No-music.No-life

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図書室で暮らしたい

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「好きなものが多すぎて、ごめんなさい!」

作家になる前から、作家になってから、
夢中で追いかけてきた小説、漫画、アニメ、
音楽、映画、美味しいもの……etc.
すべてが詰まった、読むと元気になれるエッセイ集!
 
辻村深月さんのエッセイ。
 
辻村さんのエッセイは確か「ネオカル日和」以来でしょうか。
 
辻村さんは私にとって3本指に入るくらい大好きな作家ですが、どんなに好きな作家でもエッセイが面白いと思わないというのが私のダメなところで。
 
心から楽しく大好きな本と思えたのは、豊島ミホさんの「底辺女子高生」「やさぐれるにはまだ早い」、朝井リョウさんの「時をかけるゆとり」くらいでしょうか。
そこそこ楽しめてもやっぱりふーん、というくらいの楽しみ方しかできない人間であります。
 
私もいわゆるネオカルチャー、とりわけ音楽と邦画はかじっていたので詳しいつもりなんですが、アニメや少年漫画や実は本も20代になってからじっくり読むようになったレベルで、子供の頃に絵本を読んでいた記憶がありません。
 
音楽や邦画でさえも、詳しい人に比べたら当たり前に知っているようなレベル。
まして本など読み始めてそんなに経っていないせいもあり、小学生の頃から小説を読んでいたという友達を前にしたら情けないほど知らないことばかりです。
 
趣味は多数あるのに、実はつきつめてこれだけは負けない!というものがない自分にとって、こんなにも好きな事や興味のあることが沢山あり、且つどれも鬼のように詳しいという辻村さんが眩しい!
 
ネオカル日和もそんな感じで眩しいと思うところで止まってしまうような印象で、今回もエッセイと聞いて読もうか読むまいか迷っていた部分もありました。
 
とりあえず図書館で予約して借り、読んでみました。
 
結果、辻村さんがもっと好きになりました。
 
正直なところ、新聞に連載していたエッセイについては、ちょっと優等生的な、悪く言ってしまえば良いことが書いてあるという印象で。
辻村さんは好きだけどやっぱりエッセイは好きじゃないなあ、程度の感想でした。
 
しかしそのあとからの、好きなものに対するエッセイ。
そこになんと、昨日も本の感想で触れた「リリィ・シュシュのすべて」があるではないですか!
 
しかも「「僕にとって、リリイだけがリアル」を見た瞬間に、全身に鳥肌が立った」という文字。
 
全く同じでびっくりしました。
あれは高3か卒業して間もない頃だったでしょうか。この映画に出会わなければ、単館系の映画なんて知らなかったし、この映画に出会ったからこそ、マイナーな邦画を沢山観にいくようになったんです。
 
同じようにこの映画に衝撃を受けた人が、自分の好きな作家さんだなんて!という喜び。
 
また、帰省する時に「時間がある」というあの状況。
そしてハードカバーの上下巻の上巻がそろそろ読み終わるタイミング。
そんな時に重くても上下巻を持って帰るという所とか!もう分かり過ぎてうんうん頷いてしまいました。
 
その後も、母親となった辻村さんが子供のことに触れたり、直木賞受賞後の事にも触れています。
 
何より嬉しかったのは、自身の作品の感想を書いたものが収録されているところ。
 
大好きな「子どもたちは夜と遊ぶ」の浅葱を、いつか書きたいと思っていると綴られている文章を見て嬉しくてたまらなくなりました。
なかなか簡単に書けない感じではあると思いますけど(設定的なものもありますし)、やっぱり大好きなキャラクター。いつかで良いので、その日が来るのを楽しみに生きて行こうと思います。
 
という訳で全体的に見てとてもうれしくなるようなエッセイでした。
気持ちもほっこりとした優しい気持ちになれ、特に辻村さんのおじいちゃんおばあちゃんとのエピソードは良かったなあ。
 
辻村さん、兄が長い事単身赴任をしていた山梨県石和町が地元だったのですね!!
山梨とは知っていたけれど不思議な縁を感じます。数回しか訪れた事はないし、接点といっていいのか分からないほど遠い接点ですが(笑)
 
年齢も近く、誕生日も近い。
辻村さんのように私も小説を書いてみたりしたこともあるけれど、辻村さんのように小説を届ける側にはなれなかったです。それでもこうして自分が面白いと思える本を届けてくれる作家に出会えたことが嬉しい。
 
そう思える素敵なエッセイでした。
(4.5点)