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チェーン・ポイズン(文庫版)

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あと1年。死ぬ日を待ち続ける。
それだけが私の希望――。

誰にも求められず、愛されず、歯車以下の会社での日々。簡単に想像できる定年までの生活は、絶望的な未来そのものだった。死への憧れを募らせる孤独な女性にかけられた、謎の人物からのささやき。
「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか? 1年頑張ったご褒美を差し上げます」
それは決して悪い取り引きではないように思われた――。


本多孝好さんの本です。

 
単行本版で2回、今回で読むのは3回目でした。
間違いなく、本多作品の中でも最高傑作だと思います。
 
単行本版であまりの面白さに衝撃を受け、間を置かずに再読。
それでもなお面白い!と思う気持ちは変わらなくて、文庫化したら絶対買おうと思っていた作品でした。
 
待望の文庫化。
既に二回も読んでいる訳で、内容も結末だってもう知っている。
なのに――やっぱり、良かったとしみじみ思いました。
 
私は単純に、ミスリードされて引っ掛かるタイプなので、最後のどんでん返しにあっと思わされて、ミステリ要素としても十二分に楽しめる訳です。
尚且つ、きっと将来自分がそうなるであろう、36歳の主人公の空虚な日々。
あまりにも想像できてしまうほど、リアル。主人公と身に迫る自分の将来像がリンクして・・・・・・。
もし「眠るように死ねる」という薬をもらったら――果たして36歳になった自分は、その薬を飲んでみようという誘惑に打ち勝てるのだろうか?
36歳になった自分は、今携わっている仕事にやりがいを感じられているだろうか?
 
「死」に漠然と憧れを抱いていたり、死ぬことを恐れるどころか心の拠り所にできてしまうような人間が本作には登場しますが、ある人々と関わる事がきっかけで、少しずつ「生」に執着を持ち始める心が変わっていく様がリアルに描かれます。
 
ミステリ展開と、シリアスな「生と死」を描くこの展開同士が見事にマッチして、ページをめくる手が止まりませんでした。
 
とにかく、何だか上手く言えないのですけども・・・読むべし!と、ただそれだけを言っておきます。
5点満点以上つけたい傑作です。