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北斗 ある殺人者の回心

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幼少時から両親に激しい暴力を受けて育った端爪北斗。誰にも愛されず、誰も愛せない彼は、父が病死した高校一年生の時、母に暴力を振るってしまう。児童福祉司の勧めで里親の近藤綾子と暮らし始め、北斗は初めて心身ともに安定した日々を過ごし、大学入学を果たすものの、綾子が末期癌であることが判明、綾子の里子の一人である明日実とともに懸命な看病を続ける。治癒への望みを託し、癌の治療に効くという高額な飲料水を購入していたが、医学的根拠のない詐欺であったことがわかり、綾子は失意のうちに亡くなる。飲料水の開発者への復讐を決意しそのオフィスへ向かった北斗は、開発者ではなく女性スタッフ二人を殺めてしまう。逮捕され極刑を望む北斗に、明日実は生きてほしいと涙ながらに訴えるが、北斗の心は冷え切ったままだった。事件から一年、ついに裁判が開廷する―。


石田衣良さんの本です。
 
石田さんが今までに書いた事がない感じのテーマを扱っているのを知り、気になっていた本でした。
地元図書館で借りられずに置いてあったので借りてきました。
 
うーん、意欲作ではあると思います。
虐待を受けて育った子供が、心の底から愛してくれる里親に出会うも里親が病死。
医療詐欺に遭った主人公の北斗は、詐欺の大本である男に復讐するため殺人を犯すも、その当人ではなく同じ場所に勤める関係のない女性二人を殺害するに至ってしまう――
 
前半の幼少時からの容赦ない虐待の描写。
辻村深月さんの「子どもたちは夜と遊ぶ」やその他沢山の虐待描写のキツイものを読んで来ているので、個人的には意外と淡々と読んでいましたが・・・
 
一番読みにくいと思ったのは、やはり北斗の心が読めないこと。
意識してこういった付き離すような淡々とした描写をしているのかもしれませんね。
故に北斗の感情が伝わってこなくて戸惑いました。
 
ページ数もかなりあるので苦戦しましたが、色々と考えさせられました。
 
最後の判決は・・・被害者遺族の事を思うと喜んでいる北斗側の人間が不謹慎に思えてきたりしてしまい、何となく納得できていません。
 
石田さん、最近の作品がことごとく楽しめなかったのですが、こういった重めのテーマの話も今後書いていってほしいです。
(3.5点)