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ばくりや

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ご不要になったあなたの能力お取り替えします。北の街の路地裏に、その店はあった―。ハンサムでもないのに異常に女にもてる、就職した会社が必ずつぶれる。古い自分を脱ぎ捨てるため、「ばくりや」を訪れた者たちの運命は。


乾ルカさんの最新刊。
 
乾さんも、コンスタントに作品を発表されていますよね。
新刊が出る度ワクワクしています。
 
「ばくりや」
不思議な言葉。馴染みのない言葉。
造語かしら?何の意味があるのかな?
不思議に思いながら読んでみると、ばくる=交換という意味なのだそう。
どういうことだろうと訝しげに読み始めると、なるほどと納得。
 
能力と言ってしまうとちょっと大げさかもしれないけど、例えば誰にでもこういうこと、ありませんか?
 
旅行に行くと必ず雨が降る
牛乳を飲むと必ずお腹を壊す
緊張するとお腹が痛くなる
 
みたいな、些細な事なんだけど、何故か必ずそうなってしまうようなこと。
この作品の中に出てくる登場人物達には、何も特別な能力なんてないのです。
ただ、人より異常に女性に持てたり、尋常じゃなく涙が出て止まらなくなったり、たまたま入社した会社が全て倒産してしまったり、旅先で必ずあり得ないほどの悪天候やトラブルに見舞われてしまったり――
 
そんな欲しくもない能力で人生を狂わされてきた依頼人達が、ばくりやで能力の交換を申し出た事から起こる、悲喜こもごも。
どちらかというと、ブラックユーモアが多いので、正直ぞっとする話もありました(「雨が落ちてくる」の衝撃と言ったら!)。
しかしながら、「世にも奇妙な物語」が好きな人、絶対好みだと思います。
 
ただ7つの短編が収録されているため、ばくりやの説明が必ず入ってくる事、それが少し読んでいて難儀でした。
仕方ないのですが、もう分かってるよー!と思わずにはいられなくて。
それでも、アンソロジーなどに収録されていたら、間違いなく一番印象に残るだろうと思われる秀逸な作品ばかり。
乾さんのこういうダークな作品も好きなので、楽しめました。