2022年はトータル47冊。
毎年読む量が減っているのは、毎日仕事で帰りが遅くて読む時間が取れないことや、電車通勤ではなくなったことで読書時間がなかなか取れないことも影響しておりますね。。
2023年読書感想(備忘録)
■風が強く吹いている/三浦しをん
数年前に友達に貸したまま返ってきていなかった本。
ずっと再読したかったのにどこにいったかなと思っていたら、この本が返ってきてとても久々に読みました。
いやもう何度読んでも面白い・・・!
箱根駅伝には全く興味がない人だった私もこの本を読んで、箱根駅伝って実は結構面白いんじゃない?と思うくらいには興味を持つきっかけにもなりましたし。
何より初心者にも箱根駅伝に至るまでにこういうプロセスをたどっていくんだというのが魅力的なキャラクター達と共に展開していくのでわかりやすく読めますし。
初心者集団がそんな簡単に箱根駅伝に出られる訳ないでしょ!と思うなかれ、ぜひ読んでほしい一冊。
久々に実写映画も見てしまいました。小出恵介のハイジと林遣都のカケルがいいですよねえ。でも実写映画はかなり駆け足なので、各登場人物を丁寧に描くTVアニメ版もお薦めです。
(5点)
■マイクロスパイ・アンサンブル/伊坂幸太郎
福島は東北の中でも何度も訪れている大好きな場所の一つ。
そんな福島にある猪苗代湖を舞台にしたストーリー。
仙台が舞台ではないなんて伊坂さんにしては珍しいなあと思っていたら、猪苗代湖で開かれているロックフェスで配布されているもので連載していたものとのこと。
トモフスキーとかなんか懐かしいわー昔ラジオで聞いていたようなと思いながら、架空の世界と思っていた世界と現実が奇妙にリンクしていく伊坂さんならではの展開はコミカルでほっこりしました。
(3.5点)
■神様の暇つぶし/千早茜
直木賞を受賞した千早茜さん、今受賞作の「しろがねの葉」を読んでいますが、
何作か読んでいたのに未読本があるなと気づいて慌てて読んだ本でした。
父親ほども歳の離れた男との恋。
ということで全く感情移入はできなかったのですが・・・
大抵こういうパターンだと、延々と体の関係の描写が続き、飽き飽きする展開が多いのですが、千早さんですからそういうことはありません。
体の関係に至るまでのもどかしいほどにつかず離れずな展開、至った後の終わりが近付いているのがひしひしと伝わる展開・・・
主人公はこんな風に「生」を写真に残されて、男との思い出を忘れられないまま余生を過ごしていくのだろうか。。。
歳を重ねたといえどもまだまだ若いはずの主人公の達観した態度がなんだか苦しかったです。
好みではない話だったけれど、千早さんだからこそ残る余韻のある作品だったと思います。
(3.5点)
■しろがねの葉/千早茜
とうとう千早さんが直木賞を受賞しましたね。
候補作と決まった時点で予約をしておいたので、受賞後まもなくして読むことができてラッキーでした。
これは時代小説なのかしら。戦国の世の、武士とか姫とか華やかな舞台ではなく、一市民側の生活を描いている。
とあることがきっかけで親姉弟と離ればなれになり、孤独となった少女ウメ。
銀を求めて銀堀として働く男に拾われ、ウメ自身も銀堀として男ばかりのその世界に入っていく。
男のように働きたいと男社会に入ったとて、いつか訪れる体の変化、女だからこそ受ける理不尽な暴力、様々な男との違いが浮き彫りになるにつれ、銀堀の手伝いからも遠ざかっていく。
歳を重ね、子を持ち、産み育てながらもいつまでも心の中にある存在。
子供の親である夫を愛し、今の生活を慈しみながらもいつまでの残り続ける想い。
世界の広さや理不尽さを何も知らなかった無垢な時代を超え、理不尽を知り、男にはなれないと知り、夫を持ち、子を育て、女として生を全うしていくウメの逞しく強く、眩しいような輝きを色鮮やかに描く千早さんの意欲作でした。
千早さんはデビュー作からも分かるように、現代ものじゃない話もめちゃくちゃ上手いんですよね。
好きな作家の直木賞受賞作にはいつも納得できない私でも、この作品の受賞には納得でした。
(4.5点)
■模倣犯1/宮部みゆき
当時読んだ時の衝撃。夢中になって読み、めちゃくちゃ面白かったという鮮烈な印象を残した作品。
長い事友達に貸していたことも忘れていたのですが、久々に返ってきたので再読。
長い長い物語の序章に過ぎない第一巻だけど、ある日突然事件に巻き込まれた孫を持つ祖父、家族を殺された過去を持ち、再び事件の第一発見者となった男の子、事件を追うルポライターの女性、犯人を追う刑事と様々な視点から進む物語はぐいぐい引き込んでいきます。
やっぱり面白い!次巻へ。
(4点)
■模倣犯2/宮部みゆき
世間を震撼させた殺人事件の犯人と目される2人の男が死亡。
犯人で間違いないと話は進んでいく中で、果たしてこの2人は何者なのか、事件の謎を紐解いていく第2巻。
読者には真犯人が分かっている。
しかし事件の当事者、被害者遺族たちはそれを知らない。もどかしい思いでページをめくる。
幼馴染が犯人かもしれない―そう思い、何とかしたいと思いながらままならない和明の行動にやきもきさせられながら読み終える。
(4.5点)
■模倣犯3/宮部みゆき
1巻では事件の被害者側からの視点で物語が始まりましたが、3巻では事件の加害者側からの視点=主に浩美と、事件に関わっているのではないかと幼馴染を止めようとする和明が主軸となっている。
あまりにも身勝手な理由で罪なき人々を手にかけた犯人。
しかし浩美の過去(特に家族関係)には同情できる部分もあり、何とも言えない気持ちになった。後半、浩美が命を落とす前に和明と接することでピースの本性であるとか、なぜこの道に逸れてしまったのか、和明がいかに自分を思ってくれていたのか・・など考え始めて・・・もしかしたら罪を認めるという未来があったかもしれない、ということを思うと複雑な心境になった。
そして一番悲しいのは、幼馴染を救えず、どころか犯人と目されてしまう和明だ。
うまいこと逃げおおせた主犯のピースはこのまま逃げおおせるのか。
(5点)
■模倣犯(4)/宮部みゆき
一見関係ないように思えた、別の殺人事件の被害者である真一と加害者遺族のめぐみを登場させた意味。
ここでその意味が分かり、じわじわと沁みてくる。
無実だと読者は分かっている、加害者とされる和明の妹の由美子の顛末があまりにも悲しい。
いくら無実だと主張しても、「加害者」遺族の意向など誰も信じない。
読者は無実を知っているからこそ、由美子の空回りがあまりに切ない。
めぐみが真一に対してとっている行動があまりにも身勝手だと感じたように、他の人からみたら、由美子はめぐみと同類にしか見えないという現実が辛い。
そして満を持して本名で登場するピースのしたたかさよ!
