No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

空飛ぶタイヤ

イメージ 1
 
トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも…。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族…事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともにたったひとつの事故の真相に迫る、果てなき試練と格闘の数か月。


池井戸潤さんの本です。
 
直木賞を受賞した「下町ロケット」で一躍話題をさらった作家さん。
下町~で初めて池井戸さんを知り、凄く面白かったので何作か読み始めたのですが・・・本作もとても良かった!!
 
これは、下町ロケットにも通じるものがあって(展開としては凄く似てると思う)、この作品があったからこそ下町ロケットが出来上がったのではないか、と思えるくらいの完成度の高さです。
 
 
冒頭は、母子の死傷事故が起こり、悲しみに打ちひしがれる被害者の夫の姿が描かれます。
一体どんな展開になるのだろう?とドキドキしながら読み進めて行くと、被害を起こした運送会社・その運送会社が使っていたトラックの製造元の財閥企業・財閥企業との繋がりがあり、融資を依頼される大手銀行のそれぞれの視点から物語は展開していきます。
 
従来、絶対に起こり得ないと思われていた大企業社製のトラックの欠陥。
その欠陥の隠ぺいが、人が一人亡くなっているというのに、簡単にひねりつぶされようとしている様は、読んでいるこっちも憤りを隠せませんでした。
現実に●菱自動車の問題が記憶に新しかったので、被害を起こしてしまった運送会社は、きっと無実を勝ち取ってくれると分かっていても、それでも被害者から訴えられたり、学校では子供や親から非難を浴び(子供はいじめに遭い)、古参の従業員は辞め、大手取引先から取引をキャンセルされ、銀行からは融資を断られるどころか返済を迫られ、世間の非難を浴びて信用を失墜することの大きなダメージがこれでもかこれでもか!と運送会社の社長の身に起こるのです。
 
それを救済してくれたのは、トラック事故を起こしたものの「整備不良」で片付けられた過去を持つ別の運送会社の役員の証言。
そこから融資をしてくれる銀行が出てきて、トラックの欠陥を隠ぺいしていた疑いを持つ週刊誌の記者が現れ、少しずつ事態は好転していくように見えるのですが――、一筋縄ではいきません。
 
後半のあと数十ページというところまでいかないと、気を許せない展開です。
大企業の腐った体制、根っから大企業が悪いとは思ってもいない警察の捜査、中小企業だと思ってなめてかかるなよ!と思わず言いたくなります。
 
相変わらず、この社長と社員との絆、自分の家族だけではなく、社員のこと、社員の家族のことまで考えてくれる社長の姿には泣かされました。
 
また、大企業の中でも勇気をもって悪をただそうと内部告発に挑む男の姿や、不正に真っ向から非難できる男の姿なども描かれて、本当にサラリーマンって凄い!と思うのでした。
 
ろくなキャリアや経験がないと、30歳過ぎたら転職も難しいと言われる女に比べて、30歳ではまだまだ若くやる気にみなぎっているサラリーマン。
男社会の厳しさ、そして信じる道に向かって突き進んで行く格好良さが描かれ、大変満足して読み終えました。
 
池井戸さん、はまりそうです!