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怒り(下)

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愛子は田代から秘密を打ち明けられ、疑いを持った優馬の前から直人が消え、泉は田中が暮らす無人島である発見をする―。

吉田修一さんの本です。
 
下巻はもう上巻から続く「気になる!」という思いにただただ突き動かされて一気読みしました。
 
泉の話は、原作と映画では展開が違うのですね。
誰が悪いかとか、誰のせいか、なんて愚問でしかなくて、着地点の見えない暗い暗い展開の中で、泉の勇気、泉の母の愛情が胸を打ちます。そして辰哉が何故あの行動に出たのかは、きっと本人にしか分からなくて・・・やりきれないという思いでした。
 
映画版と展開が違うせいもあるけれども、泉と辰哉のその後の展開が割と長めに書かれていて、決してハッピーエンドではないし辛い展開ではあるのですが、けれども希望がないという訳でもないこの感じは、やっぱり書いてくれて良かったなあと思いましたね。
 
直人の思いと、もう一生戻ることができないと知った優馬の感情が読みながら洪水のように押し寄せて来て、もしかしたら映画版より一番ぐっときたかもしれません。
 
そして上巻の感想でも述べましたが、北見の話がはっきりと書かれないんですよね。
結局あの女性が抱えていたものは何だったのか、とか。
ただ泉が見た北見のその後の姿が事実で、読者に想像を促すといった展開なんでしょうか。
北見にも光が差す事があってほしいと願うばかりです。
 
吉田さん、なんかとてつもなく傑作を出してくることがある作家さんだと思っていますが、、、
今回は間違いなく傑作でした。こんなに一気に読んだ本も久々でそれも嬉しかったですね。
(5点)