真犯人はそこにいますよ!!と思いながら、まだ誰もピースの裏の顔に気づかない。
誰もを一瞬で「信頼できる人物」と思わせるその物腰や外見・・・恐ろしい。
(5点)
■模倣犯5/宮部みゆき
メディアに嬉々として登場し始めたピース。
一躍人気者になるが、その化けの皮がはがされるときは来るのか。
ピースの操り人形のように成り下がってしまった由美子のなれの果ての姿があまりにも辛い。
絶対に捕まるはずがないと余裕のピース。
しかし警察は少しずつ真相に近づいていて・・・
ラスト、すっかり悪役にされたルポライターの滋子の反撃が痛快!
再読してもなお、面白いものは間違いなく面白い。
余韻にしばらく茫然としてしまうほどだった。
当時、携帯が主流ではなかった時代を舞台にしているものの、古さを感じない。
宮部さんの凄さに脱帽。
滋子を主人公にした「楽園」をすぐ図書館に借りに行って今読んでいる人。
(5点)
■ショートケーキ/坂木司
さくっと読める一冊。
ショートケーキをテーマにした連作短編集。
前の話に出てきた人が次の話に絡んでいたりする自分好みの展開と、坂木さんの本ってなんて美味しそうに食べ物を描くのかしら・・・
高級パティスリーのケーキとか手が出にくいものではなくて、手軽に買えるコージーコーナーのケーキが登場するので、思わずコージーコーナーまで走りたくなるほどだった。
(4点)
■楽園(上)/宮部みゆき
模倣犯の余韻が冷めやらぬ前に図書館で借りてきた。
以前読んでいる気がするけど全然思い出せない。
ルポライターとして登場した滋子の事件後9年経った今を描いている。
あの事件から立ち直れずにいる滋子は、少しずつライターとしての仕事を再開。
そこで持ち込まれた不可思議な「依頼」を受ける事に。
亡くなった息子が知りようがないはずの事件の絵を描いていたという奇妙な話で、サイコメトリーという言葉が出てきたり、一見すると突拍子もない話なのに、真相を追う滋子はそれを信じざるをえないことに気づいていく。
9年前の事件のその後にも触れられていたり、模倣犯で登場した人物のその後が出てきたりするのはファンとして嬉しい。
新たな事件を追う滋子が、少しずつ以前のような好奇心や猪突猛進さを取り戻していくのも勇気が出る。
続きが気になる下巻へ。
(4.5点)
■楽園(下)/宮部みゆき
等の能力が本物だと確信した滋子。等は一体どこで真実を知ったのか。
真実を追い求めていく滋子。同時進行で小学生の女の子の話が挟まれていたけれど、その話と繋がっていく。
明かされていく土井崎家の秘密、どこで間違ったのか、何が悪かったのか、やりきれない思いが沸き起こる中で、等の母である敏子が思いのほか芯が強く、息子を失ってなお前向きに生きていこうとするその様に勇気づけられる。
子供を持った経験がない私だが、土井埼夫妻ともし同じ立場になったとしたら―ということを考えて子供を持つことの怖さも感じてしまった。
■あの子とQ/万城目学
近年のマキメさんの作品はどうも難しい。
初期作品のように突拍子もない展開でもはまってしまうあのワクワク感がなくて、少し遠ざかっていたこともあり、この作品も未読。
手に取ってみると、吸血鬼一家の話だった!
ポップなイラストと吸血鬼の女子高生が主人公。前半はなかなか入りこめなかったけれど、ゆるーいトーンの中に急にシリアス展開が入ってくると、ようやく面白さを感じ、読むことができた。
友人のヨッちゃんのマイペースさのおかしみ、ふとすればシリアル展開にもなりえるシーンでもヨッちゃんの存在が癒しだった。
続編もいけそうな終わり方、続くかな?
