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空白の叫び<上>

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「普通の中学生」がなぜ殺人者になったのか

久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬だが、決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。神原尚彦は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。〈上巻〉第一部ではこの3人の中学生が殺人者になるまでを、その内面を克明にたどりながら描く。その3人が同じ少年院に収容されて出会うのが第二部。過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されていく中、3人の間には不思議な連帯感が生まれる――


貫井徳郎さんの本です。
 
重い・・・苦しい・・・読んだ後の何とも言えない後味の悪さ。
なのに、続きが気になって、これ以上悪い事が起こるのだろうか?という不安。
だってまだこれ、上巻なんだもの。
下巻も上巻と同じように分厚い。
 
下巻では少年院から出所後の出来事が描かれるようだけど、現実は更に厳しいのだろう。
 
貫井さんの圧倒的な筆力で、破滅へと向かって行く「普通の」中学生が殺人を犯してしまうまでの第一部から、少年院入所生活での理不尽な暴力やルールに振り回されていく第二部が上巻では描かれます。
 
特に神原は、第一部では「普通」の中学生というくくりであれば大人しくて目立たない地味な心優しい少年というはっきりとした像が出来上がっていただけに、理不尽な苛めやルールに対する憤りや、リンチの恐怖から他人へ協力を求めていく様子が凄く惨めで、「そんな事していたら足元すくわれるよ!」と読んでいる側はハラハラしているのに、元々が優しい子故に自分の境遇を分かってくれる理解者がいるのではないか?と周囲に助けを求めようとしては追いつめられていく様が痛くて仕方ありませんでした。
 
そういった意味で、精神的に崩壊した(上巻では、と思われるとしか言いようがないけど)葛城の転落も物悲しかったけど(しかもきっとそうなるだろうと思われる精神的においつめられる迫害を受けたので)、一貫して久藤の自分だけを信じて徒党を組まない、決して屈しない態度だけが最終的に私にとっては救われていたのが不思議でした。
第一部だけ読むと、ただのとんでもない中学生である久藤ですが、少年院に入ってからの境地には圧倒されてしまいました。
 
未だもやもやとくすぶっているのですが、続きは気になります。
こんなに嫌な気持ちになるのに、貫井さんの文章の巧みさにはうならさざるを得ません。
(4点)