No-music.No-life

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優しい音楽

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受けとめきれない現実。止まってしまった時間―。だけど少しだけ、がんばればいい。きっとまた、スタートできる。家族、恋人たちの温かなつながりが心にまっすぐ届いて、じんとしみわたる-

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瀬尾まいこさんの本です。

と、珍しい~!と思われたでしょうか?
自分でもびっくりですが、私は音楽にしても本にしてもあまり有名な人の本を読みません。
何となく疎遠になってしまうというか・・。

売れ筋より、自分が見つけた光る一冊に出会えればいい!と思うタイプなので、滅多に有名な人の本は読まないんですけど・・。

いつもお世話になっている、るいさんのブログで、ふとこの本の記事を見かけて内容を知ってしまったのに気になってしまったのです。

瀬尾まいこさんという人は、どんな書き方をするんだろう?どんな作家さんなんだろう?」と。

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優しい音楽

23歳の永居タケルは、朝の混雑した駅の構内にて不思議な女の子-鈴木千波と出合った。
何故だかまっすぐにこちらに歩いてきて、まぶしそうに顔を見上げてきたのだ。

「どうかした?」

と尋ねると、「びっくりして・・」と言うばかり。
怪訝に思いながら、その日は電車に乗り込んだ。

しかし、翌日もその翌日も彼女は駅で自分を探しているようだった。

「顔って言うかなんていうか、とにかくあなたが見たくて、昨日も今日もずっと探してたんです」

千波は不可解な事を言い、しかしそれからお互いに話をする関係になっていった。

親しくなっていっても、千波からは自分を眩しそうに眺めることはあってもそこには恋の甘さや切ない気持ちは感じ取れないでいた。

そのうち、タケルが千波を好きになり告白をする。

「明日から恋人ね」

と、何だか不思議な始まり方をして、二人は付き合いだした。


色々な場所でデートをして、沢山話して自然にゆっくりと過ごしていく二人。
しかし、どうしても千波の両親に挨拶をさせてくれないのだ。

何かにつけて理由をつけ、するりとかわされてしまう。
その理由とは・・

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あり得ない!
と思いつつ・・不思議と温かくて。

これじゃタケルにとっても、千波と千波の両親にとっても悲しすぎる・・と思ったのに、最後はとっても前向きに温かく終わります。

この二人みたいな関係って、素敵だなあ。

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タイムラグ

都合の良い女、と自覚する深雪は調子の良い平太にいいように頼みごとをされて、断れた試しがない。

平太と奥さんの結婚記念日に、二人で旅行に行く事になり何故か娘の世話を任される羽目になった深雪。


そして、家に平太の娘佐菜がやってきた。
女の子は、深雪の部屋に入るとじっと座っている。

色々話しかけてみるのだが、どうにも上手くいかない。
さつまいもをふかして二人で食べたりして、少しずつ打ち解けていった深雪は「豪遊しよう」と提案する。

平太からこっそり抜き取ったキャッシュカードで、30万をおろし二人は豪遊へと出かける。

目的地はどうするか?
とりあえずデパートへと繰り出すことにした。

しかし・・佐菜が買いたいものを渋っていたこともあり、二人で一万円もしない買い物をしただけで終わってしまった。

そして、佐菜が「お父さんのおじいちゃんち」に行きたいと言い出し・・
父・平太と奥さんの結婚が、反対されていて未だに許してもらっていない事を知る。

そして何故だか深雪は佐菜と一緒におじいちゃんちに行くことになって-

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この話は、佐菜のひたむきさと奥さんの優しさが伝わってきます。
だからこそ、平太の浮気相手である深雪は報われない気がひしひしとするのですが・・。

それでも、こういう風に熱くなれる深雪にはもっといい男がいるよ!!って思ったり。

後に佐菜が深雪の存在が何なのかを知ったら、相当ショックなんだろうなあ・・とか思ってしまいました。


がらくた効果

物好きのはな子は、何でもかんでも拾ってきたりもらってきたり、買ったり・・と部屋に持ち込んでくる変わった女の子である。

今日も突然、「拾ってきちゃった」と言うはな子に、章太郎は構えた。

その「拾ってきた」ものを見ても、怒らない・驚かない・笑わないと約束して、とはな子が言って、しぶしぶ納得した章太郎の目の前に現れたのは・・

犬でも猫でもなく、紳士的なおじさんだった。

そのおじさん-佐々木さんははな子が働いているお店の前にある公園にいたのだという。
大学の教授だったが、突然解雇を言い渡され、妻からも離婚を言い渡されて・・
家も財産も全て失くし、ホームレスになったのだというのだ。

とてもホームレスとは思えない、穏やかで落ち着きのある話し方をする佐々木さんに、最初は面食らう章太郎だったが・・。

いつしか三人での生活に慣れて行き・・・

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あり得ない話!と思いながら、佐々木さんの紳士的な雰囲気にいつの間にか馴染んでしまう自分がいました。
こんなに知識とおおらかな性格をもった人が職を失うと、ここまで頼りないホームレスになってしまうんですね・・。
やっぱり前職が凄いのだと、ホームレスになるのは至難の技なんだろうか?

面食らっていた章太郎が、だんだん佐々木さんに心を開いていくのを見ているのは、心地よかったです。


と、3編からなるこの本。自分的にかなり好きです。
これは良かった。

優しい気持ちになれる一冊です。