(3.5点)
■invert II 覗き窓の死角/相沢沙呼
ドラマ化された城塚翡翠シリーズの第三弾。
3作目ともなると、翡翠の表の顔と裏の顔もよく分かってきて、今作が一番面白く読めたかも。
2編収録されており、1編目はドラマで放送した内容なのでおさらいのように読む。
すっかり脳内ではドラマ版キャストで物語が展開していたなあ。
もう1編は中編で手ごわい容疑者との対決。
友人になれそうな存在だった人を犯人として事件を暴くことになった翡翠。
トリックの謎解きに苦戦し、複雑な心境の中で真実を見抜いていく。
ちょいちょい翡翠の会話の中で、嘘か本当か分からない身の上話が出てくるが、本作では更に翡翠の過去に突っ込んでいると思われるエピソードが盛り込まれており、最終的に翡翠の過去篇みたいのを書いてくれるのかしらと期待が高まるところ。
それにしても相沢さんの女子目線がリアルでエグイ。
朝井リョウさんもしかりだけど、こんなに女性同士の辛辣な感じをかける人ってなかなかいないよねえ。。
ドラマは原作に忠実で割と楽しんでみていたけど、あまり評判になっていなかった気がするので続編はないのかなあ。
原作はまだ続きそうなので楽しみ。
(4.5点)
■夜に星を放つ/窪見澄
直木賞受賞作。
初期の頃から追っている好きな作家の場合、沢山の好きな作品やおすすめしたい作品があるのに、なぜこれが直木賞・・・と思うことがほとんど(自分の場合)。
そんな中で、ああこの作品が受賞作で良かったなあと心から思える作品だと嬉しい。
窪さんの心がひりひりするような、独特の余韻を残す作品が多い中で、この短編集はひりひり感を残しながらも、心がほどけていくような優しい読後感もあり、とても好み。
様々な立場や年齢、性別も違う主人公たちなのにどこか不思議と感情移入できる部分があって好きだ。
(4.5点)
■いけないII/道尾秀介
いけないの続編!
こんなに事件が発生する街なんて嫌だ―と思いつつ、(日本一殺人事件が多い米花町に比べたら可愛いものだが・・)前回よりも少しだけ読者に優しい展開になっているII。
短編として読むことも勿論可能だが、実は全ての短編がラストに繋がっているというのも良いし、1章ごとに写真が添えられており、物語のヒントになっている構図は前作と一緒。
前作はそれでも全然分からなくてネタバレサイトに行ってしまったが、今回は次の章で曖昧に終わっていた前の章のその後が文章で記されているのでやっぱりそうだったのか!とかそっちにいってしまったのか・・・!と思ったりしてミステリ展開としても面白い。
道尾さんが描く女子も好きだけど、小学生男子を書かせたら右に出るものはいないよねえ・・子供目線の幼さと、子供だからこそ気づかない大人のずるさや、物の捉え方の違い・・それが絶妙。
個人的にはIIのが面白かった!
ぜひともIIIも期待したい。
道尾作品を読む前のワクワク感よ。
(4.5点)
■Nのために/湊かなえ
やっぱり私、湊さん苦手だわ・・・と改めて再確認した。
ドラマ「最愛」が好きな人は「Nのために」もオススメというのを見て、ずっと前から気になっていたドラマ。
先日Tverで期間限定配信をしていたので、全話見たのだが・・・
ドンピシャで好み!!
重い過去を背負う主人公、淡い恋愛、そして殺人事件発生、犯人は一体・・・完全に好みの展開だった。
演技派の俳優陣が出演しているのも良かったし(榮倉奈々は演技が上手いとは思わないが、この役はとても合っていたと思う。そして小出恵介が凄くいい味を出していてや勿体ないわーとしみじみ。地上波ドラマにはもう出られないのかなあ)、真相は一体?!と毎回次回が気になる展開でとても面白かった。
原作には三浦さんの役回りは登場しないけど、違和感なく取り入れていてストーリー展開も飽きさせず、原作はどんなもんだろう?と気になって図書館で借りて読んでみた次第。
概ね原作をベースにしているのだけど、なんというか湊さんの文章があまり好きじゃないみたい。何作か読んでいたけど、どうしても「告白」を超えるものを期待してしまい、超えるものは未だにないと思ってしまうのが敬遠する原因かもしれない。。
ストーリーとしては、事件発生→現場にいた人物たちの証言→現場にいた人物たち目線の過去の話からの10年後→事件当日の話→真相という感じなのだが、小説から読んでいたら果たしてドラマも見ていたか?と言われると微妙なところ。
読み終えてからの印象がとても薄いので、正直あまり覚えていないのである。。
ドラマの映像、キャスティングで脳内再生しながら読んでいるからストーリーは頭にはいってくるのだけども、、
ドラマは最高に面白いので、気になる人はぜひ映像で見てみてほしい。
(3.5点)
■ことば 僕自身の訓練のためのノート/山口一郎
サカナクションのボーカル、一郎さんの初の著書。
といっても、デビュー前別のバンドを組んでいた一郎さんが魔法のiランド(懐かしい!これを知っている人は年代わかっちゃいますよねえ)に投稿していた詩(言葉)たちをお父様がまとめたもので、一郎さんは関与していないとか。
一郎さんファンであり本好きの自分としては一度は読んでみたいと思っていたのだが、絶対図書館には入らないやつ!と思っていたので、購入を悩んでいたもの。
本にしては結構高くて、しかも特に一郎さんの写真とかがあるわけでもなく、詩なのでページの余白もとても多い本。薄すぎないけど、決して分厚くはない本にしては結構躊躇うお値段。
ファンの人しか買わないんじゃないか・・・と思ったら、読んでみてもったいないなあと思ってしまった。
というのも、詩集として読むとかなりのクオリティだったこと。上質な紙の匂いも含めて、一郎さんの世界観を垣間見た気がしてなんだか嬉しかったこと。
実際にサカナの曲として発表されている原型の言葉たちが散りばめられていたこと(GO TO THE FUTUREは完全にそのまま!)。
そういった意味で購入して、読めて良かったなあと思えたから。
しかも発売から一週間後、はるばる代官山蔦屋まで行ったら、サイン本が買えたのでこの値段だったとしても全然いい!
発売翌日にサイン本が入荷しているという書店をいくつか回ったのに既に売り切れていたので半ばあきらめていたのでとても嬉しかった。
雨の音を聞きながら一人部屋の中でゆっくり読んだり、月明かりを浴びながら静かに読む、そんな情景が浮かぶ言葉たちだった。
(4点)
■駅の名は夜明 軌道春秋II/高田郁
高田さんの現代もの。
高田さんならではの感動ストーリーではあるが、「子どもの世界」では大人のどうしようもないような事情で離婚した両親を持つ男の子の子どもだけの一人旅が切なく、ラストでうるっときてしまった。
ただ、個人的には高田さんは時代小説の方が好きだったりする。
(4点)
■スモールワールズ/一穂ミチ
2022年の本屋大賞候補作だったらしいが、チェックしていなかった初読みの作家さん。
文章に癖はないか、読むやすいか、そもそも面白いのか?と初読みの作家作品に手を出すときはドキドキするのだが・・・
完全に好みだった。全て良かった!
