渡って続いていく・・・

例えこの連鎖を断ち切りたいと願っても、周りが、周囲に環境がそうさせてくれない。

そんな中でこの連鎖を断ち切ろうとするラストは深く考えさせられた。

 

こういう重い話は個人的には大変好み。でもしんどい時に読むと入りこみ過ぎて辛くなるけどね。

(4.5点)

 

■アフター・サイレンス/本多孝好

前半は入りこみづらかったものの、本多さんの丁寧な人物描写、優しさをじんわり感じる展開になるにつれ、ようやくすっと話が入ってきた感じでした。

これは続編もいけそうで個人的にはもっと読みたいと思います。

(4点)

 

■人面島/中山七里

人面探偵シリーズまさかの二作目。

主人公が苦手なタイプなのでジンさんがでてくるまで結構読むのが辛かったわ・・

 

ラストが意味深な描写あり。本当にジンさんは存在しているのだろうか。。

(3.5点)

 

■これは経費で落ちません!9 ~経理部の森若さん~/青木祐子

安定のシリーズ。

29歳って今やまだまだ若いのに、って思うけど、30歳を目前にしてのあの不安感って今になってみると不思議ですよね。

 

結婚の二文字がちらつき始めた森若さん。太陽との関係は順調。

経理部も新人がようやく軌道に乗ってきて、チームプレイもできていて、仕事も堅実にこなしている日々。

 

周囲が相変わらずがやがや。不穏な鎌本の行動とそして最後の太陽のセリフ。

続きはどうなる?

(4.5点)

 

■作家刑事毒島の嘲笑/中山七里

すっかりシリーズ化していますね。

犬養は名前だけ、高千穂は少しだけ出てくるものの、今回毒島と行動を共にするのは公安の刑事。

右や左の話は難しくて正直よく分からない・・・

ちょっと偏った主張などはたまに中山さんの作品に出てくるけど、今作はそれが強めであまり楽しめなかったです。

ただ、毒島はキャラが立っているので、きっと次回も続きますよね笑

(3.5点)

 

■棘の家/中山七里

雫井さんの作品のような中山さんらしからぬカラーの作品。

いやこういうの自分は好きなんだけど、後半に連れてやはり中山さん、一筋縄ではいかない展開になりましたね。

 

子供が大変な時期に何やってんねんこの母親は!と思ったり、家族の知らない面を知ってしまった夫であり父親である主人公に救いはあるのか・・・と思うが、唯一息子の想いだけは本物のようでちょっとほっとしました。

(4点)

 

■レンタルフレンド/青木祐子

全くの他人の結婚式に友人として出席するバイト、みたいなもの映画やドラマではよくあると思うのですが、有料でご希望の設定の友達として「レンタル」できるというレンタルされる側の女性の話。

 

クライアントは女性限定。様々な事情を抱えた依頼者の人間模様が興味深かったです。

 

青木さんのちょっと毒のある目線で描かれる物語とそれでいて読後感が悪くないところが好みなんですよね。

(4点)

 

■コーチ!はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル/青木祐子

常に自分に自信がなくてネガティブな人なので、はげまし屋なんていうものがあったらちょっと利用してみたいと思ってしまいました。

 

本名で、しかもHPで顔出しもしていて電話でこんな風に励ましてくれるなんて、変なお客さんにつかまったら・・・実際こんな仕事があったとしたら現実的ではないけれども、色々な理由で励まされたいと思う人々の話がなかなか興味深かったです。

(3.5点)

 

■母性/湊かなえ

知人から文庫をいただいたのですごく久々に読んだ湊さん。

やっぱり私、湊さんの作品苦手だ・・・と感じた。

 

「告白」を超える衝撃な多分もうないと思っているのと、文章が個人的に読みにくくてなかなか苦戦。

 

映画化で話題になっている作品だけど、母親からの教えを病的なほどに忠実に守ろうとする母親がなんだか恐怖でもあるし、そんな母親からの愛情を得ようとから回る娘の姿も読んでいて苦しかった。

 

