私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都-
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森見登美彦さんの本です。
そしてその帯の’天然キャラの女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都'という文字。
京都大好きだし、黒髪の乙女というのが何とも素敵。
もう即買いです。
もう即買いです。
主人公は、とある学生の男=先輩であるはずなのに、どちらかと言うと黒髪の乙女を中心に話は展開していく。
それはそうだ。
先輩は、黒髪の乙女の目に留まるように敢えて乙女の前に頻繁に姿を現すのだから。
先輩は、黒髪の乙女の目に留まるように敢えて乙女の前に頻繁に姿を現すのだから。
そして陰が薄くなりがちな先輩の失敗がまた面白く・・笑いを誘ってくれます。
物語は四つの章に分かれて進んでいきます。
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黒髪の乙女に直接アプローチが出来ない先輩は、ひたすら彼女を追い続ける。
外堀を埋めて埋めて、埋め尽くす。
外堀を埋めて埋めて、埋め尽くす。
それでも乙女は言う。
乙女は、先輩の想いには気付かず、自由気ままにずんずん歩いていく。
時には夜の京都の街を。夏の古本市を。秋の学園祭を。そして、風邪引き達が街中を占め閑散としたクリスマス一色の街を。
そこで出会う不思議な人々。
古本の神だという、妙に知識のある生意気な美少年。
乙女の探している絵本を見つかると言ってくれたり。
乙女の探している絵本を見つかると言ってくれたり。
学園祭で開かれる「偏屈王」の劇。
乙女はどういうことやらヒロインの「プリンセス・ダルマ」を演じることになり。
その途中で出会った不思議な「韋駄天コタツ」
そこにはあの樋口さんと、願掛けでパンツを履き替えないと誓ったパンツ総番長。
パンツ総番長の思い人、紀子さん。
乙女はどういうことやらヒロインの「プリンセス・ダルマ」を演じることになり。
その途中で出会った不思議な「韋駄天コタツ」
そこにはあの樋口さんと、願掛けでパンツを履き替えないと誓ったパンツ総番長。
パンツ総番長の思い人、紀子さん。
その全てに先輩も関わっているはずなのに、どうにもこうにも主人公の座を乙女に取られているとしか考えられない先輩の影の薄さが妙に面白く。
例えば、夜の京都では突然パンツを脱がされるというハプニングにあったり、大嫌いな古本市に行く羽目になり、更に李白氏の勝負に挑み乙女が欲しがっている絵本を賭けることになったり。
更には、いつもは行かない学園祭で、しかも乙女とのハッピーエンドの為に劇の偏屈王役を奪ったり。
そして彼女の目に留まるよう、努力をしてきたナカメ作戦とか(「なるべく彼女の目にとまる作戦」を省略したものらしい)。
彼女の後ろ姿に関する世界的権威といわれる男という先輩は、もう情けないような、本気なんだか分からないような、そんな不思議な魅力を持っているし。
もう何より乙女の佇まいやふるまい。
人を疑う事をせず、とても前向きで優しい人柄が可愛くて仕方ありません。
人を疑う事をせず、とても前向きで優しい人柄が可愛くて仕方ありません。
好きになった女の子を、ひたすら追い続ける男の子の話、というべきなのか。
女の子が色々な場所を歩いて、その姿を追い続ける男の子もいる、というべきなのか(笑)
女の子が色々な場所を歩いて、その姿を追い続ける男の子もいる、というべきなのか(笑)
でもちゃんと、ラストには乙女が先輩の存在を意識し始めているし、何だかほんわかした幸せな気持ちで一杯になった一冊でした。
これはお薦めです。