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時の罠

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辻村深月万城目学湊かなえ米澤穂信―綺羅、星のごとく輝く人気作家たちによる、“時”をテーマにしたアンソロジー。小学校時代に埋めたタイムカプセルがほどくこじれた関係、配置換えになった「縁結び」の神様の新たな仕事、人類には想像もつかない悠久なる物語…。“時間”が築いたきらびやかな迷宮へ、ようこそ―。


辻村さんと万城目さん目当てで。
 
期待以上だったのは、辻村さん。
ご自身も子供を持ち、親となった今だからこそかける親目線のストーリー。
単純なタイムカプセルを題材にした話に終わっていないところがいいです。
何だかにんまりとしてしまうお話でした。
 
万城目さんは、いつもの突拍子もない感じの話。
なのですが・・・短編ではこの設定が伝わりきらない感じ。一冊の本にして、連作短編とかにしたら面白いのではないだろうか。
世界感に入り込む前に終わってしまう短さでは、マキメワールドを堪能しきれませんでした。
 
米澤さんは・・・最後の最後にようやく壮大なストーリーの仕掛け、というか全体的な構図が見えてきた、という感じ。
難し過ぎてどういう話になるのか予測がつかなかったのと、一度読んだだけでは理解しきれない感じがあったなあと。
個人的に苦手な作品とそうでないのが混在している作家さんなので、今回は苦手系だったかも。
万人受けするタイプの話ではなかったと思います。長編とかでじっくり描いてもらったら違うかもしれない。
 
湊さん。
途中までずっと読み続けていたのですが、同じような話が続いたり、どの作品にもイヤミス的展開を求めてしまう自分がいて、物足りなさを感じ始めてから読まなくなった作家でした。
 
久々に読んでみたら、相変わらず何とも不穏な雰囲気。
このまま不穏な展開に終始してもらった方が、個人的には好きかも。
湊さんらしからぬアンハッピーエンドではないラストは、話としてはとても綺麗にまとまっているのですけどね。
個人の好みからするとちょっと物足りなさを覚えてしまうのは、「告白」の衝撃をいつまでも引きずっている自分がいるからなのだろうなあ。
 
あと、アンソロジー4編の中で湊さんと辻村さんの2作品がタイムカプセルを題材としたもので被ってしまったのは惜しいかも。
それぞれ別々の味がある作品ではあるのですが、これもアンソロジーならではのあるあるなのかもしれませんねえ。
 
ただ、全体的にはクオリティが高いと感じましたし、辻村さんの作品を読めただけでも読んだ価値がある作品だったと思います。
(4点)