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ふがいない僕は空を見た

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これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。

窪美澄さんの本です。
 
図書館でタイトルを見かける度、何処かで見た事あるような・・・と思っていたのですが、なるほどなるほど!
本屋大賞2位だった例の作品だったのですね。
 
窪さんの作品、今回初めて読んだのですが、これは非常に何と言うか・・・好みが分かれるかも。
R-18文学賞と言えば、豊島ミホさんが第一回の読者賞を受賞したという事で私は知っているのですが、世間的には結構マイナーな文学賞ですよね?(私の認識では)
 
R-18というだけあって、あけっぴろげに性を題材にした作品が基本だというイメージなのですが、確かにこの受賞作の「ミクマリ」だけを読んだら、そんなに良いとは思わなかったかもしれない。
豊島ミホさんの「青空チェリー」を読んだ時も「何だこりゃ!」と思ったものですもの(笑)
 
しかし、青空チェリーに同時収録されていた他の作品の秀逸さにやられたのと同じように、本作も最後まで読み進めていくうちに、いつしか物語の世界に入り込んでいました。
 
好みで言ったら、決して好きではない。というか、得意ではない感じ?とでも言いましょうか。
けれども、デビュー作が単純に「10代の男子高校生の性欲」を単純に書いたもの、しかも若干異質な不倫関係、と思うところを、他の作品を読んで初めてただの性をテーマにした小説なんかではないのだ!と思えました。
 
好きな子がいるのにコスプレ趣味のある主婦との不倫に走る高校生、その主婦は子供ができない故に義母から執拗に不妊治療を進められ、成果を得られない事で10以上も年下の高校生と体を重ねる――
その高校生の事を好きな女の子は、夏休みのうちに、きっと処女を捨てられるのだと思っていた。しかし現実には、好きな男がコスプレをして主婦との不倫に走っている。自分の兄も訳の分からない宗教団体にはまっていて――
女の子と同じ高校に通い、不倫している男の子の友人でもある別の男の子は、親からの虐待や育児放棄、子供の万引き行為が平然と存在する団地に住み、母親からも半分捨てられた状態で、痴呆の始まった祖母とほとんど二人で生活をしている。バイト先で出会った男に勉強を見てもらう事になるが、その男には悪い噂があり――
 
そして最後に、不倫する男の子の母親の話。
助産婦という、生命が誕生する瞬間に立ちあう中で、数々の憤りや不安を抱えながらも、最後に一筋の光が見えてくる結末。
はっきりと良い結末が描かれている訳ではないから、もしかしたらこの物語に登場する人物たちは、やはり最後まで苦しい毎日を送っているのかもしれない。
けれど、性欲を感じる健康的男子の非健康な行いから、子供を「作る」ためにその行為が「義務」や「辛い事」になっていく事もあるのだということ。
例え頭も良く外見も良い人間が生まれたとしても、何処かでそのしっぺ返しのように悪いおまけもついてくる人間も確かに存在するのだということ。
そして、生命の誕生という、尊いような神聖なような出来ごとに繋がっていく事で、ようやくこの物語を一つの物語として読む事が出来た気がしました。
 
ただ、決して、私の好みではないな、と思います。
けれども、私としてはとても良い作品だったと思うのです。
 
矛盾しているかな。
でも、読んで見たら分かってもらえるかも。
 
好みは分かれると思いますが・・・。(⒋5)
余談ですが、「文藝あねもね」には、何故窪さんは参加されなかったのでしょうかね?
なんか、色々あるんでしょうかね。。
 
あと、本作は映画化も決まっている様子。今年秋公開予定。
個人的に結構好きな、永山絢斗君と田畑智子さんが出演するようで、何気に見てみたいと思っています。