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「少年A」に人生を変えられた人々の物語

少年犯罪の加害者、被害者遺族、加害者を崇拝した少女、その運命の環の外にたつ女性作家。「少年A」は彼らに何をもたらしたのか。

窪美澄さんの本です。
 
今感想を書こうとしてAmazonのレビューを見て驚きました。
今までの窪さんの作品にはありえないほどの評価の低さ。
 
私は楽しめて、というと語弊があるのですが、いつも通り気付いたら物語の世界にのめり込んでいたんですけどね。
やっぱり神戸のあの事件を連想させるワードや設定が出てくることが拒否反応を起こす原因なのかもしれません。。
 
そう、私はこれがフィクションであって安心したと同時に、この物語の「少年A」が、あの事件の少年Aだったらどれだけいいか、と思ったのでした。
 
実際の少年Aは本を出してしまいましたね。
しかも罪の意識など何もないような本を。
 
例えばこの本の「少年A」のように、何故罪のない少女を殺してしまったのだろうか、と少しでも罪の意識を感じているのなら良かったのです。
死ぬことは許されない、何があっても生きていかなければいけないという一生の罪を背負っていくこと・・・
そして初めて愛する人が出来た時、その人を失うということがどれだけの悲しみであるか、を身をもって知る事。それが一番の償いであり、そうだったらどんなにか良かったかと思うのです。
 
実際の少年Aの小説は読んでいませんが、どうしようもないほど罪を罪だと思っていないことは伝わってきます。少なくとも罪を償っているのならば、平気で世間に飛び出して行って、まして被害者遺族がいるというのに本を出すなんてことができる訳がなかったのです。
 
だからこそ、例えばこのフィクションの少年Aのように、幼い頃の出来ごとが少しでも事件を起こすきっかけになってしまった、というような何かがあるのならまだ・・・良いとは言えないけれど、まだ我慢できたと思うのです。
 
小説家を志すも小説家になれず実家に戻ってきた30代の独身女性。
被害者の母、盲信的に「少年A」に惹かれる少女、そして「少年A」のパートでストーリーは展開していきますが、結局この独身女性以外のパートは、女性が書いた小説だったということなんですかね。
だとすればやっぱり「少年A」があんな風に罪の意識をもっていたという希望はもてないのか。。
 
あまりにも神戸の事件を彷彿とさせる展開、地名などが出てくるので、多分大衆的にはこの作品を認めたくないという感じだと思います。
 
ただ、やっぱり窪さん。
どうしようもないほど物語の世界に引っ張られていきます。
 
私はこの物語で何より怖かったのが、妹の子供を可愛いと思えない独身女性のパートです。
母親(妹)も、祖母も、その姉も誰もが可愛がらない子供の描写。
それが空恐ろしいほどリアルでした。
 
仕事が忙しかったりでなかなか時間が取れなかったのですが、本来なら一気読みしたいほど引きつけられる本でした。
内容が内容なだけにオススメとは言えませんが、自分はこの世界感、フィクションだと思って読んだら嫌いじゃないです。
(4.5点)