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黄金の烏

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人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。その行方を追って旅に出た日嗣の御子たる若宮と、彼に仕える雪哉は、最北の地で村人たちを襲い、喰らい尽くした大猿を発見する。生存者は、小梅と名乗る少女ただ一人――

阿部智里さんの八咫烏シリーズ第三弾。
 
1、2とその世界観にすっかり魅了され、早く続きが読みたいのになかなか順番が回ってこないので大分待ちました。
ようやく第3弾。
 
第2弾で若宮の下に仕えていた雪哉が非常に良いキャラクターをしていたので、また登場してきて嬉しいです。
むしろ主人公?というくらい雪哉メインの話でした。
 
若宮の下を去り、故郷に戻った雪哉の下に若宮が協力を仰ぎにやってきた。
八咫烏達を狂わせる薬の話から、猿に食われた村の惨状をその目で見る事に。
どうやらその薬と猿たちは関係がある様子・・・
 
冒頭の不遇な少女の話がどう本編に絡んでくるのか。
小梅っぽいけど多分違うのだろうな・・・でも似てる、一体この少女は誰?と警戒しながら読んでいたのに、やっぱりまんまとミスリードされました。
 
1、2はきらびやかな宮廷の様子や宮烏など身分のある人々が中心の話だったのですが(そして凄く好きな世界観!)、庶民もとい更に貧しい暮らしをしている人々にスポットが当たると、宮廷では決して知ることができない闇が見えてきます。
 
何処からやってきたのか分からない、人や八咫烏達を食らう大猿。
金烏が担う役目、そして金烏のみが持っている能力・・・
 
反発していた若宮に対して誤解をしていたのは、雪哉だけではなく読者もだったのかもしれません。
少しずつ若宮が背負う大きなものの存在が明かされていきます。
 
妃候補を争った浜木綿や真赭の薄が再び登場し、若宮を支える美しくも頼もしい存在に。
 
この猿の一件はひとまずは保留と言ったところで解決の兆しを見せるものの、3年後に再び猿と相まみえる・・・という気になる記述があり、そこで今回はラストとなります。
 
あれだけ若宮に使える事を拒んできた雪哉が、ついに若宮に忠誠を誓うまでのストーリーもあり、そして一体誰が猿の協力者になのかという謎を追うミステリ的な展開も大いに楽しませていただきました。
 
シリーズは完結したんですよね。
早く読みたいけどまだ続きがある、という楽しみを取っておきたいような気持ちもあります。
 
キャラクター達の魅力、八咫烏達が住む「山内」という世界。
そしてこの読みやすさ!読み始めから面白い!と思う本って凄いことですよね。
 
今回は外界に「人間」の世界があるという事も示され、ますます世界が広がっていくような感じで今後も非常に楽しみです。
(4.5点)