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東京ロンダリング

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死んだ人の部屋に住むのが彼女の仕事
自らの不貞で離婚をし、戻るべき家を失い事故物件に住むことを仕事にしたりさ子。移り住む先々で人と出合い、衝突することで彼女は何を手放し、何を取り戻したのか。人生再生の物語。


原田ひ香さんの本です。
 
原田さん、初めて読みましたがとても自分好みでした。
ユーザレビューが異様に低いけど(☆1つか満点かと凄い差)、私は☆5つあげたいくらい良いと思いました。
 
元々新聞の広告欄でしたかね、あらすじを読んだだけで「読みたい!」と思わせるインパクトがある作品でした。
この広い東京という街には、沢山の人が集まるけれども・・・と同時に、必ずその対極にある「死」だって多く発生しているはず。
数多ある不動産物件で、変死・自殺・孤独死等々、死者の出る部屋だって表沙汰にはなっていないだけで、きっと沢山あるのではないだろうか。
 
本作の中の不動産業者が言いますが、死者が出た部屋を次の入居者に貸す時には、必ず前住人について何があったかを説明する義務があるのだそうです。
ただ、例えば死者が出た部屋を、誰かが借りて、また別の誰かが入居する時には説明の義務はないのだとか。
 
その中間にいる、死者が出た部屋に住み、その次の入居者へ引き継ぐための、いわば橋渡し的にロンダリングというものが存在し、この主人公の女性(離婚歴あり・器量よしの32歳)はそのロンダリングを仕事にしています。
 
住む期間は数週間~1ヶ月でも、次の入居者には死者が出た部屋であると伝える義務はない。
家賃を安くしても入居者を募っても、自らそんな部屋に住みたいという輩はなかなかいませんよね。
凄い良い線をついてきた商売だなあと思います。
 
そういう部屋にありがちなホラー要素は全くなくて、離婚経験をしてから生きる気力を何処か亡くしかけている淡々とした主人公が、自分の生き方を見つけるまでが描かれます。
 
「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように」
 
をモットーに生きていけば、嫌われないという雇い主からの言葉を守りながら、しかし本当の自分の居場所や生き方を見つけて行く主人公の心の変化にとても共感を持ちましたね。
 
定食屋の息子がとても良いです。
押しつけがましくないけど、相手の事を凄く考えてくれているんだなと分かる距離感が持てる人。
 
淡々とした語り口ですが、私には凄く好感を覚える文章でした。
テーマも非常に興味深く、面白かったです。