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富士山を望む町で介護士として働く日奈と海斗。老人の世話をし、ショッピングモールだけが息抜きの日奈の生活に、ある時、東京に住む宮澤が庭の草を刈りに、通ってくるようになる。生まれ育った町以外に思いを馳せるようになる日奈。一方、海斗は、日奈への思いを断ち切れぬまま、同僚と関係を深め、家族を支えるためにこの町に縛りつけられるが……。

窪美澄さんの本です。

田舎で介護を仕事にしている登場人物が出てくるせいで、生きることや死ぬことの対比が鮮やかに記憶に残りました。
そして、デビュー作の「ふがいない僕は空を見た」以来に感じたこの感覚が懐かしくも感じます。

読み始めは田舎で介護を仕事にする日奈の無気力感や、そんな日奈に執着する海斗を理解できず、嫌悪感すら覚えました。
しかし物語はゆっくりと時を重ねていき、20代から30代に代わっていく彼らの気持ちが理解できるものになると、すっと馴染むみます。

若い時には勢いや希望は人並みにあるけど、大人になるにつれて現実を見つめ、経験を積んでいくことで変わっていくものが、凄くリアルに感じられました。

日奈と海斗だけではなく、その周囲の人間にもスポットを当てて、別の視点から描かれていることで、より彼らのことを感じられた気がします。

上手く表現できないのが本当にもどかしいですが、ここ最近読んできた窪作品の中で群を抜いていますね。
(4.5点)