2009年、秋。翌年6月から施行の改正貸金業法がもたらすのは、借金からの救済か、破滅か―四十過ぎの翻訳家、吉野解は貧乏学生の頃に下宿していた神保町の古書店「泪亭」の二階で謎の美女、白井沙漠と出会う。裕福な家庭に育った妻とは正反対の魅力に強く惹かれ、粗末な部屋で何度も体を重ねる。しかし、沙漠が解に借金を申し込んだことから「悲劇」の幕があがる―。
桜庭一樹さんの本です。
独特の桜庭節全開の、お得意の美女登場の「私の男」みたいな雰囲気の話でした。
とても読みやすく、分厚くてもそんなに苦にはならなかったのですが、結局何だったのだろう？と最後まで作者の言いたい事が分からないような、薄ぼんやりとした印象が残ります。
タイトルからミステリものと期待していたせいもあるかもしれないけれども、実際は得体の知れない美女・砂漠と中年男解の出会いと、まあある人物がバラバラ死体にされるまでのことが書かれているのですが・・・
プロローグの文章を考えると、犯人との違和感がありますね。
そして、砂漠の過去が断片的に語られ、悟の過去の深い事情などにも少しふれるものの、それが凄く中途半端なんですよね。
結果、バラバラ殺人という大きな事件が起こっているのにも関わらず、淡々とした印象なのです。
最後まで悲しくもないけれど、ただ「薄ぼんやり」としたもやもや感が残るような。
桜庭さんは文章が巧みなので勿論読みやすくてそれなりに楽しめるのですが、どうも登場人物（悟の娘以外は）がどれも相いれない感じだったのですよね・・・。
いや、悪くはないのですが・・・タイトルでミステリと思って買うとちょっと拍子抜けかも。