一遍一遍に小さな繋がりのある短編集となると、この話は好きだけどこっちは微妙だな・・ということがほとんどなんだけど、同じ作家が書いたとは思えないそれぞれに違う読後感の残る話が描かれていて斬新だった。
後味の悪い話、ほっこりする話、優しい気持ちになる話、人間の「黒い」部分のある話と感動話と、ドンピシャで好みだった。
こんな作家さんがいたとは・・・!ぜひ他の作品も読んでみたい。
(5点)
■掬えば手には/瀬尾まいこ
少し久々の瀬尾さん。悪人が出てこないので瀬尾さんの本は安心して読める。
人の感情を読める能力?のある主人公。
口が悪くてすぐにバイトが辞めてしまうオムライス屋でバイトをしており、新しく入ったバイトの女の子と打ち解けようとするが、どうにもその子の感情を読むことができない。
何かを抱えているらしい女の子、いつしか聞こえてくる謎の「声」。
女の子の抱えていたものとは?
劇的な何かがあるわけではないけど、ほっこりとした温かい気持ちになれる話。
図書館で借りたのにアフターストーリーまで付属でついていてちょっとお得な気分。
店長視点のその後の話が読めるのでぜひ。
(4点)
■Another side of 辻村深月
辻村深月さんのファンブック的な豪華な一冊。
書店で見かけて買おうかちょっと迷ったのは、初期の頃に装丁を手掛けていたイラストが表紙だったこと、朝井リョウさん、道尾秀介さん、羽海野チカさん、宮部みゆきさん、伊坂幸太郎さん、大山のぶ代さんなど豪華な作家・漫画家・映画監督等々(中村義洋監督など)との豪華対談、コメント、書評などを収録。
また、ファンには嬉しい全作品の解説、最新作のスピンオフ小説も収録。
個人的にはスピンオフ小説が最新刊のもので未発売の作品なので、読んだ後に読みたかったなあという気持ちはあるものの、「第一期」が好きな私としては、作品解説の中で「ぼくのメジャースプーン」の続編を今連載していること、発売予定があるということが記載されており、非常に嬉しい限り!
対談や様々な人からのコメントを読むと、辻村さんのお人柄と愛されているなあという感じがとても伝わってきて嬉しくなる。
サイン会にも何度か参加しているが、1人1人の読者の目を見て丁寧に語りかけてくれるのが印象的だった。
辻村さん必読の一冊!
(4.5点)
■烏の緑羽/阿部智里
八咫烏シリーズ最新刊。
衝撃の前作の後の話かと思いきや、長束の側近たちの話が描かれる。
変人と思えるくらいあっさりと人を斬れる路近の人格形成が読み解ける路近の過去の話や、名前がどんどん変わっていく羽緑の話からぐいぐい引き込まれてこの人物を好ましく思い始めた頃・・・雪哉とやりあって感じが悪いと思っていたあの人物だったと気づいてびっくりする。
視点が変わるだけでこんなにも感情が変わることに驚き。
ラストは金烏亡きあとの現在の混乱に戻る。
長束派VS雪哉派の対立みたいな話になっていくのだろうか、不穏な雰囲気が更に続きが気になる気持ちを増長させていきますな。
八咫烏シリーズは世界観にどっぷりと漬かりすぎて読んだ後しばらく現実に戻ってこられなくなる感じになる。
ファンブック?みたいのも出たようでぜひ読みたいなあ。
(4.5点)
■ブレイクニュース/薬丸岳
久々の薬丸さん、チェックしていない間に読んでいない本があったので図書館で借りる。
YouTubeは音楽を聴く以外ではほとんど見ない人なので、将来の子どもの夢でユーチューバーとか入っているのを引いてみてしまうようなタイプの人である。
「ブレイクニュース」を発信する女性。
TVや週刊誌、新聞では扱えないような事件を扱い、発信する。
一度ネットに出てしまった情報は一気に拡散され、削除をすることは容易ではない。
簡単に情報を発信できる今の世の中は果たして便利なのか、昔にはなかったネットの中傷。今の時代に生きる、特に若い世代の人には生きずらい世の中なのではなかろうか・・・
圧力でもみ消されるようなニュースをも発信することができる媒体。
ネットの良さと悪さを色々と考えさせられる話だった。
(3.5点)
■おまえなんかに会いたくない/乾ルカ■
スクールカーストをここまで明確に描いた作品があったであろうか。
読んでいて辛くてたまらなくなるほど、登場人物たちの心情が分かり、同時に分からないと感じた。
高校時代、カースト最底辺だった私は、クラスメイトに存在を認識されていなかったことや、卒業後に同窓会の声がかからなかったことを別の友人から聞いて知る、という経験をしたことがある。
カーストによって全く立場や力関係が異なり、住む世界すらも違う。
高校のクラスという狭い世界のカーストに、大人になっても囚われる人たちの話でもある。
本作はタイムカプセルに入れた手紙により、いじめられた側の復讐劇でもあり、最終的にいじめた側の心情の変化によって何とも言えない着地点を迎えて終了する。
後味は悪くはないが、よくもない。このどっちつかず感が乾さんらしさもあるかも。
螺旋プロジェクトの話もちらっと出てくるのも注目。
(3.5点)
■笑うマトリョーシカ/早見和真
先日読んだ「ザ・ロイヤルファミリー」といい、本作と言いあらすじやタイトルでちょっと損をしているような気がする作品。
というのも、今回は政治家と秘書の話なのかなと思うので最初難しそうだなと構えてしまったのだ。
