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やさぐれるには、まだ早い!(文庫版)

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秋田から上京して20歳で作家になった豊島ミホ。初めて彼氏の居るクリスマス、ひとり花火大会、同棲問題…東京っぽくない東京暮らしの悲喜こもごも。順調そうに見えた彼女は、なぜ結果的に恋と仕事を失い、秋田へと帰ることになったのか。そして、いまどんな心境で再スタートを切ろうとしているのか。一人の作家が人生に逡巡するさまを赤裸々に綴った実録880日エッセイ+現状報告。


豊島ミホさんの本です。
 
L25の連載が開始されると聞き、フリーマガジンなのに、取り寄せで送料出してまで読んでいたという過去があります。
それほどまでに、豊島ミホさんのエッセイは魅力的なのであります。
 
私にとって、豊島ミホさんという作家は「エッセイが大変に面白い」という印象です。
勿論、「檸檬のころ」などの傑作も書かれているのですが、圧倒的に、エッセイが面白いのです。
これって、作家にとっては褒め言葉ではないのかな?
でも、とにかく面白いのだから仕方がないではないですか。
 
……という訳で、L25時代の連載開始時には取り寄せていたのですが、東京に住む友達が送ってくれることになり、しばらく厄介になっていたのでありました。
 
そして単行本化。
やっぱり面白い。
文庫が出たらきっと買うぞ、とはりきっていて、結局オークションで落札して入手した次第。
 
文庫版には、単行本版+近況報告(2編)+山本文緒氏による解説が収録されています。
今回は豊島さんのイラストなどは帯くらいにしかなく、ひたすら文字のみ。
 
なのに、何だろうこの面白さ。
そして、何だろう・・・・・・?この何とも言えない苦しさは。
 
辛いという苦しさとは違うんです。
なんだろ、何処か懐かしくて・・・・・・ホロ苦い?そう、そんな感じ。
 
私には都会に出たという経験はおろか、一人暮らしをしたことも故郷を飛び出した事自体がありません。
小説家になれたら良いなあと思いながら、結局小説自体が書けていないような私は、豊島さんと同じ「底辺女子高生」でした。
 
だけど、豊島さんは極端に容姿にコンプレックスを持っていた事以外は、何処までもポジティブ。
田舎に帰って、無期限で作家業を休業する、と決めるまでの葛藤や逡巡。
そういったものは辛いことだって沢山あったと思います。
 
でも、現状から「逃げ出す」と言って休業することを決めた豊島さんは、何だろう。
とてつもなく大きいことを、いつかやってくれそうな気がする。
 
豊島ミホという作家は、いつだって前を向いている。
どんなに悔しいことや悲しいこと、苦しい事や寂しい事などがあっても、決して卑屈にならない。
自分の失敗すらコミカルな文章に変えてしまって、からりとした、爽やかさすら感じられるこのエッセイ達は、どの話もすっと心に入ってくるのです。
 
巻末で山本文緒さんも言っていますが、自分からしたらとても遠い作家という存在なのに、豊島さんと同じクラスだったら、きっと良い友達になれるだろう、と思わせる何かがあると思います。
 
特に、豊島さんの音楽センスは絶対私と趣味が合うと思うんだよなあ(豊島さんが初めて買った邦楽のCDが何なのか、非常に気になる!)。
 
エッセイ本なのに、ガツンとやられました。
もうなんていっていいか分からない、この気持ち。
 
絶対、読んでみなくちゃ分かりませんよ!
ぜひぜひ。