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ボーナス・トラック

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こいつ、なかなかいいやつなんだ、幽霊であることを除いては…ハンバーガーショップで働く「僕」は、ある雨の晩、ひき逃げを目撃したばかりに、死んだ若者の幽霊にまとわりつかれる羽目に。でも、なかなかいいやつなんだ、アルバイトの美少女にご執心なのは困りものだけど…。「僕」と幽霊がタッグを組んだ犯人探しの騒動を描いて絶賛された、ユーモアホラーの快作登場!第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。


越谷オサムさんのデビュー作です。
 
越谷さんは、先日読んだ「金曜のバカ」で初めて知った作家さん。
全然期待していないで読んだら、思いのほか良い作品だったので、地元の図書館に置いてあったやつをとりあえず全部借りてきたのです。
 
この本を途中まで読んで、ようやくこれが越谷さんのデビュー作であると気付きました。
 
というのも、もう冒頭からハラハラドキドキさせられて、ぐいぐい物語に引き込まれていったからです。
そうなんです!
 
デビュー作なのに、面白い!
文句なしに面白かったんですよ!!
 
作家というのは、デビュー作はやっぱりデビュー作らしく拙い文章であるとか、ちょっと展開が甘いかな・・・でもデビュー作だし、って納得できる感じの作品を書く人と、デビュー作は微妙でも後に何作も何作も書いていく事でどんどん腕を上げていくっていう人と、デビュー作からして微妙でやっぱりなんか微妙だな・・・っていう人と、デビュー作からプロ顔負けの作品を書いちゃう凄い人・・・・がいたりと様々だと思うのです。
 
そんな中で、プロ顔負けって言ったら語弊があるかもしれないんですけど、
私の中ではデビュー作から面白かった作家という位置づけになりました。
 
文章はよく考えてみたら粗もあるのかもしれませんが、私は全然気になりませんでしたし、何より話の展開がどうなるのか気になって気になって。
 
結構分厚くて長い話であるにも関わらず、最後まで面白いな、ドキドキするな・・・っていう感じが途切れる事なく読み終える事ができました。


 
仕事に追われ、毎日がただ同じ事の繰り替えしという疲れた日々を送っているサラリーマンの草野。
仕事帰りの道で、ひき逃げされ、即死したと思われる若者の死体に遭遇――
 
必死で救命処置を施すが・・・既に事切れた後。
 
動転しながらも警察へ通報するが、ふと聞こえる何かの幻聴――
 
疲れのせいかと思っていると、とうとう幻覚のせいなのか、若い男の姿が見えるようになった。
 
その男は、自分がひき逃げされた被害者・横井亮太であると言う。
幻覚と会話が出来るようになったと亮太の言う事を取り合わない草野だったが、何故かバイト先の南にも亮太の姿が見えるという事が分かり・・・・
 
草野、南、亮太でひき逃げ犯の足取りを追いながら犯人捜しを始めるのだが――


 
死んでもなお、現世にとどまり続ける幽霊が出て来ます。
 
亮太のように悲壮感の欠片もないおちゃらけた幽霊だけではなく、のっぴきならない事情を抱えた幽霊たちも。
20歳にして未来を永遠に奪われた亮太は、考えなくてもかなり悲惨で悲し過ぎる人生を送っている。
だけど、この亮太の能天気な明るさに何だか救われるのです。
 
日々を空しく過ごしていた草野が、この亮太との出会いを通して変わっていく様もとても好感が持てました。
 
思いがけない良作に出会えました。