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親指の恋人

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何不自由のない暮らしの中で目標のないまま生きてきた大学生・澄雄は、出会い系サイトで知り合った少女ジュリアに、今まで誰にも話したことのない母親の死について告白してしまう……。
しかし、ジュリアもまたその不幸な境遇から逃げるように、澄雄に全てをさらけ出す。
無防備すぎるふたりの恋は、やがて最後の一瞬に向かって走り出していく-

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石田衣良さんの本です。
石田さんの本は、もう随分読んだ気がするのですが・・気付けばまた3冊位新刊を発売していたのですよ。

慌てて予約して、そのうちの1冊でございます。

装丁を、私の大好きな中村佑介さんが手がけているのです。
表紙だけじゃなくて、中にも沢山イラストが詰まってます。

そのイラストを見る価値は充分にあるけれど、しかしこの本自体は買うのは勿体ないなという内容でした・・。

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まず、タイトルと現代版・ロミオとジュリエットと煽っていたので、女が身分が高いのかと思ってました。それと、割と軽い感じの話なのかなと。

しかし逆で、主人公のスミオが六本木ヒルズに住む社長の息子、相手はパン工場で働く借金を抱える父を持つジュリアという設定でした。

とにかく、ジュリアが災難と不幸の連続で読んでいて救いがない。

何より救いがないのに拍車をかけてしまうのは、自分の昔の境遇と同じ部分が多すぎたせいだと思います。

父は借金を作り、母は病気で(この本は母は死んでるのだけど)、働いても働いても楽にならない。
進学するお金もない。

ここまで完全に自分と一緒です。

しかし、更にジュリアには不幸が重なるのです。

進学を望み、仕事と出会い系のサクラのバイトでコツコツと貯めてきた貯金を父に使われ、借金の取立てに追われ、更に父が病気で倒れてしまう。

入院費、借金、生活費・・

ジュリアは無理をし、更には自分が倒れてしまう。
更に、仕事を解雇されて・・


何もかもを分け与えられ、欲もなく夢も無い世間知らずのおぼっちゃんであるスミオと出会ってしまったばっかりに、その格差をまざまざと感じずにはいられなくなってしまうジュリア。


スミオがまた、全く苦労を知らないものだから、何とか父の力を借りてでもジュリアを助けようと奔走するのだけれど・・これがまた考えが甘いのなんのって!

苦労していない人間には、所詮苦労している人の気持ちなんて分からないんだよな!

スミオの母は、首吊り自殺で死んでいるという設定の割に、案外割り切っている感じなのもちょっと気になる所。

結局最後はああいう終わりなのも、とにかく救いがなくて悲しかった。


いや、悲しいというより・・虚しいかな。
世間の格差を、まざまざと見せ付けられるような話でした。


うう~ん。これは微妙。
装丁に惹かれて買ってしまったとしたら、ちょっと勿体無いかもしれません・・