No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

タイニー・タイニー・ハッピー

イメージ 1
 
東京郊外の大型ショッピングセンター「タイニー・タイニー・ハッピー」、略して「タニハピ」。商品管理の事務を務める徹は、同じくタニハピのメガネ屋で働く実咲と2年前に結婚。ケンカもなく仲良くやってきたつもりだったが、少しずつズレが生じてきて…(「ドッグイヤー」より)。今日も「タニハピ」のどこかで交錯する人間模様。結婚、恋愛、仕事に葛藤する8人の男女をリアルに描いた、甘くも胸焦がれる、傑作恋愛ストーリー。


飛鳥井千砂さんの本です。
イラストは渡辺ペコさん。
 
飛鳥井さんを知ったのは、2007年。
デビュー作「はるがいったら」がきっかけでした。
 
元々すばる新人賞を受賞しているからと意識して借りた訳では全くなく、地元図書館に誰にも借りられずひっそりと置いてあったものを、タイトルが良さそうだと思って借りた中の一冊でした。
 
デビュー作ということで荒削りな感じはありましたが、読後感の何とも言えない印象的なあの感じ。
主人公達のキャラクターに好感を持ち、何より自分が書きたい小説はこういうのなんだよ!と力説したくなるような、そんな作品でした。
 
二作目の「学校のセンセイ」でその気持ちは確信に変わり、「サムシングブルー」に共感し、途中何作かは微妙かなあと思うものもあったものの、安定して素敵な作品を届けてくれるので、密かに注目している作家さんでした。
 
ところが、王様のブランチで特集されてから一気に知名度が上がったのか、書店に行く度にこの作品と王様のブランチで特集されました、的な宣伝文句で平積みされているのを見かける機会が増え、何とも言えない寂しさを覚えながら、図書館で予約。
購入しようか迷って、結局図書館で借りることにしたのですが、知名度が上がったせいか、予約待ちで相当待ちました。
結果、読んでみて買えば良かったなあー。と素直に思える素敵な作品でした。


これは好みが分かれるのかもしれないけど、未婚の20代後半~30代前半の妙齢の女性はきっと共感できると思います。
 
私はもうね、どの主人公にも共感できました。
と言ったら大げさでしょうか?
 
例えば、本当に好きな人がいるのに他の子と付き合っているジュンジュン(個人的に一番好きなキャラ。と思ったら・・・・はっ!もしや眼鏡男子だからか!?)の気持ちとか。
「好き」だと思う人と付き合えば、本気で好きな人の事も諦められるのではないか・・・と考えるところだとか。
 
相手に直して欲しいと思う部分、そういう嫌な面も含めて相手を受け入れて好きになれる気持ちとか。
――私、こういうの今まで分からなかったんです。
相手の嫌な所が見えたら、もうどんどん気持ちが離れていってしまうような。
これは川野の恋愛観と似ているのかな。
でも、最近やっぱり歳を重ねたせいでしょうか。
そういう部分を含めて相手を受け入れていける気持ちになってきているんですよね。
 
結婚を焦ってはいないけど、どうしても未来を想像してしまう。
その想像がよりリアルで具体的な形になっていくから、相手との結婚観とのずれから気持ちにすれ違いが生まれたり。
結婚がゴールではなくて、実咲みたいに結婚をしても多少の不安や不満がくすぶってもやもやしていたりという事もある訳で、だけど何だか・・・良いなあ。こういう関係になりたいなあ、とそんな事を色々思いながら、読み終えて感じるこの温かさ。
 
飛鳥井さんの文章って、ちょっと付き離しているような感じなのに、でもしっかり温かいんですよね。
だから凄く好きです。
 
何が言いたいのかというと、ブレイクのきっかけとなった本作がデビュー作からのファンの私から見ても素敵な作品だった事が嬉しいのです。
ぜひ本作で飛鳥井千砂さんデビューをしてみては?
 
で、巻末の解説で北上次郎さんも仰っていますが、本作が気に入られたら、ぜひとも「はるがいったら」「アシンメトリー」も読んでみてください。