「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
伊吹有喜さんの本です。
やばい・・・凄く良かった。そして自分好み、ドンピシャでした。
大正ロマン、昭和レトロが好きな自分にはドンピシャの世界観。
そして登場人物のどれもが愛おしい。なんて素敵な人たちよ。
戦前、戦時中、終戦の時代と共に歩む、少女向け雑誌の編集部が舞台。
戦争が始まっていても、まだ遠い彼方の戦争の影響はほとんどない時代。
ハイカラでオシャレな少女たちのファッション、愛らしい雑誌の付録、憧れの雑誌の編集部で働く事になったハツ。
個性的で美男美女揃いの作家先生、何もできなかったハツが少しずつ成長していく姿も良いです。
そして戦況が厳しさを増していく中で弾圧される表現。
物資の不足、危険思想とみなされた作家の不審死、招集・・・悲しい時代を経て、現代に続いている・・・
戦争当時でもこういった雑誌が創刊されていたことがどれほど少女たちを勇気づけたことでしょう。
有賀との淡い恋。
暗号でつづる最初で最後のラブレター。
ラストだけではなく、所々で胸が熱くなり、思わず涙がでそうでした。
電話も容易ではなく、手紙のやりとりも難しい時代。
こんな恋だからこそ、甘く切ないのでしょう。
素敵な作品に出会えてよかったです。文庫化したら絶対買おうと誓いました。
史絵理が可愛かったなあ。
(5点)