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ふがいない僕は空を見た

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高校生の卓巳は友人と出掛けたアニメの同人誌販売イベントで、アニメ好きのあんずこと主婦の里美と出会う。やがて二人は深い仲になり、里美は卓巳に自分の好きなアニメのキャラクターのコスプレをさせ、情事にふけっていた。そんなある日、卓巳は前から気になっていた同級生の七菜に告白され……。



百万円と苦虫女」のタダナユキ監督が、窪美澄さん原作の本作を映像化しました。
 
原作同様、映画も「性」描写ばかりに話題がいってしまっていますが、久しぶりに5点満点の映画に出会えた気がします。
「百万円と~」の時は、蒼井優目当てで見に行ったのですが、あの映画は健全に(?)観る事ができる映画だったので(それと、蒼井優をキャスティングに据える前提で作られているので)とても印象的な映画、好きな映画でもあります。
 
永山君も田畑さんとも好きな俳優さんなので、キャスティングを知った時からとても期待していました。
 
コスプレ情事シーンは、もう隠すことなく大胆に撮られています。
しかし、不思議と嫌悪感はなかったかな。
 
原作は、主人公の卓巳、主婦のあんず、卓巳を好きな松永、卓巳の友人の福田、卓巳の母の視点から見た構成になっていますが、映画では松永の話を大幅カットしても142分もの長い長い映画に仕上がりました。
 
原作一冊分を映像化したら仕方ない長さなのかもしれませんが、私の前に座っていた人が途中退出して帰ってこなかったり、皆お尻が痛くなったのか身動きしている人が多かった気がします。
私も流石にこの長さにはやられましたが、見終わった後の満足感は凄かった・・・!


まずキャスティングが素晴らしい。
田畑さんの演技力は言わずもがな、ですが、この方は表情で魅せますね。
情事の最中の絶頂の表情と、不妊治療の辛さで苦しむ表情の対比が切ない。
ひたすら姑から嫌味を言われ続けるも、夫は助けてくれない。
夫婦は子供を欲しがっていないのに、義務で子供を作らなければ、子供ができなければいけないというジレンマ。
 
冒頭の卓巳サイドでは見えてこなかった部分が見えてくると、何とも切ないです。
 
永山君は主役の割にはあまり目立たなかったなあと思いますが、好きな俳優さんです。
 
そして福田を演じた窪田君。
素晴らしいです。原作でも「セイタカアワダチソウ」の彼の話が一番好きでしたけど、映像化するとこの極貧生活が痛いほど伝わりますね。
 
卓巳の母からの差し入れをゴミ箱に捨てていたのに、本当に困窮してご飯も食べられなくなった極限の状態では、そんな事を気にする余裕もない。
彼にとってそこがギリギリのラインだったのだろうに、決壊せざるを得ない現実。
 
一筋の光と見えたバイト先の田岡との交流。
しかし田岡には抱えている闇があり・・・
 
授かりたくても授かりたい夫婦には子供はできず、出来てしまったから仕方なく生まれてきた子供、育児放棄、片親での生活。
 
子供を作る「性」行為と、子供が「生」まれるシーンとの対比があまりにも鮮やかでした。
 
最後の出産シーンではじわりと涙が。
少しでも彼らに幸せがありますよう、祈らずにはいられません。


一つ難を言うなら、松永は一応出てくるんですよね。
だけど、中途半端に主人公に絡むだけで後半は全く絡みがないんです。
 
卓巳を奮い立たせる重要な役割でもあるので、松永を出すのならそのあたりも少しは入れて欲しかったかなあと思います。
 
でもまあ、映画としては久しぶりに満足した作品。
これは老若男女問わず、見て欲しいです。
原作もぜひ。
(5点)