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W ダブリュー ――二つの夏

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二つの物語が交わった時、驚愕の事実が! 一人暮らしのナナミ、元ヤンキーのクニコ。ある日、クニコがカフェでメールを送ったところ・・・。ドメスティック・サイエンスの旗手が放つ驚愕の書下ろし長編。


永嶋恵美さんの本です。
 
前回初めて読んだ「転落」でもすっかり騙されたのですが、その時に割と読みやすいという印象を受けたので最新作?の本作を借りてみました。
 
「転落」は、どんでん返しも勿論だったのですが、後味が悪い感じのインパクトのある作品でもありました。
それはそれで嫌いではないのですが、永嶋さんの描く淡々とした語り草は、何だか自分にはとても心地よいのです。
 
その心地よさを本作でも十分に感じながら、意味深に繋がる二人の女の子。
 
元ヤンで、今は働いている「クニコ」がほとんど定型文ばかりのメールのやりとりをしているのは、小学生の同級生だった「ナナミ」。
 
会う事はなく、電話で会話することすらない、メールだけのやりとりをしている。
 
「ナナミ」は、大学生として勉強に追われる日々を送っている。
元教育実習生だった既婚者の先生と、時々密会して体を重ねたりする一方で、血の繋がらない義理の祖母が入院し、お見舞いに行く度に弱って行く祖母の姿を見せつけられて、そう遠くはない祖母の死の恐怖を感じてもいる。
 
そんな「ナナミ」が偶然出会ったのは、施設から抜け出してきたという少女・セリ。
複雑な家庭環境から逃げ出した家出少女のセリを、何故か世話を焼いてしまう「ナナミ」。
帰る場所のないというセリを、入院している祖母の家(居候の家)へ泊める事になったことから、短いけれど奇妙な共同生活が始まったのだが――
 


 
セリが言っていた「おねえさん」が、クニコの章と繋がっているのだろうことは予想できました。
でもまさか・・・・そうかあ、この展開だとは。
 
どうしてナナミがこんなに忙しそうだったのかとか、病院で知り合った男の子・リョウ君との会話での違和感とか、些細な所にヒントはごろごろ転がっていたのに、まさかこうなるとはなあ。
 
今回もすっかり騙された私は、謎が解けるところでもう清々しいくらい騙されている事に気づいて、何だか爽快感で一杯でした。
そして本作はハッピーエンドで締めくくられていることも、その爽快感を更にプラスしたような気持ちです。
 
永嶋さん、やっぱり良いですね!
他の作品も読んでみよう。