ただただ嫌な気持ちが続き、展開の遅さも好みではなかった・・・

湊さん、やっぱりしばらく読むことはないかも。。

(3点)

 

■そして誰もゆとらなくなった/朝井リョウ

ゆとり三部作完結編。

 

どんなに好きな作家のエッセイでも、面白いと思えるエッセイに出会えたのは豊島ミホさんを除くとこの朝井リョウさんのみの私。

 

そして三作目の本作も期待を裏切らない面白さでした。

 

今回は特にお腹壊し系エピソードが多めではあるけれども、それをおかしみに変えてしまう朝井さんはやはり只物ではないと思います(笑)

 

お酒はあまり飲まず、甘党でお腹弱い、という共通点もさることながら、滝行の下り・・・あれ、私が滝行やったところと同じじゃね?!というエピソードがあり、更にファンになりました(笑)

 

私も相当な甘党だけど、12月のクリスマスまでにホールケーキを5個も食べたというエピソードには度肝を抜かれました(笑)

その話を夫にした後に本を机の上に置いておいたら、そのエピソードだけ読んだようで、朝井さんと神との対話が面白かったらしいです(笑)

 

あと、朝井さんが書いたちいかわのイラストがめちゃ可愛いです。

 

また何故かかきおろしらしいこのエッセイ、一つ一つのエピソードが長めなので前作に比べると手軽には読みづらいかもですが、それでも文章が本当に上手くて読みやすいので家以外で読むとにやけて大変なことになります。

 

文庫化したらこれも勿論買います(笑)!

(5点)

 

レジェンドアニメ!/辻村深月

ハケンアニメ」のその後の話や、過去の話などスピンオフ作品集。

再読して映画も見た後なので、余計に楽しめました。

 

特に「ハケンじゃないアニメ」はこれってドラえもんのことですよね?というアニメを作成している現場の話で、覇権を取るアニメとは棲み分けされている「国民的アニメ」を手掛ける世界の話。

全世代の誰もが知っているアニメだからこそ、新しい試みにも高いハードルが立ちふさがるが、瞳が手掛けたOP映像の展開が文章だけなのにまるで目の前で映像を見せられているかのような気がして、じんと目頭が熱くなった。

 

チヨダ・コーキが出てきたのだから、やっぱり出てきた赤羽環!

これは辻村作品のファンにはたまらないですよね。すごく続きが気になる感じの話になっていたので、ぜひとも続編を希望したいです。

進展しない王子の恋の続きも気になります。

(4.5点)

 

■あきない世傳 金と銀(13) 大海篇/高田郁

何度目頭が熱くなったかしれないこのシリーズ。

 

前半は順風満帆、ほっとしたのもつかの間。

信じられない事件が起こり五鈴屋の面々や菊栄が茫然とする中、怪しい動きを見せる惣ぼん。まさかそんな・・・とハラハラする中で、最後はすっとする展開になってほっとしました。

妹の結との関係はこれで解決・・・なのかな、ちょっとすっきりしない気はするけれど。

賢輔の秘めたる思いは読者には駄々洩れだったけど、直接的ではないけれど真摯な告白が胸を打ちましたね・・

幸と絶対いい関係になれると思うのだけど、まさかの最終巻!毎回続きが気になって仕方ないシリーズでしたが、これで終わりとは切ない。

と思ったら、あと二作ほど刊行予定があるとのことで楽しみ。

(5点)

 

■嘘つきジェンガ/辻村深月

2022年最後は辻村さんで締めました。

 

「詐欺」をテーマにした三編を収録。

 

コロナが始まったばかりの頃、東京から田舎に帰ることの「大変さ」、まだ得体のしれない存在だったウイルスに対して過剰なくらい警戒していたあの当時、ほんの数年前のことなのに、そういえばそんなことあったなあ・・と思うシーンに、未だコロナが収まらない世の中を思ってしまいました。

 

詐欺というと重いテーマのように思うけど、辻村さんは最後には必ずほっとした結末を用意してくれ、とても好みの作品だった。

(4.5点)