バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が突然部活をやめた。
それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな、しかし確実な波紋が広がっていく。
野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。
部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。
桐島はどうして部活をやめたのか?
17歳の彼らは何を抱えているのか?
物語をなぞるうち、いつしか「あの頃」の自分が踏み出した「一歩」に思い当たる……。
それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな、しかし確実な波紋が広がっていく。
野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。
部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。
桐島はどうして部活をやめたのか?
17歳の彼らは何を抱えているのか?
物語をなぞるうち、いつしか「あの頃」の自分が踏み出した「一歩」に思い当たる……。
朝井リョウさんの本です。
第22回小説すばる新人賞受賞作。
文庫が出たら買おうって決めていました。久々に本を書店にて新刊で購入しました。
初めてこの本を読んだ時、デビュー作にして「現役大学生作家」でイケメンな朝井リョウさんに注目が集まっていましたよね。
書店でも大きく取り上げられていたり。
興味本位で借りてみて、ドンピシャで登場人物達の言葉の中に出てくるキーワードが自分好みだったりして。
しかしこの朝井リョウさんという人は・・・底辺もてっぺんも、両方描いてしまうから凄い!
私はこの中で、映画部の前田涼也に一番感情移入してしまったのだけど(←当然の如く底辺男子)、何故朝井さんはクラスの人気者(頂点)達の事も、こんなに色鮮やかに描く事ができるのだろう?
私は絶対、あのてっぺんにいた人達の気持ちなど微塵も想像することができない。
だって、私は知っていたから。
自分が最早クラスで一番下にいる人間だということに。
高校時代の自分、それを取り巻くクラスの雰囲気、いじめられている訳ではないけれど、密やかに、だけど確実に底辺に存在している自分の存在を無意識に感じながら過ごした日々は、もう思い出したくもない。
この作品の中に描かれていたように、仲良くもないクラスの頂点にいる人達と組む体育の時間のあの苦痛は、きっと底辺の人にしか分からないのだと思っていた。
友達も多そうだし、イケメンでモテそうだし、朝井さんは絶対クラスの人気者だったと思うけど、何でだ?
何でなんだ?!
どうして両方の気持ちがこんなに分かるわけ?!ずるい!
そんな事を思いながら、文庫版に追加された「東原かすみ~14歳~」が、更に物語に深みを増している。
思ってもいない事に話を合わせて自分を主張できないけれどクラスのトップにいられることと、少人数でも自分が好きな事で熱く語り合える相手がいて、自分のしたいことを自然とさらけ出せる変わりに、クラスの最下層に位置していること。
どちらが幸せか?
あの頃あんなに辛かったけれど、今はその数少ない友達と関係が続いている。
自分と同じ感性を持つ、大事な大事な友達だ。
果たして、トップに立っていたあの子たちは、今でも連絡を取り合っているのだろうか?
この物語の登場人物達はバリバリの平成ッ子。
だけど、あの頃感じていた痛み、焦燥感みたいなものは、実は昭和生まれも平成生まれも何も変わらないのかもしれない。
初めて読んだ時より、もっともっと好きな作品になった。
(4.5)
神木龍之介くん主演の映画版は、8月11日(土)公開
(監督は、「腑抜ども、悲しみの愛を見せろ」の方みたい。期待しております)