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最悪

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お先まっ暗、出口なし それでも続く人生か
小さなつまずきが地獄の入り口。転がりおちる男女の行きつく先は?

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。
比類なき犯罪小説、待望の文庫化!


奥田英朗さんの本です。

 
この本を読んだ友達が、「もうね、本当に『最悪』な小説だった・・・」と意味深に言い、これを貸してくれた上司が「これは旅先で読むものではないね・・・」と複雑な表情を浮かべていた、問題小説であります。
 
出だしから始め、4分の1くらいまでは範囲内の重さ。
これくらいであれば全然私的には余裕だわ、と思っていたら・・・凄い。
私は基本的に常に最悪な状況を考えてショックを少しでも和らげようとするところがあるのですが、これは凄かったですよ。
私が想像した通りの悪い展開にどんどん転がって行くんですから。
 
特に一番リアルに描かれていたのが、町工業の社長の川谷の話ですね。
私も昔工業団地の中の職場に身を置いていた事があるので、もしあの場所にマンションなんか立ったら、こういうことになるのか・・・と、リアル過ぎてぞっとしました。
 
友達感覚、というか会社対会社ではなく、個人対個人で会社の取引や設備投資などが成り立ってしまうところが怖い小企業。孫請けの孫請け。
上手い話には裏がある。そんなこと読者の誰もが分かっているのに、何処までお人よしなんだ川谷!とハラハラしながら思っていると、終盤で川谷が・・・
 
資金の申し込みと、銀行が繋がった時、銀行と現金強奪が繋がった時、あまりにも予想できる「最悪」な展開に、読んでいる間、ただただ落ち込むばかりでした。
 
今週は特に仕事でかなりやられていたので、とどめを刺された感じです。
 
ただ、銀行員の子はもうちょっと最悪なパターンを想像していたんですけどね。
同僚の女の子に秘密にしていた事がバレて、怪文書を流していたのは実はその子だったとか。
案外さらっと終わって安心しましたが(笑)
 
ただ、銀行員の子の妹が、何故そんなに姉に対して屈折した気持ちを持つようになったのか、とかそういうのが一切なかったのが消化不良でした。
 
結末に至るまで、あんなに最低な展開だったのに、結末は案外すんなりとまとまっていたことが意外でした。
 
確かに「最悪」で、タイトルがこれほどマッチした小説はないと思いますが、最後まで読めば少しは最悪な気持ちも落ち着きます。
作品的に駄作どころか、力作だと思います。
 
今まで数冊読んできた奥田さんの作品のどれもと作風が違っていて、文章は読みやすいのでなかなかの意欲作ではないかと。
 
ただ、気持ちが沈んでいる時に読むと、時折死んだ方が良いのではないかと思えてきます。危険です。