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リテイク・シックスティーン

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高校に入学したばかりの沙織は、クラスメイトの孝子に「未来から来た」と告白される。未来の世界で二十七歳・無職の孝子だが、イケてなかった高校生活をやり直せば未来も変えられるはずだ、と。学祭、球技大会、海でのダブルデート…青春を積極的に楽しもうとする孝子に引きずられ、地味で堅実な沙織の日々も少しずつ変わっていく。せつなくもきらきら輝く、青春小説。


豊島ミホさんの本です。
 
豊島さんが実質小説本として発表した中で最後の作品でもあります。
文庫化するという情報を掴み、私は早速ネットで注文をした訳ですが・・・・在庫取り寄せまでもうびっくりするくらい時間がかかりました。
豊島さんのブログでも言っていましたが、売っている時に買わないと手に入らなくなる、くらい部数が少ないようで。
個人的には「檸檬のころ」に次ぐ豊島さんの意欲作であると思っているので、もっと沢山の人に読んで欲しいですね。
 
単行本版を読んだのが2009年の12月。
あれから私も、いつの間にか27歳だった未来からやってきた孝子の元年齢を越えてしまいました・・・。
そうなると当然、見方や捉え方、感じ方も変わって来ます。
 
やはり孝子の結構無理して違うキャラになろうとしている感じが痛くもあり、そんな孝子の痛さを感じたり「未来」話を心の底では信じられない沙織の気持ちとか、何だか「あー若いなあ。青春だなあ」と前半は何処か俯瞰した気持ちで読んでいたのですが・・・
 
孝子が修正するべき過去=沙織の現在でもあるのだけど、その現在でもやはり未来と変わらない事実にぶち当たった時、自暴自棄になってから沙織と仲たがいをして距離が出来て・・・その後半ですね。そこからが何とも胸が締め付けられるようなきゅうっとした苦しさに襲われます。
 
もし自分があの底辺女子高生時代に戻ったとしたら・・・果たして孝子のように「過去」の自分を変えようと動けるだろうか?――答えは否。
多分同じ人生を繰り返し、やっぱり冴えない高校時代を送るのではないか?と思う。
 
作家を休業し、一度は実家に帰り、就職もせずという豊島ミホさんの姿と、孝子の姿がどうしても重なります。
それでもやはり・・・豊島さんは凄いなあと改めて思うのです。
あんなに行動力のある人はいないのではないか、って。
 
孝子が過去に経験する事がなかった「男女間の友情」「クラスメイトとの恋」なんかは、一部のカースト上位の人間にしか許されない特権みたいなもの。
だからこそ、孝子と沙織、ちひろと村山の4人行動が何だかものっすごく羨ましくキラキラしてみえました。
 
たまに方言か?と思う言葉などがあって意味が分からず戸惑ったり、登場人物達の会話が完全に豊島さんのブログのノリで軽いのがやはり気になるものの、再読しても読後にじわじわとやってくる余韻や、どうしようもないくらい惹きつけられる魅力は変わりませんでした。
 
次に再読する頃には30代になるのかな。
また違った気持ちで読めると思うので楽しみです。
(5点
 
単行本版感想