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ブラック・ジャック・キッド

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手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』をこよなく愛する小学生の和也。「患者」を探して団地を駆け回る毎日にも、否応なく現実ってやつが影を落とす。両親の離別、転校、いじめ…。そんな和也に、少女マンガに夢中の宮内君と、眼鏡を外すと超綺麗な泉さんという親友ができて…。恐るべき新人が描く、ほろりと切ない青春小説の傑作!第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。


久保寺健彦さんの本です。
 
「空とセイとぼくと」が前からタイトルに惹かれて気になっていたこともあって初めて読んだ作家さんだったのですが、思いがけず読みやすい文章を書く方であることを知り、他の作品も読んでみようと思っていたのでした。
 
という訳で、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作である本作を手に取ってみました。
日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞と言えば、有名どころでは畠中恵さんの「しゃばけ」、私の大好きな作品でもある、越谷オサムさんの「ボーナス・トラック」等がある訳ですが、この作品もなかなか良かったです。
 
私、手塚治虫作品にはそこまで感化されなくて(ストーリー云々より、絵柄が少々苦手らしい・・・)、だからブラックジャックもあんまり詳しくありません。
 
ただ、やはり有名な漫画ということもあって、どういう人物であるか、くらいの知識はあります。
そんなブラックジャックになりたいと思っている少年が主人公なのです。
 
ブラックジャックをまねた髪型、オペごっこ、走り方――
クラスにこんな子がいたら少々ドン引きしてしまいそうな(!)奇抜な格好をしている少年ですが、小学校低学年の気安さから、案外周りに溶け込んでいる事に驚きます。
 
少々突拍子もない設定についていけないかも・・・と思っていたのに、いつの間にかページをめくる手が止まらなくなっていて、一気に読んでしまいました。
 
自分は自分で、決してブラックジャックにはなれないと知ってしまった、大人になった主人公が過去を回想する形で物語が展開していくので、無垢で何者にでもなれると信じて疑わなかった少年時代の幼さ、気恥かしさみたいのがこれでもか!これでもか!と伝わってくるのです。
 
私はやはり女なので少年の半分の気持ちも理解できなかったけれども、これは・・・いい(年齢の)大人になった人が読んだら、何とも恥ずかしくて、だけど懐かしくなるような話しなのではないかなあと思います。
また、特にブラックジャック世代の人にはたまらないのではないでしょうか?
 
まだ久保寺さんの作品は2作しか読んでいないので分かりませんが、少年を描くのが凄く上手い人だなあという印象です。
しかも、何だか照れくさくなるような、本当に無垢であどけない少年を描くのが、ね。
 
他の作品も読んでみたいと思います!