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リアル鬼ごっこ

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全国500万の「佐藤」姓を皆殺しにせよ!―西暦3000年、国王はある日突然、7日間にわたる大量虐殺を決行した。生き残りを誓う大学生・佐藤翼の眼前で殺されていく父や友。陸上選手の翼は、幼い頃に生き別れた妹を探し出すため死の競走路を疾走する。奇抜な発想とスピーディな展開が若い世代を熱狂させた大ベストセラーの改訂版。

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山田悠介さんの本です。

デビュー作ですね。

山田さんといえば自費出版で世に本を送り出した作家であります。

若くしてベストセラーになった今作。

リアルな鬼ごっこって何だよ!
っていう感じで、かなり気になっていたのですが・・ようやく読みましたよ。

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自称・文学好きな自分としては、そういう視点で見たら・・はっきり言って、駄作だという人もいると思います。

いや、でも一概に自分はそういいきれないのは・・

展開とストーリーが奇抜で、しかし今までにない発想であることは認めるからです。

設定ははちゃめちゃだけど、だからこそ話題にもなって、自費出版にも関わらずこれだけのセールスを記録したのだと思うのです。

ただ、本を全然読んでいなかったらしい山田さん。

言葉の技巧は、全然なっていないと思います。
一般人の自分に言われたくねえよ!って感じでありましょうが。

言葉が安易で、稚拙で・・

デビュー作とは言え、熟練された作家の本を読んでいる人が読んだら・・ため息をつくかもしれません。


ただ、何度も言います。
設定は奇抜だけど、悪くないと思うのです。


しかし・・

あまりにも安易なのです。


まず、父親が母親に暴力を振るって母と妹が主人公の翼を置いて出て行ってしまう・・

まあありがちな設定だと思いますが、そこまでは許すとしましょう。

その後、父と二人きりで暮らす羽目になった翼は、父からの虐待を受ける日々を送ることになります。

それゆえ、中学1年の頃まで殻に閉じこもりがちになったという過去設定なのですが・・

その割には、現在大学生になった翼が父をあまりにも恐れていないんですよね。
いくら大学生とは言え、幼い頃からずっと虐待をされていたら・・力で勝てるかもしれない相手でも、相当恐れるはずではないでしょうか?

トラウマという言葉で片付けられる程簡単な傷だったのでしょうか?

それに、リアル鬼ごっこが原因で父が死んでしまってから、見えてきた父の側面があまりにも虐待や暴力を振るっていた父と結びつかない。

酒ばかり飲んで荒れていたはずの父は、結構な重役で、仕事が出来る人だった・・っておかしくないか?

しかも、あんなに暴力をふるい家を出て行く原因になったはずの母と妹のことを、結局気にして連絡を取り合っていたというのも何だか不思議。。。

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で、国王(佐藤という名前)が自分以外に同じ苗字を持っている人間がいるのが気に食わない、というただそれだけの理由で、全国の佐藤さんを「ゲーム感覚(鬼ごっこ)」で抹殺しようというとんでもない計画が実行にうつされる。

国王はワガママでどうしようもなく、馬鹿王である。まだ若く、しかし国王のいう事は絶対の為、こんな提案にも反対するものはいない・・

側近のじいが、最後の翼へ取った行動が疑問なんですよね。
(結末が分かってしまうので、詳しくは言わないですけど)

渋々ながら命令に従っていたじいだけど、結局心のうちでは王に辟易していたはずでしょう?
それなら、最後のあの行動はどうなんだ?って思ってしまった。

むしろ、皆が協力して国王を殺すっていう展開だったら、ああはならなかったのにな・・

結末が、何とも中途半端で勿体無い気がしました。

もう少し煮詰めて書いたら、もっと納得できるものが出来たのでは??

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あと、生き別れの妹と折角会えたのに・・悲しかったし(まあ、物語の展開上こうなるしかないのだろうけど)。

同じ佐藤姓の親友も呆気なかったな・・

色々な意味で残念。

あと、全国にかなりの人数がいる佐藤さんをたった一週間×1時間だけで全員消すなんて、何か物理的に不可能な気が凄くしたんですけど・・

しかも、ちょっとバトルロワイヤルとダブってしまったなあ。

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と、批判めいたものになってしまってすいません。

ただね。
すいすいっと読めるのは確かで。

しかも、今まで読んできた山田作品の中では、一番面白かったと思ったよ。

他は結構突拍子もない話も多いけど、この奇抜な話とスピード展開は悪くないよ。
散々批判しておいて、どっちやねん!って話ですが。

それにしても、佐藤という名前というだけで殺されたらたまらないですね・・

私は珍しい名前(でもないけど)の方なので、ちょっとほっとしました。