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星やどりの声

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亡くなった父が残したもの……喫茶店、星型の天窓、絆、そして、奇跡。三男三女母ひとり。ささやかな一家が出会う、ひと夏の奇跡の物語。家族が"家族を卒業する"とき、父の残した奇跡が降り注ぐ……。


朝井リョウさんの最新作です。
 
「桐島、部活辞めるってよ」でちょっと良いかも、と思い「チア男子!」で結構好きかも!に変わり、待望の本作。最新刊でございます。
 
あーもーなんか、凄いよこの人。
著者の写真を見ると、本当に現役大学生の今時の若者、という感じなのに・・・何なんだろう?
この凄いピンポイントで、私の心をわし掴むこの感じは・・・。
 
まずね、文章が好き。
とにかく読みやすく、テンポが良い。
会話は今時の若者の会話がポンポンと飛び出して、リズミカルでとにかくすいすい読めちゃう。
それでいて、10代(小学生)~20代(社会人)の男女が語り手になっても、どれも違和感がないのね。
あー確かに10代の男の子ってこんなだよなー、そうそう女の子ってこんな面倒くさい生き物なのよ、とか。
思春期の真っただ中にいる男女、将来を見据えて動こうにも前に進めない大学生、酸いも甘いも知り尽くした社会人。
 
「あー分かる」
 
って、ストンと言葉が、思いが胸に響いてくるんです。
凄く自然に。
図々しくないし、飾らない。ありのままで自然。
だから好きなんだろうな。
 
癌で父親を亡くした6人の兄弟姉妹。
カメラをいつも持っている小学生らしくない末っ子の真歩、双子の高校生三年生の小春とるり、やりたい盛りの高校一年生の凌馬、就職が決まらない大学四年生の光彦、社会人で既婚の長女・琴美26歳。
父親が残した純喫茶「星やどり」を切り盛りする母。
 
雨から身を守る事を「雨やどり」になぞらえて、今にも落ちてきそうな星の光を受け止めるための「星やどり」。
http://www.kadokawa.co.jp/image/spacer.gif
そのネーミングセンス!
 
そして、歳の分だけ亡くした父親との思い出の多さや深さが違っていて、兄弟姉妹のそれぞれが抱えている気持ちが痛いくらいに伝わってきます。
 
ラストの琴美の章。
一番ぐっときたな。
やっぱり自分も長女だからかな。しっかりしなくちゃ、と父親変わりに妹や弟達を見守って来た姉が一世一代の告白をするまでの葛藤。
胸が熱くなってしまいました。
 
朝井さん、平成生まれの大学生ですよね?
なんでこんな素敵な作品を書けるんだー!!凄いぞこのヤロー!(笑)
 
そして私は、とても朝井さんの作品が好きなのだとやっと自信を持っていえそうです。
心に残る、とても良い作品でした。