「青葉おひさまの家」で暮らす子どもたち。
夏祭り、運動会、クリスマス。そして迎える、大切な人との別れ。
さよならの日に向けて、4人の小学生が計画した「作戦」とは……?
朝井リョウさんの本です。
直木賞を受賞した「何者」の衝撃さめやらぬなか、最新刊はまたがらりと趣向を変えてきましたね。
アンソロジー小説で読んだ時に、続きが読みたいなあと思っていたものだったので、一冊の本として発表してくれたことがとても嬉しいです。
今まで主人公として描かれてきたのは、高校生だったり大学生だったり、若者が主人公の話でした。
軽快な会話、現代的なリズムやセンスが読んでいて心地よく、時に深い余韻を残し、刺さるような読後感だったり、とっても爽やかな気持ちになる話であったり。
しかし今回は、全体的にとてもシリアス。
とある施設で暮らす様々な事情を抱えた子供たちの話。
実の親と折り合いが悪かったり、両親を亡くしたり。
血縁でもうまくいかない関係、けれどその関係に少しでも明るい未来を描いては、期待を裏切られる。
とてつもなく、痛いです。
最初から最後まで、終わりの予感がずっと漂っている感じ。
ラストもきれいにまとまっているようでいて、実は子供たちの誰もが目の前の問題が解決していない。
むしろ、問題はさらに山積みで、この子達の未来には明るいものなど見えてこないのではないか?と不安すら抱きます。
けれども、微かに芽生えた希望、本当に僅かなものかもしれないけれど、そういう明るい未来を信じていきたい、と思えるラストでした。
朝井さん、こんな話もかけるのですね・・・!(そして相変わらずのタイトルのセンス。でも、このタイトルはどういう意味なのかな?)
読むたびファンになっていきます。すごく、この作品の全体的な雰囲気が私好みでした。
中学生になる太輔は、これから成長し、どう変わっていくのだろう。
どうか幸せな未来があることを願わずにはいられない読後でした。
(5点)