高校時代にいじめられていた亮太は大学入学を機に変わろうと「正義の味方研究部」に入部する。正義の名のもとに学内のトラブルを解決し、自分の変化を実感するようになるが、次第に本当の正義とは何なのかを考え始める-
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本多孝好さんの本です。
とりあえず、本多さん名義で出している本は全制覇しました!!
そして、今までの作品を読んできた私からすると・・この作品は「え?これ、本多さんが書いたの?」と思われるような一冊になっております。
そして、今までの作品を読んできた私からすると・・この作品は「え?これ、本多さんが書いたの?」と思われるような一冊になっております。
本多さんと言えば、静かに、時に切なく、時に悲しげに物語を紡いでいくというような印象もあって、ハッピーエンドで終わらない話も多かった気がします。
けれど、悲壮感はそんなになくて、切なくなりながらも心は驚く程落ち着いてて・・という(訳の分からん説明ですね)感じの作品が特徴じゃないですか。
しかし、この本です。
読み始めた瞬間に、「あれ?」と驚いてしまったのには訳があって・・まず、主人公が高校時代に大変ないじめられっ子だったらしいにも関わらず、主人公はネガティブなのに思いつめていないという不思議なキャラクターなのです。
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死のうと思ったといいつつも、何処かでそれを諦めている主人公は悲観的というよりも、申し訳ないが何だか愉快な人にも思えてしまう。
それは、語りの軽快なテンポのせいなのかもしれないし、一発奮起して大学受験をし、大学デビューと共に新しい自分に生まれ変われると願ってやまなかった主人公・亮太が、まさしくそれを成し遂げたという達成感から成せる事なのかもしれない。
そして、悲惨な高校時代のいじめっ子であった宿敵が事前サーチも虚しく大学が同じであるという事実を知り、再びいじめの悪夢が立ちはだかっていたところに、その場を助けてくれ、そして正義の味方研究部を教えてくれた後に友人となる男と出会い、久しぶりに友達という存在に涙しそうになる。
そして、不思議な正義の味方研究部に入った事により、信頼できる仲間(先輩)が出来、そして自分が正義の味方となれるのだという高揚した気分になる亮太。
大学内のありとあらゆる問題を解決し、時にサークルの潜入捜査などをやりながらも、クラス一の美人との良い関係・・
大学って素晴らしいと思っていた亮太だったのだが、潜入捜査をしているサークルの一人の(自分と似た雰囲気を纏った)先輩との出会いで、少しずつ何かが違うこのままじゃいけないと思い始めて・・
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今までの本多作品も好きだけど、この路線でやっていっても、間違いなくいけると思います。
ネガティブな主人公、だけど何処か面白くてとぼけてて、素敵なキャラ。
その他の登場人物もよかったけど、一番にこの話の中で共感してしまったのが・・
サークルの先輩の「格差社会」論。
働いても働いても生活は楽にならない。
最下層の人間は、最下層の中でしか上にたつことは出来ない。
最下層の人間は、最下層の中でしか上にたつことは出来ない。
アルバイトで学費を稼ぎながら塾にも通えず独学で勉強をする人、親の金で塾に通い、勉強をするためだけの時間を使える人。
そのどちらが東大に入るのに有利なのか。
たとえ馬鹿な人間でも、10年・20年と受験をし続けたら、受かる可能性だってないわけではない。
けれど、決してそれをしないのは無駄だからだ。
自分を知っているからだ。
自分を知っているからだ。
大学に親の金で入り、ろくに授業も出ずに遊び歩いている大学生。
親にお金を借りて、バイトで返しながら勉強を必死にする大学生。
親にお金を借りて、バイトで返しながら勉強を必死にする大学生。
しかし、結局は同じ大学を卒業したという事にしかならない。
どんなに頑張っても、歩ける道は決まっている。
ならば、誰にも出来ない事をやって、自分で道を作って歩いていきたいのだという先輩の意思は、(実際悪いことをやろうとしていたにも関わらず)、妙に納得してしまう。
私は亮太のようにイジメられてはいなかったが、立場は結構似ている。
だから、主人公と同じ目線でそういう風に思えたし、そして世の中は不公平だと思えてならない。
だから、主人公と同じ目線でそういう風に思えたし、そして世の中は不公平だと思えてならない。
けれど、それがパート・アルバイト・派遣だったらどうだろう。
なのに、時には社員より有能な人間だっているのにも関わらず、低賃金・不安定な雇用形態・徹底していない保険制度・・・と、常に宙ぶらりんな環境にたたされている・・
何だろうな、世の中。
本当に平等なのか?
これはおかしいだろう。。
これはおかしいだろう。。
そんな気持ちが急にふつふつと湧き上がってきて、私は憤りを覚えてしまった。
そういった意味でも、この本は二重に楽しめると思う。
物語全体の面白さと、現実をつきつけられた憤りを感じることに。