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空をつかむまで

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膝の故障で得意のサッカーを諦めた優太は、廃校が決まった田舎の中学に通う3年生。無理やり入部させられた水泳部には、姫と呼ばれる県の記録保持者と、泳げないデブのモー次郎しかいない。3人は、なくなってしまう美里中学の名前を残すため、大切な人のため、優勝すべくトライアスロン大会に挑む。市町村合併を背景にまばゆい青春の葛藤と疾走を描いた少年少女小説。第22回坪田譲治文学賞受賞作。




関口尚さんの本です。

ああ、私、やっぱり関口さんの小説が好きだなあと実感させられた本でした。

この本は単行本で読んでいるのですが、文庫化したら買おうと思っていた作品だったのです。

関口さんの本は、なぜか不思議なのですが読む度に感じ方が変わるんですよね。
単行本で読んだものを、文庫化されて再読したりすると、最初に読んだ時と違った感想を持ったりするのです。

この本もそうでした。
最初に読んだ時は、単純に「トライアスロン」に挑む少年たちのひと夏の青春劇という印象を受けて、やけに爽やかさを覚えて、大会の結末に感動した記憶が残っているのですが、今回は違いました。

トライアスロンの話を描いてはいるけれど、だけど実は友情や中学生故の悩みや葛藤、抱えている不安(家庭環境、トラウマなど)が描かれていて、何重にも味わって読める作品になっているのです。


中学生なのに・・・早いよーその展開は・・!と思う危うい恋愛とか、どうにもならない家庭環境への不満や葛藤とか、今時の中学生というのは、多分私が中学生だった頃よりももっと生きにくい世界を生きているのでしょう。

携帯もなかった時代。
だけど、私が中学生だった頃は、今よりもっと生きやすかった気がしてなりません。


そういった意味でも考えさせられる本作です。

中学生や高校生の少年少女を描いたら、関口さんの右に出るものはいませんよ!

何だろう、読みやすいのに、そして決してすべてが丸く収まるハッピーエンドというわけではないのに、この読後感の良さは何なんでしょうね。

関口さんは自分の住んでいるところからそう遠くない所の出身ということで、個人的にかなり推している作家さんです。

ぜひお試しあれ!