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迷宮遡行

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平凡な日常が裂ける―。突然、愛する妻・絢子が失踪した。置き手紙ひとつを残して。理由が分からない。失業中の迫水は、途切れそうな手がかりをたどり、妻の行方を追う。彼の前に立ちふさがる、暴力団組員。妻はどうして、姿を消したのか?いや、そもそも妻は何者だったのか?絡み合う糸が、闇の迷宮をかたちづくる。『烙印』をもとに書き下ろされた、本格ミステリーの最新傑作。


貫井徳郎さんの本です。
 
デビュー作の「慟哭」を読んだのが先日、初めての貫井さんでございましたが、デビュー作にして文章の上手さと、ストーリーの巧みさに惹かれ、ぜひとも他の作品も読んでみたいという気持ちだったのです。
 
という訳で、早速また借りて来ました。
 
レビューは結構低めのようですが、個人的には凄く面白かったと思います。
この作品は元々「烙印」という小説を全面改稿というか、その小説を元に設定やストーリーをがらりと変えて書き下ろされた作品のようなのです。
それを知らずにこの作品から読み始めたのですが、私としてはこの主人公の頼りなくて情けなくて、なんか冴えないけれども妻を想う気持ちは人一倍ある、みたいなキャラクターは好感を持てました。
登場人物がそれぞれ深みがあって、脇役に至るまで何だかやけに温かみがあるのですよね。


自分には釣り合わないくらいに美人な妻の絢子が突然失踪。
絢子の行方を捜すうちに巻き込まれていく事件が、複雑に絡み合って行き、やがて真実が明らかになっていき――
 
結果的に、幸せな結末とはいかなかったのですが、合間合間に挟む妻と夫の何気ない日常の会話(過去のエピソード)がとてつもなくほんわかして幸せそうなので、現実が悲しくなってしまいますね。
疾走感溢れるストーリーに目が離せませんでした。
個人的には結構ハードボイルドな感じがしたのですが、どうなんでしょう?
 
私としては、「慟哭」路線の暗くて重くて余韻が残るタイプの作品も好きだけど、これくらいコミカルな主人公とぐいぐい引っ張っられるストーリー展開の本作も捨てがたいと思います。
まあ、確かにあの凄いデビュー作のあとの二作目ともなると、色々な意味で期待されて大変だったのでしょうねえ。
私はこの作品、面白かったと思います。