No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

殺人の門

イメージ 1
 

あいつを殺したい。でも、殺せないのはなぜだ。

どうしても殺したい男がいる。その男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。あいつを殺したい。でも、私には殺すことができない。殺人者になるために、私にはいったい何が欠けているのだろうか……。


東野圭吾さんの本です。
 
タイトルからして重々しく、貸してくれた上司からも「奥田英朗の『最悪』くらいに重い話だった」というアドバイス?を受けていたのですが、いやー確かに確かに。
『最悪』にも匹敵する重さでした。


主人公は決して悪癖があるとか、金使いが荒いとか、私生活が派手で女遊びが激しいとか、全くもってそういうタイプではないんですよね。
だけどお人よしというか、根が真面目で人を疑わない・・・いうなれば他人を信用し過ぎているということなのかな。
それが全て悪い方向に転がっていく――想定できる範囲の、ありったけの悪意を込められたような。
きっとこうなるんだろうと、ネガティブな私が想定する範囲内の事が確実に主人公に降りかかり、次は一体どんな不幸が・・・と重苦しい気持ちになるのに、続きが気になって気になって仕方がなかったんです。
 
決して進んでもう一度読みたいとは思わないのに、私はこの作品にとても引き込まれました。
 
何だろう・・・運命って、あると思うんですよね。
例えば、全てが裏目に出る事、悪いことばかりが起こる人生。
 
変に共感してしまった部分もあって、主人公が可愛そうというより、こういう悪い方向に進む動きっていうのは、誰にも止められないって思う。
紙一重なんかもしれないけど、実際にこうやって何もかもが上手くいかない人っているんじゃないかな・・・とふと思って何とも言えない気持ちになって。。


主人公の田島は、幼い頃に倉持と出会ってから人生が狂い始めていきます。
歯科医を営む父親、大きな屋敷にお手伝いがいる、裕福な家庭に育った田島。
祖母の突然の死により、毒を飲まされた死んだという噂がたち、両親は離婚し一家は離散。
 
父親の元に残る事になった田島だが、女に入れあげた父が男に刺され怪我を負い、歯科は閉院を余儀なくされる。女に捨てられ、仕事も失い、ついには家を売却することになる。
すっかり働く意欲を失った父親との暮らしの中で、田島が少しでも幸福を感じ始めた頃に現れる倉持。
 
倉持の巧みな話術にそそのかされ、何度も危ない橋を渡されたり、騙されて酷い目に遭うのにも関わらず、倉持との縁を切れない田島。
 
初恋の女は倉持に取られて謎の自殺を遂げ、コツコツとした仕事を見つけた先では、倉持にそそのかされて詐欺の片棒をかついだアルバイトに携わっていたせいで辞めさせられ、更に好意を抱いた女は倉持と結婚。
紹介された女と結婚するも、一夜の過ちがばれて離婚。妻は多額の借金を田島に押し付け、慰謝料まで請求される――
 
ことごとく悪い方向に進んで行く展開の裏に、倉持の罠が潜みます。
 
ラストで、倉持にとって起こるべくというか、天誅が降りかかります。
そして知る、全ての真実――
 
殺人の衝動を抱えながら実行に移す事ができなかった田島だったのだが・・・


暗い話は嫌いじゃないし、引き込まれたのは間違いありません。
好き嫌いは分かれるかもしれませんが、東野さんの力作だと思います。これは凄い!