しかしただの政治家と秘書の話ではなく、この政治家の清家という男が何者かによって操られ、作られた政治家なのではないか?という確信に迫っていく話なのである。
最初は学生時代の友人である秘書の鈴木がそうなのか?と思うのだが、元彼女、母親目線の話が入っていき、結局誰が・・・?というところでラスト清家の話になり―
ただ結局は誰が清家を操っていたのか、という明言はなく、とにかく清家の得体の知れなさ、開けば開くほど別の顔がどんどん出てくるマトリョーシカのように、中身は空洞の作られた人形のような不気味さが迫ってくる。
タイトルに文句を言ってすみません。読後、これ以上ないほど秀逸なタイトルだったなと実感。
(4点)
■烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2 /阿部智里
外伝は出ているのを知らずに慌てて図書館で予約して読んであまり日が経っていなかったので、意外とまだ内容を覚えていた。
はるのとこやみ、はラストでぞっとするし、その後のあせびの生き様などを知っているだけにルーツはここにあったのかと思うと空恐ろしい気持ちになる。
きんかんをにる、はまだ若宮が健在であったころ、雪哉とも関係が良好な姫宮との交流が優しく描かれる。
その後の第二部を知っている読者には何とも切ない気持ちにさせる傑作。
これで次は第二部の文庫化か。
完結したらまた1から通しで読みたい本当にどはまりしたシリーズである。
(4点)
■手紙/東野圭吾
貸していたのも忘れていたくらいのこの本が友人から帰ってきたので再読。
淡々と進んでいくから思わず気を抜きそうになるが、犯罪者の身内という呪縛から逃れられない過酷な運命が次次と襲ってくる展開は息苦しい。
外の様子を知る由もない兄、兄のせいで様々なものを犠牲に生きていかなければいけなくなった弟。
手紙という唯一の交流手段が、弟の人生に影を落とす。
今の時代だったら、簡単に個人が特定されてしまうネット社会。
もっと生きにくい時代になっているのだろう。携帯が登場しないこの当時でもこんなに苦しいのに、今だったら?と考えるとぞっとする。
決して幸せな結末ではないかもしれないけど、一筋希望のようなものが見えた気がするラストだった。
(4点)
■優しい音楽/瀬尾まいこ
友達に貸していたのも忘れた頃に返してもらったので、再読。
多分当時新刊で購入した文庫だと思うけど、時を経て再読すると購入するまでではないかなあという印象になっている、すさんだ心の現在に切ない気持ちに。
瀬尾さんの小説には悪人がでてこない。
突拍子もない設定が優しい結末に繋がっていく。心が洗われるけど、こんなうまくいくはずないじゃんと思う自分もいる。
でも心が洗われるのは確か。優しい気持ちになれるのはいい。
(4点)
■「八咫烏」シリーズファンBOOK
阿部智里さんの八咫烏シリーズのファンブック。
図書館で借りることができたので読む。
八咫烏シリーズというより、阿部さんファンの方が読むと嬉しい作りになっているかも。
インタビューが沢山掲載されているので、小説家を目指そうと思ったきっかけがはいはい、この下りはもう読みましたよ・・・というくらい何度も出てくるのには辟易したが、阿部さん自身による登場人物たちの紹介やシリーズの世界観に迫るQ&Aなど、本編にはまだ登場していない設定なども知ることができて面白かった。
幕間で1編は既に読んだものだったけど、人間からみた八咫烏の世界はこういうふうに見えているんだと新鮮さとおどろおどろしい雰囲気もいい。
シリーズにはまり、文庫を全部揃えてしまった人。
第二部は始まったばかり。書く予定のないエピソードも含めて阿部さんの壮大な頭の中の世界観を覗ることができる贅沢な一冊。
(4点)
■祝祭のハングマン/中山七里■
最近の中山さんの作品は設定が難しかったり、分厚いのが多かったりしたのだけど、本作は丁度良い長さで読みやすかった。
警察官の主人公が父親を殺した犯人に報復を決意する話、といったら結末に触れてしまうが、続編はなくこのまま完結してほしい気持ちになった。
最終的に犯行が発覚して刑事人生が終わらない。このままあちらの世界に足を踏み入れたまま刑事を続けるのか・・・
犬養の名前や麻生も登場する作品間のリンクは嬉しい。
(3.5点)
■最後の祈り/薬丸岳■
久々の薬丸さん。
前半、刑務所で教誨師をしている保阪の過去の罪、現在の穏やかな生活などは冗長に感じられたが、保阪の娘が殺害され、殺人犯の石原の逮捕、裁判、死刑判決-の後の展開からどんどん続きが気になっていく。
全く罪の意識がなく、死刑でいいというこの石原にできる究極の復讐とは・・・
教誨師であるからこそ、死刑囚との接見が認められる。
死刑執行の際に最後に石原に絶望を与えることができるかもしれない―
しかし石原との教誨の時間の中で、死刑を望んでいたはずの石原が保阪に心を開いていく。
極悪な殺人者としか思えなかった前半の印象から、どんどん変わっていく石原の姿を見せつけられ、保阪の煩悶が苦しいほどに伝わってくる。
娘を殺した男を赦すことができるのか。
最後に石原にかけた保阪の心は・・・
ラスト、悲しいとも切ないともいえない気持ちがせりあがってきて、やはり薬丸さん、相変わらず読ませてくれる。
