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悪人

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なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。


吉田修一さんの本です。

映画化もされ、深津絵里さんが賞をとられたりと話題になった作品。
朝日新聞を取っているので、連載されてるのは知っていましたが読んでなかったという…


本好きの友人が大絶賛していたので、いつか読もうと思いつつ、ハードカバーでなかなか厚みがあるその本に手が出なかったのもあります。
まあ、島田荘司さんの本に比べたら薄いかもしれないけど(笑)


会社の上司が貸してくれたので、ようやく読む機会がやってきました。
が、これは社会派サスペンスとでも言うべき、吉田さんの意欲作でしたね。

吉田さんは過去に何作か読んでいて、作品により好き嫌いがはっきりしていたので、今回はどうだろうとドキドキしていたんです。

結果、非常に良かったです。
また読み直したい、っていう作品として好き嫌いを問われたら好きとは言えない。
けど、考えさせられたし、もっと自分が大人になったら、時間を置いて読み直したら、きっと感じ方も変わってくるんじゃないかって思ったのです。


この作品で「悪人」と評される殺人犯は、本当に悪人だったのか…。
車通りのない山道に、女性を置き去りにしたあの男は、悪人ではなかったら何なのか。

彼は、彼女は、お互いを求め愛したがただのまやかしに過ぎなかったのか。
タイミング、運命、そういったものがちょっとずれただけで、全く違う人生を送っていたかもしれない彼等。


切ない、悲しい、そんな言葉では表せない。
やりきれない、そんな結末でした。

この全編に漂う悲壮感、いや哀愁は、暗く、重いです。
でも、嫌いではなかったです。

吉田さんの全身全霊をかけた(?)意欲作。
ぜひ一度は読むべき。
ずしりと響く作品でした。