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イニシエーション・ラブ(文庫本)

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僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて……。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説――と思いきや、最後から2行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず2回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。 解説・大矢博子




乾くるみさんの本です。

図書館で単行本を読んだ後、「何だこの話はっ!!!」と驚愕し、ネットでネタバレサイトを探しまくった記憶も新しい一冊です。

友達にその興奮を伝え「絶対騙される!」と薦めて文庫を買って読んでくれたのですが、「途中で展開が読めた」とのことで、あまり期待に沿えなかったんです。
で、文庫を譲ってくれたわけでした(笑)

今回はちゃんと結末もわかっているし、もう騙されないぞ!
と思って勇ましく読み始めたのに、なるほどどうして・・騙されてしまうんでしょうねえ。

やっぱりside-Bから読んでみた方がいいのかなあ。

あ、ここからネタバレですが



Side-BとAの「たっくん」が別人だと分かった上で読んでいると、確かにAの繭との場面が一致しない部分もちょこちょこ出てきます。

だけど、年数的な差も、ふとしたら何の違和感もなく読んでしまったりして、今回もあやうく普通の恋愛小説として読み終えてしまいそうになりました。

確かにAの「たっくん」とBの「たっくん」は性格や思考が若干違っているのだけれど、Aから読み始めると、社会人になったことで性格などに変化が現われただけなのかもしれない―とついつい錯覚してしまうのです。

そういえば、大学時代は煙草を吸っていた「たっくん」なのに、社会人になってから描写が一切出てこないなあ、とか。
そんなに酒に強そうじゃなくて、飲んだらハイになって後々吐いたりとかしていた大学時代から、社会人になった途端に酔うと暴れる性格に変わるのも確かに変だよなあ。

だけど、何より・・一番魔性なのは、繭なんですよね。

Aでは、初めて男の子と付き合うんです、といううぶな感じがすごく出ていて、しかしこれも同時進行の恋愛をしながらの演技なのか!と思ったら、これが一番のミステリなんじゃないだろうか、などと思います。

名前を間違えても咄嗟に交わせるように、こじつけでも「たっくん」と呼んでみたり(どうやってもたっくんと呼べない人だったらどうしたんだろうか)。
奇跡的にキャンセルになったイブの日のホテルの予約を示唆してみたり。

side-Bのたっくんも、後半では繭と同時進行して美弥子と付き合っていたわけですが・・実は繭だって・・と思ったら、何だか繭に対して「女ってこえぇぇぇー!」と思ってしまうのは何故なんでしょうね。

side-Aのたっくんは、その魔性っぷりには全く気付いていないし、多分これからも気付く事はないのでしょうけれど、いやいや、本当に女って怖いですね。


巻末の解説で、更に詳しく謎解きの鍵(?)が書かれているので、それを参考に再読して頂きたいと思います。

いやー、乾さんの本は他の作品が自分と合わないものばっかりだったけど、この作品だけはすいっと読んでいけますね!

いやいや、参りました!