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鏡の花

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製鏡所の娘が願う亡き人との再会。少年が抱える切ない空想。姉弟の哀しみを知る月の兎。曼珠沙華が語る夫の過去。少女が見る奇妙なサソリの夢。老夫婦に届いた絵葉書の謎。ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。それでも―。六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。まだ誰も見たことのない群像劇。


道尾秀介さんの本です。
 
道尾さんの作品を読む前は、なんでこんなにドキドキわくわくしてしまうのだろう。
新刊が出たということで、予約をしてようやく読むことができました。
 
第一章、これはアンソロジーで読んだ話だなあ、第二章・・・あれ?登場人物は同じ?読み間違えたかな?第三章・・・え?これはどういうこと?!
 
読み進めていくにつれ、一つずつ何かが違う世界を描いていることに気づきます。
 
SF的でもあり、人が亡くなること、残された人間の気持ちが真に迫る物語でもある。
 
並行して様々なパターンの世界が存在しているという、そんな説を聞くけれど、母・父・姉・弟、その誰かがいない世界ではこういうことが起こり、残された人はこういう風に感じているのだ・・・という事を各章で読むことができます。
 
今までにない展開、しかし今までにこのような作品があったでしょうか。
斬新で、そして私たちが生きているこの世界とはまた別の並行世界では、自分は死んでいるのかもしれない、そんな不思議な気持ちにもさせられました。
 
道尾さんと言えばどんでん返しのミステリ小説家、の印象が強く、私自身もミステリ小説の道尾作品が一番好きなのだけど、直木賞受賞以降は不穏な中にも一筋の光がさすような、希望の溢れる物語を書かれるようになったという印象です。
 
各々の章で不穏な空気がありつつ、最後の章では誰もが「生きている」世界が描かれ、希望にあふれています。
じわじわと、後から後から良さが伝わってくる作品だと思います。
私の稚拙な言葉では表現できないのがもどかしいですが、ぜひ読んでみてください。
(4.5点)