教誨師という存在は小説を読んでいてたまに出てくるのでそれで初めて知ったのだけど、死刑執行に立ち会う立場の職員の目線も入れてくるので、死刑制度について色々考えさせられてしまう。
(4点)
■これは経費で落ちません!10~経理部の森若さん~/青木祐子
安定の面白さ。
「結婚しよう」「了解です」の太陽と沙名子のメールのやりとりにニヤニヤが止まらない。
寝落ち寸前のあのプロポーズは何だったのか。
大陽も沙名子もそのことに触れられないまま税務調査に追われる経理部。
相変わらず不穏な動きを見せる鎌本。合併前の問題の指摘など次から次へと問題がやってくるが、天々コーポレーションの経理部は優秀。
着実にタスクをこなしていく。
太陽の結婚の噂、相手は誰なのかと社内でまことしやかにささやかれ始める中、結婚準備に向けてエクセルにタスク表を作ってまとめてしまう沙名子がかわいい。
相変わらず面白いので一気読み。
(5点)
■死亡推定時刻/朔立木
新聞で売れている本か何かで紹介されていたのを見て気になり、図書館で予約していたもの。
分厚めの文庫、第一部と第二部の構成なのだが、第一部は登場人物の誰も好きになれず・・あこれは読むのきついかも・・・と思いつつ、何とか読了。
しかし第二部になった途端、前半の読むのに苦戦していたのが嘘のようにすらすら読め、しかも面白くなるので諦めないで読んでほしい。
田舎のあこぎな商売をして荒稼ぎしているとある金持ちの家の一人娘が誘拐、殺害された。
身代金の受け渡しを失敗したことが原因と思う遺族、私的な理由で死亡推定時刻を偽る警察、警察の執拗で巧妙な取り調べにより冤罪が生まれ、犯人に仕立て上げられた男も諦めて反論しないまま死刑確定・・・
被害者以外の全ての人間に対し、不快感しかない第一部とは反対に、冤罪を晴らそうと事件の真相を地道に追い、被告に向き合う弁護士がかなり好感が持ててすいすい読めた。
綺麗に冤罪が晴れて無罪放免、とはならない結末が日本の司法・警察の闇を見た気がして考えさせられる。
(4点)
■正欲(文庫版)/朝井リョウ
単行本でかなりの衝撃を受け、文庫が出たら買おうと決めたいた本作。
特殊性癖を持って生まれてきた人間は、「普通」のステージには決して立てない。
昨今のやけに多様性を重んじる風潮にもずばり切り込んでいて、ダークな朝井さんが魅せてくれる。
奇跡的に同じ性癖を持った人間と出会い、小さいながらも同じ仲間とのコミュニティを作っていこうと外に向かっていこうとした矢先の冒頭の事件・・・
あのときこうだったら、もしこうなっていれば・・・が次々と浮かんでは消えていき、最初から読み直したくなるような物語だ。
本書に出てくる「水」が対象になる性癖を持つ人って本当にいるのだろうか?
と思うのは、やはり自分は普通側の人間だからなんだろうな。
YouTubeに寄せられるなにげないコメントが、別の視点で見ると様々な性癖の人の「おかず」になっているのかもしれないと思うと恐ろしい。
秋の映画公開も近いので楽しみである。
(5点)
■同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬
本屋大賞ノミネート作品として大絶賛されていた本作。
結構期待して読んだのですが、ロシアが舞台ということもあり致命的に人物たちの名前を覚えられないという難点が・・・
結局最後までほとんど覚えられないまま読み終えてしまったのが残念。
最近よく見ている映像の世紀バタフライエフェクトで泥沼の独ソ戦の回があり、ドイツとソ連にそんな戦いがあったことを始めて知り、興味深く本作を読んだ。
女性でありながら、狙撃手として戦場に立つソ連。
村を理不尽に襲われ、生きるか死ぬかの瀬戸際に立った少女セラフィマは、狙撃手として生きる道を選ぶ。
女性だからというだけで起こる性の搾取。戦争という非日常で起こる様々な悲劇がリアルに描かれる。
戦争によって理不尽な立場に置かれた主人公が、戦場で戦うことによってドイツ人を殺すことを厭わなくなっていく様は悲しい。
(4点)
■グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 東京バンドワゴン/小路幸也
最近チェックしていないまに、「東京バンドワゴン」シリーズの未読作品があることに気づき、慌てて読んだ。
今回は日本を飛び出し、藍子とマードックのいるイギリスが舞台。
マードックさんの失踪、絵画盗難など不穏な事件が起こる中、イギリスへと旅立った我那人や健人たちが丸っと解決へ導いてくれる。
さちさんの姿が見え、言葉も交わせる子も登場したり、今後が楽しみな展開。
安定の面白さ。
(4点)
■ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴン/小路幸也
今度はまた日本に戻って堀田家の身近で起こる小さな事件やら問題を解決していくいつものパターン。
でも、登場人物たちはちゃんと歳を重ねていって、成長を見ることができるのって嬉しい。
大勢の食卓で飛びかう会話も、これがなければこのシリーズは始まらないって思う。
池澤さんの決断はいつかそうなるかもと思っていて寂しさもある。
(4点)
■楽園の烏(文庫版)/阿部智里
