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てふてふ荘へようこそ

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ある街の高台に佇むおんぼろアパート「てふてふ荘」。敷金礼金なし、家賃はわずか月一万三千円、最初の一ヶ月は家賃をいただきません。この破格の条件の裏には、ある秘密があって……。


乾ルカさんの本です。
 
乾さんの新境地!ですね。
こういう作品も書くんだなあーと、新鮮な印象を受けました。
 
乾さんと言えば、独特の世界観・・・どちらかと言えば、ダークな印象のある作品を書かれる印象があります。
しかしこの新作では、タイトルからしてほんわかした雰囲気を想像できますよね。
まさにその通りのほんわかなお話・・・と言ったらちょっと語弊があるかな。
 
だってこの「てふてふ荘」、各部屋に1人(?)ずつ、もれなく地縛霊がついてくるのですから!
 
家賃は月13,000円、初月家賃無料。
古いアパートだけれど、掃除が行き届き、時々大家さんの美味しい手料理がふるまわれる。
そんな高待遇の物件。
条件の良さにつきものの「曰くつき」の正体は、一晩眠った後、朝にやってきます。
 
目が覚めると、部屋に見知らぬ人間がいることに気付きます。
それは若い女の子だったり、美少女と見まがう少年だったり、子供やイケメンのお兄さん、粋なおっちゃんに38歳の美人等々。
 
こんなにもくっきり、はっきりと顔かたちが見える地縛霊がいるのか!と思うくらい、自然にてふてふ荘にいついている幽霊達を成仏させるには、幽霊に触れること。
普通に触れようと思っても決して触れる事ができない彼や彼女らに触れるためには、幽霊という概念を失くして本気でぶつかろうと思うこと――
 
好きになった女の子がことごとく死んでしまう男の子、可愛くもなく取り立てて自慢できることもない30歳の女性、詐欺師で捕まった前科から、就職活動に失敗し続ける男性、人との関わりを避けながら絵を書き続ける男性、一度はてふてふ荘を出て行きながら、病気の回復と共に再び戻ってきた男の子、死んだ兄に花を手向けるために一時的に入居した女性――
 
6部屋に1人ずつ霊が住み着いているので、各々が自分自身と闘いながら、成仏させていきます。
 
個人的には就職活動が上手くいかない元詐欺師の男性の話はぐっときましたね。
 
まさか大家さんまで・・・・!という驚きもありつつ、乾さんこういう路線でも十分魅せてくれます!
 
幽霊が住んでいるアパートなんていうと、香月日輪さんの「妖怪アパートの優雅な日常」を思いだしますが、またそれとは趣が異なって、大切なものに気付かせてくれるような温かい話でした。
 
実際に幽霊がいる曰くつきのアパートがあったら住むのを躊躇ってしまいますが、こんな「てふてふ荘」だったら住んでみたいかも?