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てるてるあした

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親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代。そんな彼女の元に差出人不明のメールが届き、女の子の幽霊が現れる。これらの謎が解ける時、照代を包む温かな真実が明らかになる。不思議な街「佐々良」で暮らし始めた照代の日々を、彼女を取り巻く人々との触れ合いと季節の移り変わりを通じて鮮明に描いた癒しと再生の物語。


加納朋子さんの本です。
 
加納さんと言えば「てるてるあした」のイメージ、というくらいに印象が強かったのですが、何となく有名な本作(ドラマ化もされていたんですよね)を読む機会を逃したままになっていました。
 
恐る恐る手を取りましたが・・・
冒頭からあまりにも過酷で救いのない設定(意外とあっけらかんと話は進むけれども)に同情を通り越して、照代の両親に怒りすら湧いてきました。
 
借金まみれで学校に通うのさえ苦になる――とどっかで聞いたような設定だなあと思って共感した部分はあるのだけれど、私立受験するお金がなくて滑り止めを受けられなかったものの、高校は卒業できただけまだマシなのでしょう。。


中学卒業後、必死で勉強して合格した進学校への入金手続きがされておらず、高校入学を断念せざるを得なくなった照代。
挙句に両親は照代を一人、「遠い親戚」がいるという街へと旅立たせる。
 
誰ひとり知っている人もいない心細さの中、辿り着いたその街の人間は、照代にとっては苛々するばかり。
挙句に頼りにするほかないその人物は、「魔女」みたいな風貌の久代はとにかく厳しくて――
 
 
確かにあんな両親の子供として不遇な時代を過ごしてきた照代だからこそ、最初の頃の全てに対して斜に構えてひねくれている感じは致し方ないのだろうと納得してしまう。
それでも、久代の「甘えさせ方」と照代の「甘え方」がどちらも不器用で、でも不器用なりに両者が歩み寄ろうとしている感じ、少しずつ変化していく関係性には微笑ましくなりました。
 
ラストは切ないけれど、それでも一歩大人になった照代の姿は最初の頃とは比べ物にならないくらいに頼もしい!
 
加納さん、文章も上手くてとても読みやすい。
何より読後感が爽やかです。