八咫烏シリーズ第二部。
初めて読んだ時は、突然現代が舞台になり、人間がメインの話に面食らったのと、雪哉が別人のようになっていることについていけなかったのだが、第一部を読み直し、第二部の最新刊まで読んだあとに読んでみると、ここでこう繋がっていたのか!と思うことが多くて再読して更に楽しめました。
最新作が待ち遠しい大好きなシリーズです。
(4点)
■駅物語/朱野帰子
「私定時で帰ります」シリーズの朱野さん。
ちょっと毒が入った語り口が好みなので、図書館で借りてみた。
鉄道員の中でも、「駅員」になりたい人って果たしてどの程度いるのだろう・・
客からの理不尽な要求、クレーム、果ては暴力、人身事故の後処理など、駅員の対応は大変な割に報われないようなイメージがあるのだけど、やはり想像通りのリアルな世界が描かれている。
駅で助けてもらった人に再会したいという思いで駅員としてデビューした主人公。
普通のサラリーマンが酒に酔うとどうしようもないクレーマー乗客に変貌していたり、出会った時とは全然違う面を見ることになったり。
それでもキラキラした世界を書いていないリアルがそこにある、という感じでなかなか興味深かった。
でもやっぱり駅員にはなりたいと思わないな・・ひたすら大変そうという印象は覆らなかった。
(4点)
■新!店長がバカすぎて/早見和真
早見さんの本はほぼ外れがないのだけど、唯一合わないのがこのシリーズ(?)。
第二弾。
書店員などには評判が高いのは書店で働く人の大変さ、楽しさなどが書かれているからだろうか。
早見さんの作品は深みがあってどちらかというとじっくり落ち着いて読みたいものが多くて非常に好みなんだが、とにかくこの店長の訳の分からなさ、それに対しひたすら憤っている主人公の図を読み続けるのが精神的にしんどいのだ、、
続編もありそうな感じだけど、3作目はもういいかな・・
好みの問題だと思うけど、私には合わなかった。今回も。
(3点)
■罪の境界/薬丸岳
薬丸さんの作品は、犯罪を起こした側、被害に遭った側、当事者、関係者に至るまで片一方に偏りのない丁寧な描き方をしているところが好きだ。
彼氏との結婚願望をもつ妙齢の女性。とりたてて大きな不満もなく、平和な日常を過ごしていた中、突如として通り魔の被害に遭い生死の境を彷徨うことになった。
自分との約束を守れなかったため、彼女が通り魔の被害者になってしまったという後悔の念に襲われる彼氏。
ひょんなことから、犯人に興味を持ち、事件を起こすに至った経緯、生い立ちをたどりながらルポの執筆に乗り出したライター。
3者の目線から物語が展開していく。
幼少時の親からの虐待、その連鎖。
犯罪に走っても一線を越えなかった人と超えてしまった人。
どんなに辛い境遇でも前を向くことをあきらめなかった人の最後と、諦めて境界を越えてしまった犯人との対比がこれでもかとつきつけられた。
被害に遭った側としても、そんな簡単に前を向くことはできないよな、と読んでいて仕方ないと思う部分はあったものの、新しい命を授かり、犯人の生い立ちを知り、自分を助けることで亡くなった人の過去を辿るうちに少しずつ前に進んでいく強さが心地良かった。
犯人は死刑以上に生きながら一生後悔を背負い続けるのだろう。
(4点)
■後宮の烏/白川紺子
本をよく読むという親戚の方に「八咫烏シリーズ」を勧めたところ見事にはまってくれ嬉しいなと思っていたところ、烏繋がりでこちらのシリーズをオススメしていただき読んでみることに。
アニメもやっていて実はちょっと気になっていたのでこの機会に読む。
中国の皇帝、宮殿が舞台になっている設定?で中国系の名前なのでフリガナがないと登場人物の名前をなかなか覚えられないという難点はあるものの、妃でありながら帝からの御渡りは決してないという特別な「烏妃」。
その正体は16、17歳くらいの少女。
不思議な力を持ち、今日も烏妃の元に助けや願いを求めてやってくる人がいる。
最初なかなか世界観に入りこめなかったものの、読みやすいので後半にいくにつれてどんどん面白くなってきた。
言葉と態度とは裏腹に優しい心を持った烏妃と烏妃に関わり知ろうとする皇帝とのやりとりが今後も気になるところ。
(3.5点)
■後宮の烏2/白川紺子
シリーズ2作目。大分世界観が分かってきたので読みやすくさくさく読めた。
魔術的なものが出てくるので、死体や幽鬼の描写はちょっとぐろかったりするけれど、孤独な存在だった烏妃の周りに少しずつ信頼のおける人物たちが集まっていく。
先代からの言いつけに背く行為と分かっていても、一度居心地の良さを経験してしまうと前のように戻ることはできない。
烏妃であることの苦悶、今の状態をダメだと思いつつも人間らしく葛藤する姿は悪くないと思う。
不穏な展開も出てきて気になる。3巻も借りなければ。
(4点)
■ペニー・レイン 東京バンドワゴン/小路幸也
安定の東京バンドワゴンシリーズ。
あんなに小さかったかんなとすずかも小学3年生!
きちんと歳を重ねていく堀田家を見守っていけるのが良いよねえ。
大きな事件はないけれど、下町の温かさや人々との交流が本当に優しい気持ちになるのよねえ。
(4点)
■後宮の烏3/白川紺子
後宮に住まう妃たち、信頼できる者なのか、それとも。
晩霞の目論見はいかに?
寿雪の秘密を知ってしまった晩霞がどう動くのか気になるところ。
(4点)
■赤い月の香り/千早茜
「透明な夜の香り」の続編。
それと知らずに借りたのだけれど、朔という名前が出てきてピンときた。
でも、一香とのこの淡い関係って、前作でどういう展開だったんだっけと忘れてしまっているので、一度再読してから読んだ方がもっと楽しめたかも。
淡々と展開していく物語の中で、特別な香りを求める依頼者達の抱える事情は濃くて、しんとした静けさの中に強い香りをはっと感じるような独特の雰囲気があって好きだ。
(4点)
■後宮の烏4/白川紺子
噂とは違い、心優しく人を受け入れる烏妃に助けられたものが増えるにつれ、信頼のおける人物たちだけではなく、寿雪の預かりしらぬところで烏妃シンパが増えていく。
いつしか宗教めいた神のような存在として崇められていくことで、それを利用し扇動するものが現れ始める。
そんな中、大切な者たちを遠ざけるのではなく守るという決断をした寿雪。寿雪の苦しみを救い出そうとする高俊。烏妃の謎にも迫っていく展開で続きが気になる。
(4点)
■後宮の烏5/白川紺子
ついに烏妃を自由にするため、結界を破ることに。
心を一瞬通わせた高俊と寿雪。後半の怒涛の展開にページをめくる手が止まらなくなった。
(4点)
■後宮の烏6/白川紺子
寿雪の魂を戻すには、肉親の存在が必要―
ついに血の繋がりがある可能性を知っている衛青が動く。
前半は後宮から出ることができないという烏妃の存在からか、後宮の中で起こる出来事が中心だったが、中盤から外の世界の話も入ってきて一気に世界が広がり俄然面白くなってきた。
と思ったら7巻で最終巻とは!佐那目一族の動向も気になるし、もっと続きが読みたい。
(4点)
■後宮の烏7/白川紺子
ついに最終巻。え!これで終わってしまうの・・という寂しい気持ち。
というのも、佐那目家の話が中心で、寿雪と高俊の話があまりないまま終わってしまったから。
ただ、多く語られないだけに最後の二人のその後の話が色々想像できるので微笑ましい気持ちにもなり。
番外編とかで語られなかった部分も読みたいところだけど、ないのよね。
(4点)
■夜空に浮かぶ欠けた月たち/窪美澄
仕事や恋愛、学校、子育て、日々の生活の中で突然心のバランスが取れなくなることがある。
そんな心の病気になってしまった人々が、とある心療内科に通うことで、少しずつ心のバランスを取り戻していく物語。
主人公たちの共通項はこの診療内科と美味しいコーヒーを飲むことができる喫茶店。
どん底まで落ちても、ゆっくりと上向きになっていく話達に、疲れた心を癒してくれるような優しい気持ちになれる短編集でした。
窪さん、やっぱりいいなあと感じた一冊。
(4.5点)
■ルミネッセンス/窪美澄
先日読んだ「夜空に浮かぶ~」との差が凄い。
こちらと同時進行で読んでいたのだけど、後味悪くなる系の話(嫌いじゃないが)。
自分の中ではまだまだ20代、30代の主人公に入りこめるつもりでいるのだけども、実は40代、50代の方が近いという事実に気づく。
しかもその近い将来にこんな閉塞感一杯になる毎日が待っているのでは・・と思わせる不穏さとバッドエンドにぞっとした。
(3.5点)
■二周目の恋
島本理生、綿矢りさ、一穂ミチ、窪美澄と好きな作家が集結していたので借りてみたアンソロジー。
アンソロジー小説は大抵満足できないのだが、良い作品も収録されていたりするので結局読んでしまう人。
恋愛がテーマのもの、特に女性作家の場合は特にハードルが高く、あまり満足できた試しがない。
その中で印象的だったものは、綿矢りささん。多分一番ぶっ飛んでいるし、文字もびっしりでうわ!ってなるんだけど、インパクトは抜群、あとじわじわ面白い。
一穂さんの「恋愛」というにはあまりにも一筋縄ではいかないこの感じ・・やっぱり好きだわ。
島本さんの話の中で、物凄くこれ嫌だわというフレーズがあった気がするんだけど、メモしていないから忘れてしまった。文章はとても好きなんだけど、登場人物があまり好きになれないことが最近の先品は多いのよね。
総合的な感想で、好きなものもあったけどあまり共感できないものもあった、といういつものアンソロジーの感想と同じになるという。
でも、アンソロジーに手を出すことはきっと辞められないのだろうな。
(3.5点)
■うたかたモザイク/一穂ミチ
最近すっかりはまっている一穂さん。
以前はBL小説を書かれていた作家さんということで、あーだからこういう話も収録されているのか、と納得。
BLは全く興味はないものの、嫌な感じがしないのとちょっと切なさもあったりして、一穂さんの持ち味が活かされているということなのでしょう。
もしこの一冊の本に作者名が記載されていなかったら、まるで別々の作家が書いているアンソロジー小説と思ってしまうかもしれないくらい、様々なジャンルが混じり、不思議な世界観、余韻の残る作品、ユーモアあり、切ないものあり、ぞっとするものありと本当に全然違う種類の話が詰まっていて面白い。
しかも全部好きって思えるのが凄いのよね。
「神様さまはそない優しない」が特に好き。
不慮の事故で死んで、猫に生まれ変わった夫。残された妻に飼われることになり、自分が死んだ後の世界を別の命でもう一度生きる事になった数奇な人生。
関西弁と猫という可愛い生き物目線なのでちょっとしたおかしみもあるのに、ずっとほのかに切ない感じが漂っているのは、最後の死の真相を知ることによってこれだったのか・・と思う。
一穂さんのこの世界観、癖になるな。
(4点)
■成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈
新聞広告にあったのを見て、図書館で予約してずっと待っていたものがやってきた。
結果、期待以上に面白かった!
なんというか、本を読んでいてこんなに元気をもらえる作品があったかしら・・と思うレベルの一冊。
タイトルのインパクトと、とにかくこの成瀬というキャラクターの魅力的なこと!
周りからも「変な人」と思われているレベルの変わりものだけど、本人は至って大真面目で、突拍子もないことをやってしまう。
周りのことなんて気にせず、こんな風に自分がなりたいと思う生き方ができたらどれほど良いか!
現実と地続きの地名や場所、芸能人の名前なども出てくるので、この世の中に成瀬みたいな人が本当にいるのでは・・と錯覚するようなこの感覚もリアルで良かった。
続編も出るようで楽しみ。
ぜひ読んでほしい一冊。
(5点)
■リバー/奥田英朗
読書メーターでランキングに入っていて気になって借りてみたこちら。
久々にめちゃくちゃ分厚い本だったのだけど、そこはさすが奥田さん、分厚いということを忘れてしまうくらい面白かった。
未解決の連続殺人事件を彷彿とさせる事件が再び起こった。
被害者の父、新聞記者、当時の事件を担当していた元刑事、事件を追う現役刑事と目まぐるしく視点が変わるのだが、しっかりとかき分けられているので混乱することがない。
捜査線上に浮かびあがってきたのは、3人の容疑者。
犯人なのか、そうでないのか、真相に迫っていくのに容疑者が本当に犯人なのかが分からない。
ともすれば、3人とも犯人ではないのではないかと思うような状況に続きが気になって仕方がない。
そしてまさかの展開にえ!となるのだけど、ラストは多くが語られない。
だからこそ読者の想像力を煽る。それ故のこの余韻なのかもしれない。
面白かった。
(4.5点)